第48話0048★《封印》されし神殿とビャクヤ3 襲撃を受ける



 ビャクヤは、その華やかな香りを嗅ぎ取り、戦う覚悟を決めて、少し開けた地へと足を向けた。


 そして、その開けた空間へと足を踏み入れた瞬間。


 先回りしていたらしい、捕獲者達が襲って来た。


 終始無言で、明確な捕縛を目的とすることがよく判る攻撃。

 そう、ビャクヤに致命傷を与えないように、されど、その体力などを確実に削る為のモノを次々と繰り出す。


 ビャクヤは、相手に自分が、飛翔族の皇太子であるという確証を与えない為、変幻の術はかず、愛剣も出さない。


 避けられる攻撃は全て避け、弓で応戦しながら、一撃必殺の魔法を放つタイミングを見計らう。


 ひとりも逃がさない

 ここで 全員抹殺せねば


 秘されし神殿の位置を 襲撃者達に

 知られるのはマズイからな


 ビャクヤを取り囲む者達の姿は、バラバラだった。

 いかにも、麓の街の人間に見える姿から、黒き河の兵士の姿に、冒険者らしい姿、ハンターの姿の者も居た。


 だいたい 12名というところか………

 幸い 魔術師や魔法使いは居ないようだな


 だが この人数を考えると【竜ケ峰りゅうがみね】を

 張られていたということか…………


 その事実に、苦いモノを感じながら、ビャクヤは一網打尽にした者達を、一撃必殺で抹殺する大技を放つタイミングを待っていた。


 強襲した者達は、ビャクヤが飛翔族の皇子という確証は持っていなかった。


 ただ【竜ケ峰りゅうがみね】の麓の街で、不審な行動をする者が、皇子の可能性が高いということで張っていたのだ。


 そうこの【竜ケ峰りゅうがみね】が《封印》された地ということを、黒き河の国の国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、知っていたのだ。


 だから、兵隊の中でも使い手を選んで、この場所へと派遣していたのだ。


 当然、飛翔族の王都・輝く峰へと侵攻する前にである。

 各地の、飛翔族の王族が立ち寄りそうな場所へと…………。


 だから、王都侵略には、国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王配下の腕利きは、輝く峰へは侵攻していなかったのだ。


 ビャクヤも、その気配や無言で襲い掛かる者達が、かなりの使い手で有ることを肌で感じていた。

 ヒリヒリするような、焼け付くような焦燥感に、ビャクヤは舌打ちする。


 《封印》されし女神の神殿で

 早く祈りをささげて

 

 遠見で 姫達や弟達の

 無事を確認したいのに…………


 なかなか 思い通りの位置に

 全員が集まらない


 半分は 魔法の範囲より

 かならず外れている


 このままでは らちがあかない

 ふん なら 私をおとりとするか


 はぁ~… 使いたく無い手だが………

 触られるはイヤだし 気持ち悪いが

 

 このままでは らちがあかん

 仕方が無い ここはわざと


 あやつらに捕まって みせようか

 そう 完全に捕縛できると踏んで


 油断して 我が身に 

 あやつらの全ての手が触れた時


 発動するように

 巨大なサークルを張ろう


 なに そろそろ 弓の矢がつきる

 やつらは それを狙って

 いっせいに襲ってくるだろう




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る