これが九頭竜さんの過去ですか・・・・

九頭竜乃希亜の人生は幼少の頃から波乱万丈だった。



彼女は、生まれつき父親がいなく、物心つくころには既に母の実家のあの古い家に住んでいた。家には祖父母はすでに他界しており母は女で一人乃希亜を育ていた。


彼女の母親はホステス勤務で、朝昼は主に寝ていて、夜は働きに出かけているので幼き乃希亜は、母親と遊んだ記憶は全くなく、それに加え親子にも関わらず会話という会話は子育て意外の日常的なコミュニケーションは全く行っていなかった。ネグレクトというわけではないが、彼女と母親の関係は親子というより赤の他人のような関係でよそよそしかったのだ。



親とのコミュニケーション不足なのか彼女は極度の人見知りで、保育所や小学校で友達に声をかけても、どう答えればいいか分からない為、顔を赤くして逃げているのがよくよくあるのだ。

彼女自身は本当は友達と遊びたいのだが、緊張で声が出ず震えて出来なかったらしい。なのでよく家にいるのが多かった。

彼女の家はさほど裕福ではなく祖父母が残した貯金もとっくに切らしているのだ。とはいっても、母親の兄にあたる松村さんは、婿養子で当時声優事務所の次期社長であり、随分裕福なので母親は何度も松村さんにお金を借りようと頼もうとしたが、松村さんの嫁はその母親の図々しさが気に食わなく、なんども門前払いをされたのだ。





なので彼女の家庭には普通に生活することが精一杯なのでおもちゃやゲームなんて中古のものしか買ってくれなかったのだ。

そんな家にこもりぱなっしの乃希亜にもとある特技を覚えたのだ。

それは声真似だ。彼女は家で一人にいる時何度も録画したドラマやアニメを何度も繰り返してみることで、声真似することが出来、違う声を母親に披露することで仕事で疲れた母親が唯一笑ってくれるので、この特技を何度もし母親を笑顔にしていたのだ。






そんななかある悲劇が起こった。それは小五の秋突如として母親が、自分の口座の預金を全額降ろし、娘を置いて家を飛び出したのだ。

後の情報によるとその母親は、ホステス勤務の常連である会社員に惚れ、その男共々すべてを捨てて新しい人生を歩んだらしく未だに行方が分からないようだ。




残された乃希亜は、唯一の身寄りである母方の兄夫婦の松村家に迎えられていた。親が突如として消えてショックで、ますます家にこもりがちになったが、松村さんとそのご子息は彼女が思う以上に親切で、落ち込んでいる彼女を必要に声をかけ遊びに連れて行ったり貰ったのだ。その影響で彼女の中の暗闇は徐々に消えるようになったが、その兄夫婦の嫁である叔母はその彼女の笑みが気に入らなかったのだ。





「ねぇ乃希亜さんお待ちなさい!!!貴方トイレから出たら扉をしっかり閉めてって何度もいったでしょ!!!」

「ご・・・・・ごめんなさい・・・・・うううう」

「たくっこれだからあの女の娘なんだから教えがなってないわね。今日は今まで以上に厳しく教えるわ」

「そ・・・・そんな・・・・」




叔母はほぼ毎日乃希亜の事を嫌味の如く毎日のように怒鳴り散らし、雑用をこなされ、遊ぶ間も与えないように勉強を新進的に疲労する程毎日教えており、この前まで積極的に話してくれたいとこでさえも、叔母の命により避けることを強く言われ相談することができずただでさえ辛い状況を追い打ちをかけ精神が苦しくなっているのだ。




その嫁の過剰の叱責に松村さんはどうすることができなかった。なぜなら彼の立場は婿養子なので、無理に反対をさせると嫁は癇癪を起し自分の子供たちや自分の仕事にも危うくなるので怒らさない程度にフォローするしかできなかったのだ。





そのような生活が1年以上経ち乃希亜は中学に上がった。性格は前よりも暗めでとても地味で周りに声をかけられない空気のような人間になったのだ。

そんな彼女の転機はとある学校帰りの事だった。その日は委員会の日で帰りが遅くなり帰りの際に酔っ払いの中年はに絡んでいるチーマーがおやじ狩りに合ってることを目撃したことに始まったのだ。



その中年の震え怯えた声でどうすることが出来ず立ち去ろうとした時チンピラの一人が乃希亜に声をかけて無理やり連れて行こうとした。乃希亜はその時抵抗をするが、その震えた手では払うことが出来ず乃希亜はその中年もろとも住宅街の奥地に連れて行かれようとした。助けを呼ぼうとしても口も手も防がれどうすることが出来なかった。



