第19話0019★皇子達は奮闘する2


 茶羽根一族ちゃばねいちぞくの者以外は、皇太子ラー・レイ・ビャクヤの名のもとにという命令に従った。


 真の故郷への門をくぐらずに、黒き河の軍勢の侵入を阻んでいた者達は、次々と手直の家屋へと火を放ち、命令通りに、飛んで逃げ出す。


 だが、それを予測していた、黒き河の軍勢は、ワイバーンを駆って飛翔族の者達へと襲い掛かる。


 空中での速度はワイバーンの方がはるかに速い為、離脱に苦戦する。


 そこに、兄皇子達が心配した第三の皇子ラー・ロイ・シレイは、故郷への門をくぐらずに、参戦していた。


 「皆 我がもとに集え 飛ぶ」


 その言葉と同時に、逃げ惑っていた飛翔族の者達がザァーっと、第三皇子ラー・ロイ・シレイのもとに集う。


 既に《魔力》で、移動術を発動させていた。

 空中に、大規模な呪文の紋様が描かれる。


 飛翔族限定の移動門を発動した第三皇子ラー・ロイ・シレイは、その神々しいような白銀の翼を広げ、その《魔力》で集った者達全てを包み込み込んだ。

 その瞬間に、高らかに最後の祈りの言葉を詠唱をする。


 「女神サー・ラー・フローリアン様

  貴女の民を 導きお守りください

  天翔てんしょうっ」


 それと同時に、今にもワイバーンにつかまれそうになっていた飛翔族の集団は、ふっとその空域から綺麗に消え去っていた。


 もう少しで捕まえられたのにといういきどおりと、国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王の激怒を恐れて叫ぶ。


 「あれだけの集団だ

  軌跡を追え 神官はまだかっ」


 ワイバーン部隊の部隊長が怒号をあげて、神官達を呼ぶ。

 神官はワイバーンに騎乗できない為、黒き河の軍勢の地上部隊に混じって行動していたので、足止めをくっていたのだ。


 その上で、そこここから、火焔かえんきあがる。


 ごぉぉぉっ……と、言う音ともに、飛翔族の王都のあちこちで火柱が巻き上がる。

 現代用語では、火災旋風かさいせんぷうというモノだった。


 《魔力波》を感じて、2人の兄皇子達は、第三皇子がんだことを感知し、ひとまず、胸を撫で下ろしていた。


 皇太子である兄ラー・レイ・ビャクヤに命じられた通り、第二皇子ラー・セイ・グレンは、新旧の図書館に、火焔かえんを放った。


 「嗚呼 我らが飛翔族の英知が燃える」


 切なさと共に、第二皇子ラー・セイ・グレンは、大規模な火焔かえんの《魔力》を盛大に放つ。

 制空権を奪い、我が物顔で飛び回るワイバーンへ、容赦の無い業火ごうかを放ちながら、その場を離脱する為に、スッと翼をたたみ、地上へと降り立つ。


 数人の飛翔族が駆け寄る。

 第二皇子ラー・セイ・グレンは、集まった者達に頷き、隠し《呪陣》へと走る。


 もしもということを想定し、展開されている移動の為の《呪陣》は、発動に王族の血と《魔力》が必要だった。








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