第13話0013★送り出す者達 前編


 飛翔族の鳳皇ほうおうきさき達が、祈りの言葉を唱え、自害した、その頃。


 引退した大神官長や神官達の妻達が、祈り翼をお互いに切り落としていた。


 「無事、天への門が開きますように…………」


 「門を潜る者が、全て

  天の御座に着きますように…………」


 「戦いにおもむいた者達の無事を…………」


 何度も、同じ願いを唱え、お互いの翼を切り落としていた。

 そして、全員で最後の祈りを、女神サー・ラー・フローリアンに捧げる。


 『我等の命のほむらささげますゆえ

  どうか 飛翔族にご加護を』


 麗しき女達は、全て、己が、胸を短剣で貫き息絶えた。





 同時刻、門を開く、呪文を唱えている大神官長及び神官達の前に、光り輝く門が出現した。


 《力》の限り残りの呪文を唱える彼等の前に、護衛隊に導かれた姫達や民達が続々と集まって来た。 


 すると、光り輝く門が開き、色取り取りの巨大な水晶の中を通る乳白色の道が現れた。


 呪文の全てを唱え終えた、大神官が集まった人々を見回して言う。


 「ラー・ムーン・ルリ姫

  守護獣であるラーイを先頭に


  その後ろに、この鏡を持つ貴女が

  民を導き歩き始めて下さい」


 「大神官長様、父上か、兄上が

  先頭に立つべきなのでは?」


 「女神である

  サー・ラー・フローリアン様の

  元に旅立つのですから


  女性が先頭に立つものなのです


  その後に、男性が続くものなのです」


 その言葉にラー・ムーン・ルリ姫は頷く。


 「判りました

  では、私が先に行きましょう

  ラーイ、前へ」


 姫の呼びかけに、巨体を音も無く動かし、ラーイが光り輝く門を潜る。

 その姿を確認してから、姫は、振り返り宣言する。


 「さあ、我等の真なる故郷に

  参りましょう


  我等の始祖たる

  サー・ラー・フローリアン様のもとに」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る