そんな絶対的な状況の中彼女の中にある不安感がプツンと糸が切れる感覚が走った。

気づくと、目の前にはボロボロな手のひらとチーマー達の吐血が制服につき、その場で倒れ気絶したチーマーに何かに怯えて逃げる中年の姿があった。

初めは怯えはしたが、それと同時に開放感が走りその感覚は生れて始めてで心地よく思ったのだ。




それ以来彼女の人生は180度変わった。そのボコボコにしたチーマーがそれ以来彼女に仕返しをするように向かってくるが、乃希亜はその殴った感覚をイメージして返り討ちにすることが何度も続く中いつしか喧嘩に没頭し、性格までも暗めな性格が一変し、グレて硬派な一匹狼のヤンキーに変わってしまったのだ。




生まれ変わった彼女は狂戦士のように日夜喧嘩をし、ボロボロになるまで町をさまよい続ける。その目的は、誰かに認めたいが為でも正義の為でもなくただ単に自分のうちにある為にため込んだストレスを解放して自由になりたかった。それだけの理由で暴れているのだがそれだけでも心の癒しになっていた。




当然、そのことについて叔母はいつものように怒鳴り散らすが、覚醒した乃希亜は誰も止めることができなく逆に反抗してしまい今まで乃希亜の防戦一方に対し、お互いが拮抗するくらいの口喧嘩がほぼ毎日のように続き・・・・・



中学三年になろうとした時には、日々の口げんかのさなか叔母は頭痛で頭を押さえながら本人の前で




「お前なんかが来たせいで家がめちゃくちゃだ・・・・・どこにでも消えてしまえ。お前みたいなやつの世話はもう、うんざりだ」


その一言を聞いたとたん、乃希亜は追い出されることに本当にうれしく感じ、言われるがままに、家を出ることにし、元の家である実家に戻ることにした。




そのことは当然松村さんが話を聞き、なんとか和解を求めようとするが、お互いはとても強情な為に言葉を曲げなかった。



乃希亜はその選択について後悔はしなかった。どの道家に出るのは遅かれ早かれすることだ。中学をさっさと卒業して適当に仕事をしようと考えたのだ。




だが、叔父の松村さんはそれを頑なに首を振ることにした。彼女はまだ中学生で働き口がなくお金を稼ぐすべがない。そんな環境で金を稼ぐのはどの道残酷な人生をたどり彼女の母親みたいな寂しげな人生を送るだろう。そうはさせないと彼女には幸せになって欲しいが為に必要に声をかけたが乃希亜は叔父の話を聞かなかった。



なので叔父は今まで助けることが出来なかった姪を救うべく罪滅ぼしの為に仕事を紹介した。それは叔父の声優事務所の雑務だ。そこで特例として自力で稼ぐことを条件で、乃希亜は叔父の言う通りに別々で暮らすのだが、言われた通り高校までは通うことを約束されたのだ。




それ以降乃希亜は学校を通う居ながらその事務所で掃除などの雑務をしながら金を稼ぐ中やるべきことを探しており、その中で声優の仕事に目を付けた。

声を変えることは幼き頃からの得意分野でこれは利用できるのだと思い、母親が疾走して以降声真似は封印していたが短期間で、感を取り戻すことができ早速社長の松村さんの面接を受け晴れて声優デビューを果たした。

彼女はアニメというものは小学以降卒業し、アニメなんてどうでもいい存在なのだが金を稼ぐためにはなんであろうと利用しようと考えたのだ。




だが、声優としてデビューはしたものの日が浅く深夜アニメのモブキャラしか出演できなく、その報酬さえもとても低かった。学費は松村さんに払ってもらっているだがそれ以外は自払いの為に収入に困っていた。




今の乃希亜はとても負けず嫌いで自分だけが幸せになる為には、どんなことでもやることを出来る自信があり、事務所の若手声優が断ってる18禁のゲームの出演でさえも、平気で出演することが出来た。彼女は顔出しはプライドの為にNGなのだが声だけならばいくらでもさらけ出してもいいという変わったプライドを持っているので、初めてのエロゲ声優のデビュー作であるヒロインの妹属性のさだかの声も独自でイメージしそのキャラになりきることが出来た。




