第7話0007★茶羽根族(ちゃばねぞく)の裏切り

 それから数ヵ月後のある日。


 鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは、ジャハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王の軍勢が、突如、王都シャイアン・フローランに現れたという報告を受けていた。


 その時点で、茶羽根ちゃばねの一族に裏切られたことに気が付いた。

 同族の裏切りに、鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは、切なげな呟きをこぼす。


 「愚かな茶羽根ちゃばねの一族よ


  ロー・ブラン・カルンチャイ……

  茶羽根一族ちゃばねいちぞくの長ともあろう者が……

  己が欲望で…………


  一族の滅びを呼び込んだか………

  哀れなことよ」


 その間にも、刻々と王都を我が物顔で侵略しているという報告が入る。

 皇太子である第一皇子のビャクヤは、淡々と父であり、鳳皇ほうおうであるラー・シン・ビャクレイに、問う。


 「父上、いかが致しますか?」


 兄の横顔によぎる決意を感じ、第二皇子のグレンは、その色鮮やかな火焔色の髪色を、ゆらりっと揺らしながら言う。


 「兄上、戦いましょう」


 グレンの言葉に、この侵略に怒りを感じている家臣達が言い募る。


 「「「「王よ、我等一丸となり

  戦う所存に御座います」」」」


 鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは、我が子達をみつめ、家臣を睥睨へいげいし、力強い言葉で首を振る。


 「ならぬ」


 「しかし…………」


 鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイの言葉に、今まさに侵略されているのに…………と、いう不服が、わずかにこぼれる。

 それを理解りかいした上で、鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは、重い口調で言う。

 

 「我等のこの《力》は

  戦いにもちいることは

  禁じられておる」


 それは、この場にいる誰もが知っていることだった。

 それでも、無辜の民が、今、この時も蹂躙されているかと思うと、いてもたってもいられずに、誰ともない言葉がこぼれる。


 「ですが、このままでは…………」


  鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは、理解わかっていると大きく頷いて、今、自分達が最優先でするべきことを命令す。


 「まずは最優先で姫達

  子供達を逃がすのだ


  あやつらの狙いは我らの血筋

  子を成せる姫達だ


  異種とは交雑できぬと言うたのに

  それでも諦められなかったようだな」







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