九頭竜さんが心配・・・・・です

「ほらよ。これお前のだろ」

「あ・・・・・ああ」

九頭竜はチュッパチャップスの棒を加え、顔を逸らしながら俺に渡した。

なんでこんな時間に偶然九頭竜と出会うんだよ。ラブコメ主人公じゃあるまいし・・・・・




「おう・・・・・すまんな」

「その制服・・・・・お前、オレんとこの学校の生徒だったよな。見た目の割には結構外で遊んでんな・・・・・」

「あの・・・・・・九頭竜さん。大河君は同じクラスメイトなんだけど・・・・・」

「花沢・・・・・・・お前もか・・・・・・。そういえばこんな奴クラスにいたような気がするな・・・・・まぁオレにとってはお前らがどんな関係なのか興味ねぇが夜遊びも大概にしろよ」

それブーメランになってるぞと内心思いながらも俺はエロゲパッケージをカバンにしまう。すると九頭竜はタバコをふかすようにチュッパチャップスの棒を揺らしながら俺のカバンを見つめていた。





「お前見るからにオタクなんだな。高校生がエロゲなんて持ちやがって気持ち悪ぃな」

はぁ~~~~やっぱり言われたか。そりゃそうだよな。高校生がエロゲ持つなんてイレギュラーな存在だから軽蔑されるのは当然か。







「あの九頭竜さん。あの一ついい?」

「あ?なんだオレは忙しいんだ。早くしろよ」

「なんでさっきの箱絵を見ただけでエロゲと分かるの?」

「!!!!」

その言葉に九頭竜は強く反応した。そういえばそうだよな。さっき九頭竜はパッケージの表を見ただけでエロゲだと断定するのはおかしい。まぁパッケージや裏表紙でヒロインが〇首見せたら確定なのだがあいつが見たのは『空の彼方に記憶』だぞ。あのパッケージ絵は、蒼天を背景にメインヒロインが孤独に歌っている幻想的の表紙だからそれだけで18禁と断定するのはおかしい。他に全年齢のPCゲームがあるのに対してだ・・・・・・





「てめ・・・・・・・」

「へい彼女、こんな時間になにしてるんだ?これからお茶しようぜ」

「い・・・・・・いやです。なんなのですか?貴方達は・・・・・」

「そんなつれない事いうなよ。お兄さんがこれから楽しい場所に案内するのによ」

九頭竜がなにか口を出そうとした時、近くの路地裏前で、部活帰りの高校生らしい女子生徒二人が、数名のみるからにガラの悪そうな男達に絡まれていており、二人は見るからに怯えていた。





「へぇ君部活?何部?ねぇそれだけでも教えて」

「教えてくれたら帰してくれるんですか。テニス・・・・・・部です」

「そっか・・・・・・テニスか。お兄さんも学生時代テニスやってたんだよ~~~~~」

「ははっよくいうぜ。一か月で止めたくせによwwwwwwww」

「うるせえよ。なっこれから夜のテニス練習しない。お兄さんたちが手取り足取り教えてやるからよ」

「ゲハハハハハ」

この繁華街帰宅の為目撃者は多くいるが、チンピラのガラの悪さに誰もが見て見ぬふりをしていた。確かに俺も同じ行動する。こんな状況ヒーローぶって助けようとするやつは絶対痛い目にあう。みんな自分が可愛いから助けようとしないのだ。

なので俺はスマホを取り出す。




「ざーさん警察に電話しよう」

「うん。その方がいいね」

「あのクズ共が・・・・・・」バキッ

「九頭竜!!!!!」

「お前ら帰れ!!」

それを見てた九頭竜は、わなわなと震えだし苛立った表情で加えているチュッパチャップスが砕ける音が聞こえそれと同時に飛び出した。






「早くこいよ。痛い目に見んうちにな。へへへへへへへ」

「け・・・・・・警察呼びますよ」

「駄目駄目。そんなことしたら駄目だよ。ほら大人しく持ってるスマホを渡してって」

「おいコラ!!!!!てめぇなにやってんだ」

「あ?なにお前。俺らの邪魔すんの?」

おいおい九頭竜何やってんだよ。なんで助けようとするの。今俺らが警察に電話しようとしてるの。




「用は代わりにオレが聞いてやる。お前らはサッサと帰れ」

「は・・・・・・はい」

「おいおいちょっとなに逃げようとしてんの」

「おい待てよ。バカこんな青臭いガキをもて遊ぶよりオレと遊んだ方がいいぜ」

「あ?お前生意気だな」

「こいつ確か最近、チンピラを手当たり潰しに喧嘩をしかける。九頭竜じゃね?」

「ああ・・・・・『上谷ヶ丘の赤龍か』・・・・・思ってた以上に可愛いな。もっとゴツイ奴だと思ったぜ」

「ああ、そのオレが九頭竜だよ。全員ついて来いよ」

「上等だ。その生意気な面おもいっきし壊してやんよ」

女子生徒は九頭竜の計らいで逃げだし残ったあいつはどこから自身が出ているのか。挑発的な顔でちょいちょいと挑発しチンピラを連れて路地裏に消えていった。九頭竜本当に大丈夫か?生意気な女がチンピラをに喧嘩を売り逆に返り討ちにされて〇〇プされるのは青年誌ではお決まりの展開だぞ。






