第59話0059★小さな幾つもの異変2


 そんな解決の糸口にもならない、らちも無いコトを思いながら、神護は退屈な保険体育の時間が終わるのを待っていた。

 黒板に書きだされた、既に知識としてある女性の身体と変化について………。


 はぁ~……眠い…なんかクラクラする………

 ここのところ、熟睡できてない


 一瞬もクラリっと眩暈を感じたと同時に、神護は深い緑と土の匂いを感じて、ハッとして無意識に周りを見回す。


 良かった……めっちゃリアルだけど…

 森林の匂いだけかぁ……はぁ~………


 じゃなくて……竜治も退屈なんだな…

 くすくす……睡魔と戦ってらぁ……

 

 そう思う視線の先では、竜治が小さくあくびをしていた。

 医学知識として既に知っているだけに、竜治も保険体育は退屈と思っていたりする。


 だからクラスメートが、教師の説明に、妙な盛り上がりをもって騒いでも、医者の息子である神護と竜治には、ただただ退屈なモノでしかなかった。


 そう、思春期って言葉がむなしくなって、そばを駆け抜けるほどには、神護や竜治はそういうコトにめっきり興味が無いのだ。


 だから、好奇心を刺激しないこの時間、午後の最後の授業ということで、2人はただただ眠気と戦っていたのだった。


 授業が終わり、ホームルームが終われば、神護の意識はカッチリと切り替わる。


 そう、これからスーパーのタイムセールの時間に、あと少しで突入する時間だからだ。


 一家の主婦に、そうとうする位置に居る神護は、少ない財政で、できるだけ美味しいモノをと、割引が貼られる時間までに、スーパーに滑り込みたいと思っているのだ。


 だから、腕時計を見て、神護はちょっと舌打ちする。


 くそっ……今日のホームルーム……

 何時もより長かったセイで………

 あぅ~…割引が貼られる時間に間に合うか?


 カバンを片手に、お買い物袋エコバックを出して、神護はスーパーへと向かう。

 その後ろを、当然のように竜治も付いて行く。


 そして、神護達がほとんど駆け足で、スーパーに滑り込んだ頃、バイトのオバちゃんが、割引のシールを用意しているところだった。


 「…良かった…間に合ったようだね………」


 竜治の言葉に、ちょっと焦っていた神護も頷いて、溜め息を吐く。


 「あぁ…まだ半額のシール貼り

  してないみたいだ………」


 そう言い合いながら、どの辺をゲットするかを相談する。

 値引きシールを貼るオバちゃんは複数居て、同時刻にはじめる為に………。


 「それじゃぁ~…僕のほうは

  菓子パンをゲットしてこようか?


  肉や魚は、調理する神護が

  自分で選んだ方がイイから………」


 「ああ、そんじゃ……そっち頼むわ……

  バンは、半額ンなったヤツ

  確保できるだけ、確保してくれ」


 「了解…んじゃ行って来るね」


 「ああ、頼んだ

  俺は精肉と鮮魚んとこ行くわ」


 そう言って、2人は目的の場所へとそれぞれ向かう。







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