第146話0146★とにかく出来るだけ回収しよう 


 「砂糖? とは どういうモノなのでしょうか?

  甘味料とは 甘いモノを示す言葉でしょうか?」


 神護は、白夜の発言と様子から、甘味の代名詞でもある、砂糖という名では呼ばれていないということを見てとる。


 「白夜、砂糖っていうのは、甘味の一種なんだ

  俺の故郷では、一般的に普及しているモノだ


  ただ、こっちで同じ呼び名かどうかは判らない

  他に、甘味の代名詞になるのは、蜂蜜かな?


  昆虫の蜜蜂が集めたモノなんだが…………」


 神護のセリフに、白夜はにこっとする。


 「あっ 蜂蜜なら こちらにも有りますよ

  ただ それを採取するのは とぉ~っても

  キケンがあるので とても高価なモノです」


 ふぅ~ん…蜂蜜はあるのか……って…こっちと

 蜂と呼ばれるモノの概念は、はたして一緒なんだろうか?

 なんか、とてもキケンを強調されたけど………


 じゃなくって………さて………ふむ……バニラビーンズ…

 いや、最近はバニラシードって呼ばれてるんだっけ?

 よしよし……全体的に発酵しているようだな


 これなら、この辺一帯にあるやつを全部採取しても大丈夫だろう

 

 首を傾げながらも、神護は周辺をよぉ~く確認してから、白夜を腕に抱いたまま双眸を閉じる。


 とりあえず、白夜の安全の為にも 《索敵》


 無詠唱で、周辺の様子を確認する。

 が、そこには、白夜の目にもはっきりと判る、幾何学模様を浮かべて輝くサークルが展開され、ソレがブワァーと拡がるのを黙って見ていた。


 〔父上は 無詠唱で 簡単に魔術が使えるのか?

  何時の間に? 《魔力》を自在に扱えるようになったのだろう?


  自由自在に操れるようになるには 素質と素養

  そして たゆまぬ鍛錬が必要なのだが………


  私が卵から孵るまでの ほんの短い期間で

  完全な習得を すませているということか?


  そういえば 何時の間にか 父上は この世界でも貴重な

  〈ドラゴン・ソウル〉を手に入れていたな〕 


 白夜はそんなことを考えながら、風糖ふうとうの房の茎を持つ手と、神護の服を握る小さな自分の手を見て、改めて自分が【転生術】でもって、輪廻転生を経て再誕したというコトを実感する。


 そんな白夜の内心を知らない神護は、周辺にキケンな敵が存在しないことを確認し、双眸を開いて言う。


 「白夜、悪いけど…俺がバニラシードを採取する間

  少しだけ、ここで待っていてくれないか?

  一応、キケンなモノは周囲に居ないようだからさ」


 神護からの言葉に、白夜は素直に頷く。


 「はい 父上」


 その返事に、神護は頷いてから、素足の白夜を降ろせる場所を探す。

 と、少し離れたところに、手頃な岩が目に入った。


 神護の腰ぐらいの大きさで、天辺がほぼ平らな岩に、白夜を降ろす。

 この空間が高温多湿状態なので、寒さとは無縁な為、そういう気遣いは必要ないのだ。


 白夜を降ろし、身軽になった神護は、さっそく蔓のそこかしこになる、バニラシードの入ったサヤを、回収し始める。

 その神護の姿を見ながら、まだ食べ終わっていない風糖ふうとうを食べ続けた。




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