第130話0130★神護、白夜を腕に樹海を歩く1 さて、どちらに行こうか?



 まっ平らになったそこを見て、神護は肩を竦める。


 「えぇ~とぉ~…なんか…思っていたよりも…すざまじく

  綺麗さっぱりになってんなぁ……まっ…いっか………」


 開けた空間を見回してから、神護は白夜に問い掛ける。


 「なぁ…白哉……この【竜ケ峰りゅうがみね】って、どっち行ったら

  街へと降りられる?」


 夢の中で、何度も何度も森林の中を歩き、とうとう出られなかったという記憶がある神護は、白夜にそう問い掛けるのだった。


 白夜は、神護からの問い掛けに、ちょっと小首を傾げる。


 〔えぇ~とぉぉ……追跡してきた やつらをまく為に

  転移とかも使って 移動したりしたから…………〕


 ちょっと困った顔をしながらも、白夜は見覚えのある方角を指差す。


 「たぶん こちらの細い獣道を使ってだと思います

  すみません 記憶が少し あやふやなところが………」


 確定した目的は、飛翔族を集めるコトだけで、行く当てなどまるで無い神護は、まいっかという顔をして、白夜が指差した方へと足を向けるのだった。


 神護は、白夜を腕に、細い細い獣道を歩く。

 しっかりとした足取りで、周囲を警戒するようにしながら…………。

 そんな神護に、白夜は話し掛ける。


 「父上」


 「ぅん? なんだ?」

 

 「父上は 異世界出身なんですよね」


 「ああ、そうだぞ」


 「父上の世界には この世界にある 魔法や魔術というモノは

  存在していたのですか?」


 白夜の素朴そぼくな質問に、神護は首を振る。


 「いや……存在してない」


 それを聞いて、白夜は考え込む。


 〔父上に知識や《魔力》を譲渡したが………魔法や魔術の………

  概念がいねんが存在しないのでは…………


  誕生までの間 私は不思議な空間でまどろんでいたから

  外で どのようなコトがあったか知らない………


  ただ 父上は 魔素という言葉を知ってはいた…………〕


 迷い無く細い獣道を歩きながら、神護は沈黙してしまった白夜に問い掛ける。


 「白夜、魔法や魔術がどうかしたのか?」


 神護からの問いに、白夜は顔を上げて言う。


 「父上は その……… 魔法や魔術 使えますか?」


 「ああ…使えるぞ……あのいにしえの女神の神殿入り口付近

  綺麗さっぱりになってたろう


  あれは、入り口に…敵が現れたせいで、魔術?

  いや…あれは、魔法か?


  ちょっと、まだ知識がかなり混乱していて

  どっちか判らないけど、それを行使した結果だ


  ちなみに……あいつ等が俺達の敵だって、判ったのは

  〈ドラゴン・ソウル〉のホタルが、教えてくれたからだ


  黒き河の国の兵士達で……黒鼠族こくそぞくと呼ばれる

  ネズミ族の獣人で、飛翔族の敵だってことをな」




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