第108話0108★ネズミーランドは危険がいっぱい?18 イベント開始9



 その不自然な沈黙は、当のぬいぐるみによって、完全に壊された。


 「こぉ~んなに…可愛い……ボぉ~クぅ~を

  投げるなんてぇ……あんまりやぁー…………」


 キツネのぬいぐるみが、大げさに哀しんで見せるが、当事者(キーホルダーを投げた人と、肩にキツネのぬいぐるみに乗られた人)も傍観者も、困惑して黙っていた。


 「「…………」」


 微妙な沈黙具合に耐えかねたキツネのぬいぐるみは、しょうがないという表情をしてから、勝手に自己紹介を始める。


 「初めましてぇ~……ボぉ~クぅ~……

  妖狐族のギン…言いますぅ~…………」


 その可愛い姿に、キツネが大好きな優香が、嬉しそうに訊き返す。


 「妖狐?」


 ギンは、とりあえず自分に興味をもってくれたらしい優香に、愛らしくペコッと頭をさげて言う。


 「はい~…今は、こないな姿ですけどぉ~

  《封印》がとければ…ボぉ~クぅ~は…

  ご主人はんのぉ……お役に立ちますえ………」


 と、言って竜治ら向かって優雅にお辞儀をする。


 「ご主人?」


 不審そうに訊き返す竜治に、ギンは更に説明する。


 「ボぉ~クぅ~の《力》は

  ほとんど封じられておりますねんぇ~……


  …せやから《契約》して……


  ボぉ~クぅ~のご主人はんに

  なって欲しいんやぁ~


  ご主人はんの《命令》やったら

  《封印》がとけてぇ~


  《力》を使えるんどす……

  せやから……あんじょう…たのんますぅ…」


 妖しげな口調での自己紹介と共に《契約》を持ちかける妖狐に、竜治のみならず、全員が困惑顔になる。

 もちろん、肩に鎮座されてしまった神護もである。


 「「……??……」」


 びみょ~な雰囲気での沈黙、妖狐のギンは愛らしく小首を傾げる。

 そして、1番、自分と立場が近いだろう〈ドラゴン・ソウル〉のホタルに顔を向けて聞く。


 「ボぉクぅの説明…

  あかんかったんやろかぁ~……

  〈ドラゴン・ソウル〉はん?」


 話しを振られたホタルは、思わず神護を見て首を傾げた。

 突然出現した、自称・妖狐のギンに困惑したホタルは、神護に小首を傾げながら言う。


 『どうしますか? マスター 悪意は感じません

  一応 本当に困っているようです…………』






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