第232話0232★馬と馬車が用意されています



 アデルにカランと呼ばれた、リカオン獣人の青年は、ペコッと頭を下げて挨拶する。


 「リカオン族のカランと申します

  今度、自分の商隊を持たせてもらうコトになったんで

  今後ともよろしくお願いします」


 どうも、ス付きの言葉は、気が抜けると出るらしいことを見て取り、神護はクスッと笑って頷く。


 「ああ、よろしくな、カラン」


 そう神護が返したところで、アデルが言う。


 「ご紹介が遅れましたが、あちらで周囲を警戒している彼は

  今回の護衛隊長で、オオカミ族のリセルさんです


  なにぶんこの辺ですと、サンドワームの出現率が高くて

  かなり神経質になっているようですが………」


 紹介されたオオカミ獣人の方を向けば、神護に向かって軽く会釈し、再び注意深く周囲を観察する為に神経質に視線を動かしていた。


 へぇ~…サンドワームなんてモンもいるのかぁ?

 単純に、砂の虫…ミミズ見たいなモンなのかな?

 知識があるのは判るけど………っ………やっぱ、まだ整理終わってねぇ


 一瞬走った痛みに小さく舌打ちした神護は、軽く頭を振ってから周囲に視線を走らせる。


 一応、白夜に邪心を持っている感じのやつらはいないな

 ヒリュオンのリオウにも意識は向いていないようだな


 などと、周囲をうかがう神護に、アデルが申し訳なさそうに声を掛ける。


 「ところで、神護のだんな、頭部の代金なんですが………

  アタシが出した、コレらも代金として出してイイですかね?」


 と、巨大虹色オオトカゲの頭部をしまった財布風インベントリから出した、宝石や《魔石》を含んだ色々なモノを指差す。


 「良いのか? 大事なモノだから、ソレに入れていたんだろう?」


 神護がそう問えば、アデルは首を振る。


 「いえいえ、確かに貴重品と呼ばれるモノは多いですがね

  頑張れば手に入るモノばかりですよ


  神護のだんなが譲ってくれた、虹色オオトカゲの頭部に比べたら

  全然、アタシには価値の無いモノですよ


  なんと言っても、伝説級の大きさの虹色オオトカゲの頭部です

  コレがあれば、姫君だって全快するはずです」


 にこにこしているアデルに、あまり巨大虹色オオトカゲの頭部に重きを置いていない神護は、肩を竦めて頷く。


 「ああ、それでいいぜ、どうせ使うあてもなかったしな

  有効活用してくれるんなら、それでイイ」


 「ありがとうございます、神護のだんな」


 「いや、いいよ、それよりも、飛翔族について、何か知っていたら

  教えてくれないか? 些細なコトでもイイからさ

  食の好みとか、住んでいるところとか、なんでもイイから………」


 神護からの言葉に、アデルはコクコクと頷いて、自分の知る情報を教えるのだった。

 勿論、これからもお付き合いしたいと言う下心があるので、キャラバン隊を率いる大商人として手に入れた情報も提供したアデルである。


 神護とアデルが会話をしている間に、のれん分けすると言われていたリカオン獣人のカランが、御者や下男達に指示を出して、欲しいと言われた馬と馬車を用意していた。

 見るからに立派な馬達と3台のひときわ大きく、装飾がされている馬車を並べる。

 ちなみに、馬車は6頭立てで引くタイプらしく、1台に付き6頭繋がれていた。








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