第121話0121★古の女神の神殿2 獣人だからと言って可愛いわけじゃない



 んじゃ……とりあえず……目の前の7人かな……

 とりこぼしあったら、後で片付ける………でいいかな?

 今は時間が惜しいからな…………


 [わかった……んじゃ、とりあえず…ホタルは…

  腕輪ん中に戻ってくれ……もしかしなくても……

  たぶん…危ないから……]


 神護の命令に、ホタルはスイッと舞い戻り、そのまま神護の中に消える。

 それを見た、黒き河の兵士達の中のひときわガタイのイイ黒鼠族こくそぞくの男は、ニヤニヤする。


 「あいつは〈ドラゴン・ソウル〉使いみたいだな」


 「手に入れれば、一攫千金」


 「翼が無いから、飛翔族の者ではないだろうが……」


 「くっくくくく……見目も悪くないしな……」


 「献上すれば………」


 「味見はダメだぞ」


 「王への献上品だ」


 「「「「「「はっ」」」」」」


 神護を見て品定めのような、おぞましい発言をながす黒いネズミの獣人に、冷徹な双眸を向ける。


 ふっ……マジで…良かったよ…下種な集団で

 良心の呵責に苛まれるような姿してねぇーしな


 ネズミーランドのキャラ的な可愛さなんて

 こいつらに、ひとカケラも無いから助かるわ


 頭の中に、呪文の意味とそれが起こすだろう現象を意識しながら、神護は詠唱破棄で唱える。


 「《結界》」


 神護の言葉と同時に、神殿入り口周辺である森林が生えていない空間が一瞬キラリと光る。


 張った本人は《結界》を視認出来るが、敵の黒き河の兵士達にそれは見えないらしい。

 勿論、リーダーにあたる者にも、神護の張った《結界》は感知できていなかったようだ。


 だから、神護の唇が零れ落とした《結界》という言葉に、一瞬動揺する。

 が、捕らえればイイと思ったのだろう。


 嫌悪感が這い上がるような邪悪な笑みを浮かべて、神護を見る。


 そう、飛翔族の剣を身に着けているが、抜刀すらしていない上、最初から自分達に対して、魔術を展開したので、魔術師と判断したのだ。


 ようするに、神護は肉弾戦は苦手だろうと…………。


 そして、神護は知らなかったが、彼らはこの地に派遣される前に、対魔術対策の為の防護アクセサリーを、幾つも身に着けていたのだ。


 だから、細身の少年期から脱したばかりの、青年になりかけの神護を、魔術師と判断して、簡単に制圧できると思ったのだ。


 すぐに《魔力》が尽きるだろう…………と。


 《魔力》が尽きれば、簡単に捕らえられると、下卑た笑みに崩れ………。

 その表情を見てしまった神護は、あまりのおぞましさにブルッと震える。


 なぁ~んか…マジ幻滅ぅ~…獣人でも…可愛いくねぇ~……

 ああいう、ものすごぉ~く気持ち悪いのもいるんだぁなぁ……






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