第141話0141★樹海の幸は風の精霊の加護付き・風糖《ふうとう》


 いいしばらく歩き続けた神護は、自分が歩く小川の反対側に、ブドウのようなモノを見付け、川中にある岩をトントンと飛んで、反対側の川沿いへと向かう。


 小川を渡り、反対側の樹海にチラチラと見えるブドウを目指し、神護は白夜を腕に、そこにたどり着く。


 「白夜、このブドウのようなモノって食べられるか?」


 神護に聞かれた白夜は、過去に食べたことのあるモノだと気付き頷く。


 「はい 大丈夫 食べられます とても甘酸っぱくて

  美味しい実です 父上のところは ブドウというのですか?


  こちらでは 風の精霊とかが とくに集まり易い


  風溜まりの場所に生る実の為に 風糖ふうとう

  呼ばれているんですよ とても甘いんですよ


  ここには 風の精霊は居ないようですね

  私達が居るセイかな? 精霊は人族が嫌いなんですよ」


 ふぅ~ん……風の精霊が集まる場所で…風糖ふうとうねぇ……

 まっ…精霊ってモンは、人間が嫌いで当然だろう


 欲深いのに捕まったら、たまったもんじゃねぇ~だろうからな

 まぁ………それはさておき、マジですっげぇ~量だな………

 どんだけひとつの房に着いてるんだよ


 なげぇ~のだと……俺の……身長より長いぜ……

 粒だって……500円硬貨なみにあるぞ

 もしかして……これって記念硬貨なみかもなぁ…………


 ……って……うっそっ……この辺がイイかなぁ~って……

 房の根元の茎を握ったら、勝手にブツッンと切れた………


 …けど…思っていたよりも重くない……どうしてだ?

 せいぜいが…スーパーとかで、ちょっと良い位置に置かれて

 高額で売られている房なみの重さだぞ………


 あぁ…そう言えば……風の精霊が集まる場所だっけ

 ……風の精霊の加護付きで……精霊の果実ってことかな

 だから軽いんだろうな


 まぁ…これなら…ひと房採って渡しても…羽化したての

 白夜の負担にはならないだろう……


 精霊の加護付きの実……まして甘いモノ……絶好の果実だな

 たぁ~っぷり食べてもらおう……どうせ……俺が歩いている間

 抱っこされている白夜は、暇なんだから…………


 嬉しそうにしている白夜に、神護は熟れていそうな房を手に取り、渡してやる。

 白夜は、小さな手で房の茎をしっかりと握り、嬉しそうに言う。


 「ありがとうございます 父上

  白夜 とっても嬉しいです」


 ちなみに、この風糖ふうとうも、滅多に食べられない樹海の幸だったりする。


 その場所の風の精霊の加護と《力》が凝縮されている為、ひてとつぶでもかなり効果のある代物だったりする。

 また、そこに加わった《力》によって、房の長さと粒の数は綺麗に比例していた。


 ちなみに、神護が見つけた風糖ふうとうは、神護の身長なみに房が長く、粒もものすごぉ~く多かった。

 言うなれば、多大な加護と《力》が込められたモノだった。








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