第124話0124★古の女神の神殿5 孵化した子の名前はビャクヤというらしい


 神護を見上げる綺麗な瞳の色は、一見すると黒と見紛うほど濃い紫だった。


 紫紺と呼ぶに相応しい双眸の子供は、しっかりとした口調で神護に向かって言う。


 「初めまして 父上 ビャクヤ と申します」


 神護は、目をパチクリしてから、にっこりと笑い返す。


 「俺は、真城ましろ 神護しんごだ……

  よろしく、びゃくや……いや、白夜か?

  それとも、百夜? 白哉か?」


 ちょっと考える神護に、ビャクヤは愛らしく小首を傾げながら言う。


 「父上 《真名》は 名乗ってはダメです

  【名盗り】されたら 支配されちゃいます」


 ビャクヤのセリフに、神護は頭をウニウニする


 「まな? ……ぅん~……ああ《真名》か………

  【名盗り】ねぇ……そういう概念がいねんなんてないからなぁ

  心配しなくても、盗られたりしねぇ~よ………


  そういう意味で言うなら、俺は【名被せ】の民に

  なるからな……盗れないんだ」


 ビャクヤはびっくりする。


 〔父上は 伝説とうたわれる 【名被せ】の民なのか

  遠いはるか昔に 滅んだという…………〕


 そんなビャクヤに気付く余裕の無い神護は、ちょっと考えて言う。


 「そっか……びゃくやは【名隠し】の民なのか……

  だったら、被せちまえばイイな…盗られないように……

  ふむ……白哉? いや、白夜の方が良いかな?」


 ふむふむと、勝手に納得した神護は、ビャクヤに向かって言う。


 「いいか、ビャクヤ……俺が選んだのは、白い夜だ……

  これで、びゃくやと読む…ちなみに、ホワイトナイト……


  とも言って、白い騎士…ようするに正義の味方という………

  意味も含まれる……同じ音で、白哉とも書ける……

  こっちは……しろなりという意味も込められている………」


 神護が、ビャクヤを白夜と呼んだ瞬間に、全身にピリピリしたモノが走り、自分が違うモノになったことに気付いた。


 すなわち……【名隠し】の民から【名被せ】の民へと……。


 〔私は 【名被せ】の民になったのか?

  もう【名盗り】に怯えなくて良いということか?〕


 びっくり眼の白夜に、神護は優しく頭を撫でる。


 「とりあえず、よろしくな、白夜」


 その暖かい感触に、白夜はにっこり笑う。


 「はい 父上」


 転生したとはいえ、幼い身になった分だけ、思考も幼くなってしまったビャクヤ……もとい、白夜は、自分が居る場所を確認する為にキョロキョロする。


 〔ここは 女神の神殿? って 祭壇の上か……

  父上ぇぇ~ なんで こんな神聖な場所?〕


 白夜が、自分のいる場所に気付いて、驚いている間、神護は内心でかなり困っていた。







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