第231話0231★何が何でも、頭部まるごと欲しいんです



 今まで入れていた貴重品よりも、よほど巨大虹色オオトカゲの頭部が欲しいらしい。

 アデルがポイポイと出したその中には、貴重品らしい宝石や《魔石》なども含まれていたが、頓着することなく全部だして見せた。


 「容量としては、こんなモンでしょうかねぇ………

  まだまだ、余裕はかなりありましたけど

  あの巨大な虹色オオトカゲの頭、入りませんかね?」


 わざわざ中身を出して見せたのは、このぐらい入るということかよ

 つーか、そんなに欲しいか? 虹色オオトカゲの頭

 まいっか、別に大事に取っておく気なんて無いし………


 「まぁ…はいるんじゃ無いかな? んじゃ、今出すわ………

  そういえは、インベントリってみんな持っているのか?」


 そう言いながら、神護は腕輪に手の平を翳し、その中から先刻とりあえず収納した、巨大虹色オオトカゲの頭をゴロンっと出して見せた。

 馬車2台分よりも大きい頭を見て、アデルは少し首をかしげる。


 「とりあえず、まんま入るか試したらどうだ?

  ダメだったら、首ん所をもう少し切ってみるとか

  2つ割りとか4つ割りとかすればイイんじゃねぇ~の」


 神護の言葉に、アデルはコクコクして、巨大虹色オオトカゲの頭部に向けて、財布風の口をガパッと開いて収納を試みる………が。

 入りそうな雰囲気なのに、入らなかった。


 「ダメみたいですねぇ…はぁ~…できれば、頭部丸のまんまで

  インベントリに入れたかったんですがねぇ…………


  ちなみに、インベントリ持ちは少ないですよ

  下手に所有しているの知られると、軍隊に徴収されちまうんで

  アタシ達商人は、内緒内緒で保有してますけどね」


 と、言いながら、なんとか入らないかと財布風のインベントリと巨大虹色オオトカゲの頭部を交互に見るアデルに、神護はクスッと笑って、一瞬の抜き打ちで頭部の首の部分を50センチほど落とした。


 「そういうモンなか? っと、ちょっと切ってみたけどどうだ?

  入りそうか?」


 神護にそう言われて、再度財布風のインベントリを翳すが、まだ入らなかった。

 が、手ごたえはかなり合ったので………。


 「すみませんだんな、同じぐらい切ってくれませんか?

  そしたら、丸のまま入りそうなんで………」


 アデルの言葉に、神護もなんとなくそうじゃないかなぁ~っと感じたので頷く。


 「了解」


 言葉と同時に、首部分がほぼ同じぐらいの骨付き肉で落ちる。

 と同時に、シュンッと微かな音をたてて、巨大な虹色オオトカゲの頭は、アデルの持つ財布風のインベントリの中へと収納されたのだった。


 頭部が収納されたのを見て、黙って成り行きを見ていたリカオンの獣人らしい、たぶん青年が、目をキラキラさせながら、尻尾をブンブンと振り回しながら言う。


 「すごいっス、アデルのダンナ、あんなおっきなの入れるなんて

  やっぱ、ダンナの《魔力》が凄いっからスね」


 アデルは、ちょっと苦笑いを浮かべながら、リカオン獣人の青年をたしなめる。


 「これこれ神護のだんなの方が、ずっと凄いですよ

  なんと言っても、首元を切らなくても入っていたんですから………


  すみません、神護のだんな、コイツはアタシの弟子でしてね

  今回旅が終わったら、のれん分けするんですよ


  ちなみに、コイツはリカオン族なんですよ

  ほら、自分でご挨拶しなさい、カラン」







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