第137話0137★白夜の異変4 なんであれ、羽化できた理由 



 「とりあえず、切るのは終わったぞ

  後は、傷口が膿まないように、清浄の魔術をかけて………

  治癒の魔術を…かければいいかな?」


 そう言いながら、神護は短剣に清浄をかけて、鞘にしまって布袋へと放り込む。


 さて……短剣は簡単手入れして…しまったから………

 ……って……白夜の翼……完全に……ひよこの翼だな……


 完成した完全形の翼状態じゃなく、皮下から出現した翼

 まるで、ひよこのような小さな翼ってコトは………


 【転生】したばかり幼い身体への負担を、軽減するためかな?

 白夜が意識していない、自己防衛本能の結果というところか?


 このあと成長する可能性は、かなり大ってコトだな

 ……じゃない………少し矯正しておかないとダメかな?


 目の前で血まみれの1対のかなりねじれた翼を見て、神護は慎重に清浄の魔術を施し、翼を出す為に切った傷口と治癒をかける。

 それから、ソッと翼を正しいカタチへと導く。


 うん…良かったぁ~…小さい空間に詰め込まれたような

 状態だったようだけど、折れている感触はないな


 ふむ…しかし、思っていた以上に、柔らかいな

 まるで、セミの羽化直後のような翼だな


 今は、ちぢれてふにゃふにゃの翼だが………

 そのお陰で触っても大丈夫のようだしな


 翼を正しいカタチへとそっと誘導しても

 白夜が身動かないところをみると、痛みは無いようだな


 はぁ~………手で正しいカタチに整えられて、良かったぜ


 ただ、困ったことに、白夜の翼は見るからに未熟で、これからゆっくりと成長するだろう姿はともかくとして、ひよこの小さな翼の根元は、じゅくじゅくとしたままだったりする。


 いや、翼を出す為に作った切り口からの出血は、綺麗に止まっていたが………根元は体液で潤んだままだった。


 そして、翼はというと、弱しいく顕現したばかり小さな翼を保護する為に、うっすらと翼の内側からほのかに輝いていた。


 ぅん~……なんか…翼を覆っているけど……これって………

 羽化したての翼を護る為の水膜かな?

 羊水もどき?かもしれないな


 とりあえず、翼の状態を確認して、白夜に現状を言う。


 「とりあえず、羽化は成功かな? 1対の翼は出せた

  ただ、俺は、本来の飛翔族の翼の状態を知らないから


  何ともいえないが……白夜の翼は、ひよこの…いや…

  誕生したばかりの雛の翼によく似ている


  卵から孵ったばかりの雛を見たことあるけど…………

  ちょうど、その状態にかなり似ている


  肩甲骨の上という、狭い限られた空間で急激に成長したから

  いびつに歪んで無理やり収納されたような状態だったからなぁ


  これで行くと、白夜の翼は、必要な栄養素?が補充されるまで

  背中の皮膚の下で、かすかに形成されていただけだったんだな


  それが、完全に俺がこっちに来て、あの神殿で孵化させたから

  卵から孵って、卵という狭い限られた空間から解放された


  その後に、白夜の身体の成長に必要な要素が揃って

  形成が未熟だった翼の形成が追いついたというところかな?


  翼というカタチが、皮下できちんと顕現されるまでは

  無理なく、肩甲骨上に納められていたんだろうがぁ………


  完全なカタチになったんで、皮下収納の限界に来ちまって

  今回の羽化に至ったってところかな?


  まぁ無理な【転生】なんてモンしたセイで卵から孵化したあと

  翼を背中の皮膚の下から解放するという、2度手間が

  必要だったのかもな」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る