第208話0208★白夜は無意識に依存する


 本人に自覚は無いが、皇太子としての日々の責務に、飛翔族の翼に潜む祈願成就の《力》を狙われ、敵に追われ、独りで行動していた為に、転生前には心休まる時が無かった為だ。


 それが今は、転生の為の術を施した卵の誕生前から、絶対の庇護を与えてくれる【守護者】としての神護が側に居て、常に護ってくれているのだ。

 白夜は、無自覚に、依存する心地よさに浸っているのだった。


 だからと言って、神護がそれを負担に思うことは無いのも確かなことだった。

 神護は、無自覚だが、手の中の庇護対象が最近自立傾向にあり、手が掛からなくなって来た為に、寂しかったのだ。

 母親が植物人間状態になってからは、幼い弟妹を護り育ててきただけに………。


 言葉は、悪いが、寂しい者同士の依存も確かに存在していた。


 だから、幼い仕草で抱っこをねだる白夜の可愛らしさに、神護はついつい甘やかしてしまうのだ。

 そして、今もまた………。


 「父上 今度は 少しだけ あちらの方に行ってみませんか?」


 楽しげに蒼銀を帯びた、純白の翼をぱたつかせたのが、頭から被せたマント越しに判り、神護は微苦笑する。

 そんな神護の髪先をクイクイと引きながら、礫砂漠れきさばくの方を指差す。


 「あぁ……そうだな、そろそろ礫砂漠れきさばくの方に進路を向けるか

  砂漠の旅もイイかもなぁ~………そんじゃぁ~……とりあえずは

  白夜と同種族のが捕らわれている、国でも探してみるか?


  まずは、そうだなぁ………たしか、紅い髪のグレンだっけか?


  彩湖さいこ王国の東の端美里みさと街とかいうところに行って

  そこに、本当にグレンが居るかどうかを、確認してみるか?


  グレンが、そこに居るならば、この俺がどんな手段を使っても

  かならず取り返してやろう」


 力強くそう言う神護に、白夜は《力》を発揮できない脆弱な身体の自分を少し寂しく思いつつも、嬉しそうに頷く。


 「はい 父上………」


 そう答えてから、白夜は無意識にうなだれる。


 「どうした?」


 神護はそれに直ぐに気付き、心配そうに問い掛ける。


 「………」


 「ぅん?」


 少しためらってから、白夜は神護に言う。


 「禁断の【転生術】を使って生まれ変わった この私を 弟は

  グレンは きちんと認識してくれるでしょうか?」


 心配そうに言う白夜に、神護はくすっと笑う。


 「大丈夫さ……白夜の弟・グレンは、きちんと見分けてくれるよ

  それよりも、取り戻した時に、心配しなきゃなんねぇーのは

  グレンが、自分も【転生術】したいとか言い出すことかな?」


 「えっ?」


 何で?という表情の白夜に、神護はクスクスと笑う。







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