第8話0008★迎撃より優先されるべきコト



鳳皇ほうおうの臣下にあるまじきと思っていても、戦う《力》などない市民達を護るための攻撃よりも、王家の姫達や子供達を逃がすことを優先するのは、どうしてか?と…………思い、問いかけてしまう。


 「なぜです?」


 その問いに、鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは端的な言葉で答える。


 「戦って、捕虜になり

  それをエサに

  無理難題を言われるのは必定


  特に、姫達や子供達の命を

  盾にされては逆らえぬだろう」


 苦虫を噛み潰したような苦渋の選択をしたと理解わかる、鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイに、この飛翔族の武を司り、市井の警護を担う者達が言い募る。


 「「我等の《力》なれば

  あのような輩…………」」


 その心情から、身を乗り出さんばかりで、更に言い募ろうとする武を司る者達を、大神官長が神官達を代表して、ばっさりと切るように言う。


 「私達は、鳳皇ほうおうのお考えに賛成です」


 大神官長の補佐を勤める右の者が、事実確認の意味を込めて言う。


 「鳳皇ほうおうがおっしゃる通り

  彼等が欲しいのは

  我等の血に潜む《力》です


  光風こうふうの女神より授けられた

  祈願成就の《力》なのです


  その血筋を奪われてはなりません

  なんとしても、彼らに始祖天翼鳳皇てんよくほうおう

  血筋をられてはなりません」


 左の補佐も、言葉を重ねる。


 「邪な欲望を持つ彼等に

  姫達は犯されて

  子供を孕ませられます


  そして、皇子方は

  子を孕ませるように

  媚薬漬けにされるでしょう」


 淡々と、捕らわれたなら、確実に行われるだろう行為を口にする左右に頷き、大神官長は、高く明言する。


 「最高神であり、光風ふうこうの女神でもあり

  我らにとっては、太陽神でもある尊きお方


  女神サー・ラー・フローリアン様の

  血を継ぐ我等は飛翔族は


  恋愛以外で、ただ獣人びと

  交わってはならないのです


  ましてや、黒鼠族こくそぞくのような

  邪な欲望を持つ者とは

  もってのほか、なのです」


 その言葉に含まれるなにかを感じ、第二皇子のグレンは首を傾げて問う。


 「大神官長様

  それは《魔力》と寿命のことですか?」


 「いいえ、残念ながら

  それだけでは御座いません」




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