第47話0047★《封印》されし神殿とビャクヤ2


 古い封じられた記録を見つけた時のコトを、ビャクヤは思い出す。


 あれは 私が 皇太子になる前だったな

 厳重な《封印》が施された小部屋は

 父上すら知らないご様子だったからな


 どれだけ長いあいだ《封印》されていたのか

 だが ホコリ臭さもカビ臭さも無かった


 そう 時間の止まった空間だった

 あの秘密の小部屋の頑強な《封印》


 今思えば 《封印》がけたのは

 偶然だったのか? と思えるが………


 だが 当時は そんなコトを考える

 余裕などなかった


 唯々 《封印》がけて

 中に入れたことが嬉しかった


 そこに納められた

 世から抹殺された蔵書達


 禁術などが記された

 魔道書や魔術書


 その中に あった真実


 女神サー・ラー・フローリアンの……

 血統たる 我が皇族の血筋が

 簒奪された時に起こるだろう事態 


 陵辱され 穢されて 誕生するモノ

 それは 女神が《封印》せし 邪神達


 始祖の女神が

 己が血筋を【贄】の代価とし


 過酷な約定を元に

 かろうじて《封印》した邪神達が

 このままでは 覚醒めざめてしまう


 そうなる前に 飛翔族を建て直し

 約定の為に《封印》されし

 真の《力》を解放しなければ………


 黙々と山道を歩いていたビャクヤは、思考をさえぎる、明確な意思を感じて、自分がつけられいることを自覚する。


 ………何人だ? 少し前まで

 私を追走する気配は遠かったのに………


 やはり この状態から考えて

 私自身に対する 追っ手か?


 でなければ 私と同じように

 飛竜の化石のカケラでも………


 と いうモノではなさそうだな

 明確に 私を 狙っているようだ


 変幻の術でもって

 一般的なキツネ族の姿をとっていたが………

 バレているようだな


 ふむ この地が《封印》されし

 【竜ケ峰りゅうがみね】に


 忘れ去られし 名も無き神殿が

 飛翔族が最高神と崇める

 

 女神サー・ラー・フローリアンの神殿と

 突き止められたということか?


 《封印》の為に 迷いの樹海と化した

 この中を 私を追うということは

 そういうことだからな


 このまま 《封印》されし神殿へ

 浅ましき欲望に目が眩み 穢れた者達を

 連れていくわけにはいかない


 たしか あの古地図には………

 もう少し行けば 戦闘に適した

 ひらけた場所がある筈


 左手に側に 目印となる

 赤い樹皮の香焔樹かえんじゅが………


 ああ この独特な 華やかな香り

 間違いない こっちか





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