「はいはい・・・・・・・・お願いします。・・・・・・・大河君今110番に連絡したけど5分くらいかかると言ってたけど、九頭竜さんどこ?」

「それじゃ遅いな。ちょっと俺見てくるから。ざーさんは帰れ」

「ちょっと、大河君!!!」

俺はざーさんの言葉を聞かずにあいつらが向かった路地裏に向かう。

なんでこのオタクの俺がこんな行動をしてるか分からない。なんせ相手は学校一不良で嫌われ者の九頭竜だぞ。そんなやつを救ってなんのメリットがあるというんだ。そう脳裏で必死に動いてる体を止めようとしてるがどうしてもできなかった。

だって誰であれ、目の前で困っているものがいれば死ぬ気で体張れって小さい頃から姉ちゃんがさんざん言ってたからな。

まぁ警察は五分で来るって言ってたから五分間殴られば終わるか・・・・・・

だ・・・・・・大丈夫だ。五分くらいチンピラ共に殴られるなんて姉ちゃんとの喧嘩で返り討ちにされる方が遥かにマシだ。





ドカッ!!!!バキッ!!!!ズカッ!!!!!ぐはっ・・・・・・

「いやいやいや。急に怖くなってきた・・・・・」

近くに聞こえてくる誰の声か分からない悲鳴に殴り音が響き渡り、俺は息を飲み、路地裏の奥の街灯一つしかない空き地に向かいスマホのライトをつけ、エロゲが入ったカバンを武器にしてその先に向かう。

すまんざーさん。このエロゲ犠牲になるかも知れないけど許してくれ・・・・・・・ってあれ?







「うう・・・・・・・・」

「こいつつえ・・・・・・・」

「はっこんなもんかよ。たいしたことねぇな。もっとオレを楽しませろよ」ペッ

次見た瞬間目の前には、先ほどの不良は血まみれで倒れこみ、その前には息を切らしチンピラの血しぶきが白い制服を赤い斑点にコーディネートされている九頭竜の姿があり、少々物足りない顔をして唾を吐きだし、倒れている男をカーペットのように歩み寄せた。

つ・・・・・・・つええこれ。俺の出番なかったな。まぁその方が良かったけど・・・・・

ん?その時俺はなにかつまづいた感触が走り俺はそれをライトでかざす。それはどうやら九頭竜のカバンだった。どうやら喧嘩でカバンを投げ捨てたんだな。あとそれにカバンからなにか赤い本のようなものがはみ出しているぞ。なんだこれ?そう思いながら俺はその本を持つ。






「あ?お前確か、大河だっけ?サッサと帰れつったろ。ってお前それ、何持ってんだおい!!!!!」

俺がその本を見てるさなか、九頭竜が俺の存在を気づき必至めいた顔で俺に向かって走り出し、持ってた本を取り上げる。





その本はどうやら台本のようなもので、その表紙にはこう書かれていた。『ドキドキ☆シスターメモリアル延長戦!!!!!間藤さだか役 辰巳ノア様』と書かれていた。




そのタイトルは、HPで『ドキシス』のメーカーが予告していた『ドキシス』のアフターストーリーで今年の10月発売される続編の台本だ。なぜそれが彼女を持ってるんだ。






「おい、何勝手に人の物を見てんだよてめぇ!!!!!ああ!!!!ふざけんなよゴラァ!!!!!」

目の前には奮起し、胸倉を掴んでいる九頭竜で、興奮したせいか声が変わっていて。今までさんざん聞いていた。辰巳ノアさんの声に聞こえてしまう。幻聴じゃない。正真正銘彼女の声そのものだ。





ウウウウウウウウウウウ

「なんだ?」

「まずい。警察だ」

「立てるかおい」

「くそお前ら覚えとけよ・・・」

さのサイレンに反応し、チンピラはとっさに起き上がりふらつきながら去っていたが、九頭竜はそんなことよりも俺に頭がいっぱいで必至にしめようとする。




「九頭竜。チンピラも逃げてる。俺達も逃げよう」

「・・・・・・・・・・そんなの知るかよ。てめぇはここで殺してやる」

『おい。今、あっちでなにか音がしたぞーーーーー』

まずい警察の声が聞こえてこっちに近づいてくるけど、目の前のあいつは完全に頭に血が上っている・・・・・・





「九頭竜・・・・・・・・お願い・・・・・」

『近いぞ・・・・・おい誰かいるぞ』

「くそ・・・・・・・全速力で逃げるぞ」

「ああ・・・・・」

『待ちなさい!!!!!』





警察が明かりで俺らを移そうとした時九頭竜は、ようやく目が覚めライトの明かりをよけカバンを拾い上げ俺の手を掴み一緒に逃げ、警察の追っ手を撒くべく暗い夜道を必死に走っていった。

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