第32話0032★最後の隠れ家 禁断の魔術書に記された禁術を調べる



 2人のことなった女神がいのり始めた、その頃。


 残り2つの隠れ家のうち、1つを処分し終えたビャクヤは、最後の隠れ家へと移動して来ていた。


 最後の隠れ家があるのは、滅ぼされた飛翔族の王都・輝く峰の王国より、かなり離れた地域にあった。

 が、そこにも、人数はずっと少ないが、黒き河の黒鼠族こくそぞくの兵士達がうろついていた。


 流石のビャクヤも、黒き河の国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王の本気を感じていた。


 執念ともいう、なにがなんでも、飛翔族の祈願成就の《力》を、奪うと…………。


 欲してやまない《力》への渇望が、各地の街という街に、黒き河の兵士達を派遣させていた。

 黒鼠族こくそぞくの兵士達が、街中のそこここを闊歩かっぽしていた。


 仲の良い国、悪い国関係なく。

 自国の国民の人数の多さを武器に、ありとあらゆるところへと…………。


 だが、飛翔族の真の里は、霊峰と呼ばれる山間にあり、その高さから、霊峰の上空を飛ぶには、飛竜を必要としていた。


 その飛竜は…………。

 全身全てが薬になり、その魂魄は〈ドラゴン・ソウル〉として使役出来る為、ビャクヤが誕生するはるか昔に、ほぼ絶滅していた。


 たまに、飛竜を見かけたという者もいるが、基本的にはマユツバだった。


 ゆえに、飛竜の化石でも高価で取引されていた。

 当然のこととして、魂魄を封じ込められた〈ドラゴン・ソウル〉は、とんでもない金額に…………。


 時に、国同士の争いにまでなることもしばしばだった。

 個人で所有などしていたら…………である。


 まぁ、そういう理由から、真の飛翔族の里が、上空から襲われるということは無いのだ。

 天然の要塞の中にあるが故に…………。


 当然、飛翔族の者でも、たとえ飛べても、そこたどりつくことは出来ない。

 なによりも、真の飛翔族の場所を、彼ら自身が正確な位置を知らないゆえに。


 そう、真の飛翔族の里への道は、基本的に大神官長が代々口伝のみで伝えているのだ。

 いざという時の為に…………。


 また、飛翔族は、長いあいだ《力》の大半を封じられた状態でいたので、解放した時の反動もわからない状態だった。


 閑話休題




 ビャクヤは、最後の隠れ家で、まだ解読の終わっていない魔道書を開いて溜め息を吐いていた。


 「やはり どこを探しても

  結果が無い………」


 無事 嶺鳥れいちょうの卵から

 転生を果たし 誕生したことまでは

 この魔道書に 記載されているのだが…………


 大きな溜め息を吐いたビャクヤは、意識や記憶を持ったまま、転生する為の禁断の魔道書を閉じ、しばしの休息をとる為に双眸を閉じた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る