第155話0155★翼の根元をこっそり【ルシフェル】治療



 白夜は、神護が速度を落とし、ゆっくりと歩き始めたのを感じて、コップのハチミツから顔を上げ、どうやっておねだりしようかと考える。


 〔ああ 父上が やっと走る速度をおとしてくれた

  これで やっと なにか ハチミツをすくうモノが

  欲しいって言える


  とはいえ 本当に なにか手頃なモノが欲しい けど

  流石に 樹の枝はちょっとイヤだなぁ…………〕


 そんな白夜の内心を知らない神護は、手近な岩に白夜を降ろして言う。


 「ごめんな、白夜……気付かなくって……何か、ハチミツを

  すくうモノを探してやるな……と、その前に

  まずは、背中の翼を確認するか………」


 神護は不自然にならないように気を付けながら、さりげなくそう言う。

 白夜は、神護からの言葉に、ほっとした表情で頷く。


 「はい ちょっと さっきからジクジクして……なんか痛いなぁ

  ……とは……思っていたんですが… もしかして……

  翼自体が 少し 大きくなったのでしょうか」


 希望観測でそう言う白夜に、神護はにっこりと笑って言う。


 「んじゃ………それも、確認しないとな…………

  つーことで、ここで少し休憩しようか?」


 神護の言葉に、白夜は嬉しそうに笑って頷いた。


 「はい 父上」


 岩に降ろした白夜の背後に回り、神護はそっとマントを外し、翼の様子を確認する。


 あぁ…やっぱり……白夜の希望通り、少し大きくなっているな

 うぅ~ん…翼の根元の皮膚が、少し裂けたみたいだな


 少し出血している………これでは、けっこう痛かったろうに………

 白夜は、我慢強いようだな


 翼を支える、根元の皮膚が裂けんだな……このを部分どうにか

 保護してやらないと…やっぱり…痛いよなぁ………


 [【ルシフェル】お前の樹液って……どうやって出せば良いんだ?]


 神護からの心話に、体内の【ルシフェル】があっさりと答える。


 [マスターの人差し指の腹から『ここから樹液よ出ろ』と

  強く念じてくれれば すぐに出ます]


 端的な説明に、神護はそういうものなのか?と思いつつも、指先に意識を集中して念じてみる。

 と、直ぐに人差し指の指先に、ぷるぷるとしたジェルのような樹液が出現する。


 神護は、そのジェルのような樹液を、白夜の翼の少し出血して皮膚が裂けた根元へとソッと塗る。


 その瞬間、白夜の翼がビクッと震える。


 「ごめんなぁ…痛かったか?


  白夜が感じた通りな、翼が大きくなってたぞ

  だから、根元の皮膚が裂けてちょっと出血していた

  今、保護ようの薬を塗ったんだが………どうかな?」


 ちょっと言いよどみつつも、神護はそう言って、ジェルのような樹液の存在を伏せる。

 まだ【ルシフェル】を、白夜が受け入れられるかわからないから………。

 もちろん、もう片方の翼の根元にも、ぷるぷるの樹液を塗り付けながら、神護は内心で苦笑する。



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