その努力の成果の結果見事『ドキシス』が出世作になり声優の収入も増え一躍エロゲ界では有名な人物なってしまったのだ。

そして彼女は松村さんの言う通り高校に進学し、憎たらしい叔母や喧嘩で培った学力と運動力でそこらの学生をも凌駕するほどの優秀さを持っているがその素行の悪さのせいで皆から嫌われていた。それでも彼女はあの母親の二の舞にならないように勉学も声優も両立し、孤独に先の見えない未来を放浪していた。



その彼女の経歴を都に詳しく説明する。


















「・・・・・・・・・・」

「これがオレの全てだ・・・・・どうだ幻滅したか?」

「なにが・・・・」

「何がって・・・・・お前、オレが声優になったのはあくまで自分が一人で食っていける為の踏み台って言っただろ。そういうのに思い入れなんかないんだよ」

「関係ねぇよ・・・・・」

「あ?」

俺は九頭竜の話を一通り聞いた。あいつが声優なのにアニメやゲームに関心が無いのは、想像以上だったが、なんとなく予測はできていた。

でもそれがどうしたっていうんだ。





「俺は辰巳ノアという声優の大のファンのエロゲオタクだ。特に妹キャラのさだかちゃんが大好きで、日々のおかずにもしているが・・・・九頭竜乃希亜とは全く違うんだ・・・・・俺は声優であるお前を除いてヤンキーのお前が・・・・・・・・大好きなんだ」

「大河・・・・」

言った。言ってしまった・・・・ついに思いを言えた。まだ返事がないのに・・・・嬉しく思えてしまう。





「・・・・・大河。お前は本当にオレの事が好きなのか?」

「何回だって言ってやるよ。お前のことを愛してる。」

「オレも大好きだ・・・・・だから・・・・・・・・・今までの関係は無かったことにしてくれ。明日から他人だ・・・・」

「え・・・・・・今なんて・・・・」

その予想外の発言で俺は落胆する。

なんで・・・・今、告白を受け入れてくれたのに・・・・・







「ど・・・・・どうしてだ・・・・」

「言葉の通りだ。大好きだから別れるんだ。お前・・・・・あのチンピラに蹴られたところ痛むよな?知らずか今だに腹を抑えているぞ・・・・」

確かに腹は痛いけど・・・・・そんなの明日になったら治るはずだ・・・・





「いや・・・・・それは・・・」

「ごまかしても無駄だ。オレは、過去のしがらみで散々敵を作り過ぎた・・・今日のように仕返しされるなんざ日常茶飯事だ。お前の事は巻き込みたくないんだ」

「そんな・・・・・」

「なぁに、そんなに落ち込むな・・・・・ただ前みたいな普通なクラスメイトに戻るだけだ。お前はオレの活躍を陰で見守ってくれるだけでいい。だから学校で馴れ馴れしく話しかけんな・・・・もし話しかけると、本気で・・・・殴る」

その何度も聞く。殴る、殺すぞというセリフは親しいときは何度も聞いたのだが、今回のはいつもより気迫が混じり本気を現わしていた。

これは嘘なんかじゃない・・・・・





嫌だ・・・・・・嫌だ・・・・・・離れたくない。




仮初でも・・・・・・・ファンでもいい・・・・・俺と一緒にいさしてくれ・・・・・

なんでか俺は涙が流れている。悲しくてしょうがないんだ。

こんなに人を好きになるのは初めてだ・・・・・・






「なんでだよ。なんで別れるのに、お前の過去を全て話したんだよ。あれは・・・・」

「後腐れないようにしたんだ。全てを話したら、スッキリして、オレの事を忘れるんだと思ってな・・・・お前なら他に好きな人を見つけられる。花沢でも・・・・涼浦でも好きに狙え。オレはお前が幸せになってるところを陰で応援する・・・・」

違う。違う・・・・・・・なんでそんなセリフが吐けるんだ。

言葉とは別に身体が否定してるように震えてるぞ。お前は嘘が下手なんだから自覚しろよ・・・・・






「俺は、お前とは離れたくない。そんなことをしてみろ。俺はお前の秘密を全てバラすぞ・・・・」

俺は禁じ手だが言うつもりがない脅しを放つ。これなら・・・・・一緒にいられるは・・・・・






「いいぜ・・・・・・お前なら・・・・・・私の人生をぶっ壊してもいい。・・・・・・・そういう仕打ちをしたんだ」

そう言い残し、九頭竜は後ろを向き立ち去った。

俺はそのセリフに反論できず呆然とその後姿が去るのを見ていた・・・・・



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