このままでいいんですか?

「・・・・・・・・」

九頭竜とのこれまでの関係を無かったことにされたあの夜の翌日の月曜日俺は、いつもより憂鬱な気持ちになりながらも駅を降り学校に向かう。

身体のダメージは完全に治ったが、何かを失った感じがして、世界が暗く見えてしまう。

九頭竜とあの関係になる以前の日常になったのに、心のモヤモヤがとれない。


なんであの時、九頭竜が去る時、必死に止めれなかったんだろうか・・・・・

エロゲとかだとこういうのは選択肢が出て間違いなく止めるのだが現実は違う。



自分の心がヘタレだから、止めることが出来なかったんだ。

所詮三次元と二次元では勝手が違う・・・・

俺は主人公になれないんだ・・・・・








「都!!!」

「宗介か・・・・なんで」

セミの抜け殻のようにボーといつもの混み合う電車に乗り学校に向かおうとした中駅前で宗介が出迎えてくれた。確かいつもなら朝練で先言ったはずなのに・・・・






「なんでって・・・・都と一緒に行こうと思ってね。君がこの時間にここを通るのを考えてずっとここで待ってたんだよ」

「でもお前部活はどうした?インターハイ近いだろ」

「そうだけど、それよりも都の方が心配だよ。昨日ずっと返事のLINE送ったのになかなか返答返ってきてないよ・・・・」

あ・・・・・・俺はすかさずスマホを見る。確かに宗介からのLINEと着信が昨日の深夜からかかってきている。普段はスマホをこまめに見る方だが九頭竜の件でショックが大きすぎてそれどころじゃなかったな・・・・







「スマン。今気づいた。こんなに心配してたのか。しかし部活より俺の事を心配してるのはどうかと思うぞ。真面目に部活はやれよ。ただでさえ期待が大きいんだからよ」チョイ

俺はとりあえず、樹のデコにデコピンをする。





「イッターーーーーなにすんの!!!都は相変わらずいらない手が多いんだから・・・・」

別に痛くはしてないが・・・・宗介は結構涙目でこちらをつぶらな瞳で見ていた。

日ごろから練習してんのに相変わらずデコピンには弱いな・・・・

そんな可愛らしい目で見られるとまたちょっかい掛けたくなるじゃないか・・・・・



そのやりとりの影響かなごんで気が軽くなった。俺はとりあえず心配してくれた宗介に登校しながら昨日の出来事を、かいつまんだ感じで説明する。







「・・・・・・へぇ・・・・・そんなことがあったんだ。ごめん都」

「なんでお前が謝るんだよ」

「僕は本当は都の事が心配だったから美国さんと同じようにこっそりつけた方が良かったかな?それだったらチンピラ達を僕の一太刀で成敗できたのに・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴ

「あの・・・・・宗介さん・・・・・・・?」

なに?宗介から湧きあがるオーラが迸ってるように見えるんだけど・・・・

もしかしてあのチンピラに怒ってんの?頼むから余計な追い打ちはかけないで・・・・





「お前余計なこと考えてないだろうな」

「バレた?」

「当たり前だ。闇討ちしようと考えててだろ?その件は姉ちゃんが対処してたから必要ねぇよ。それにお前も問題起こしたらせっかく全国行けたのに、これまでの努力が水の泡だろうが・・・・せっかく気づいた努力を無駄にすんな。俺だけではなく姉ちゃんや部活の仲間に心配かけるな・・・・」

「ごめん・・・」

「さっきから謝り過ぎだ・・・・」

どうやら俺の説得でなんとか宗介は頭が冷えたようだ。それにしても俺の知り合いはそろって俺関係なことだと巨突猛進に行動する奴が多いんだ?

俺はヒロインじゃないんだよ。どっちかというとヒロイン力は俺の知ってる女性陣を除いて宗介の方がある。





「・・・・・・」こそこそ

「ねぇ、都あれ樹じゃない」

「本当だ。なにやってんだあいつ?」

そんな時登校場所が駅より反対方向に家がある樹が挙動不審に怪しげな行動で登校する生徒をかいくぐり学校敷地の塀をつたうようにようにどこかに走って行った。





「ねぇ気になるから行こうよ」

「断る。生憎あんなアホに付き合うほど精神は余裕じゃないんだ」

「じゃあ僕は行くから・・・・」

「おい・・・・・・」

う・・・・宗介まで行くとせっかく落ち着くことができたのにまた寂しくなってしまうじゃないか・・・・

今の俺は誰でもいいから構って欲しい程精神が安定してないんだ。

頼むから行かないでくれ。俺はそう思いながら宗介の後を追った。

樹がたどり着いたのは裏門近くの用水路でそこをまたいで、学校につながる塀の前に経ち、周囲に身を隠すようにその周囲には得ている雑草に溶け込むように身を隠していた。本当何をやってんだあいつ。

もしかして捨てたエロ本探しか?





こそこそ

「おい、樹なにやってんだ」

「うおっびっくりした!!!」

「こっちがびっくりしたよ」

「って・・・・・・お前達こそ何をやってんだ。悪いけど少ししゃがめ」

「なんでなの?」

「いいから座れ。他の生徒にこの場所が気づかれるだろ?」

「ああ・・・・」

俺達は言われるがまま雑草に同化したように伏せるがその拍子に宗介に密着してしまう。宗介は初見だと女に間違える程が半分くらいの容姿で女経験がない男子がこのように密着すると同性でも興奮するかもしれないが、俺はそうは感じない。なぜならその通過儀礼は幼い日からとうに通過した儀礼なのだ。








「で、なんだよ」

「お前らこれを見ろ」

「え・・・・・・壁の間に雑誌が挟まってる」

宗介の言う通り塀の間に数冊の雑誌をビニール紐で縛ってるもので防いでおり樹はそれを動かすと塀に穴が開いていた。どうやらその雑誌で塀の穴を隠してるようだ。





「これいつから穴が開いてたんだよ」

「さぁな。俺も情報によると大分昔に穴が開いていたようだ」

「でもそれがなんなの?」

「お前ら今日は月曜日だよな?」

言われなくても分かる。そこまで精神崩壊してない。





「で校門の持ち物検査は何曜日だ」

「えっとない日もたまにあるけど大体毎週月、水、金曜日かな?」

「そうだ。うちの学校はピアスなどアクセはOKなのに無駄に持ち物検査が多いからな。もしその日にエロゲを持ってきたら困るだろ」

「心配すんな。学校にエロゲを持っていくのは俺らだけだ」

「それ僕も入るの?まぁ確かにゲームとか学業に適しないものがあると大体指導されるよね」

「その通りだからこの穴を使うんだ。この穴さえあれば学業に適さないものを持って来てもこの穴からそれを入れ堂々と校門に入り持ち物検査を通過し後からそれを回収すれば、計画通りだ。凄いだろ。最高だろ。て~~~~~~んさいだろ?」

「すごいね大発見だよ」

お前は何もやってないから天才に値しない。








「でもこれよく今まで先生にバレなかったね」

「ああ、俺も知り合いから暗黙でなんとか知ることが出来た。なんせこれはうちの七不思議に入るくらいの秘密スポットだからな。知ってるのは俺らとそれ以外のこの学校の秘密を知る者だけだ。いいかここの秘密は例えざーさん達には言うなよ?」

「うん」

「それはそうと樹、お前持ち物検査にひっかかるものを何持って来たんだ」

「あ?それはこれだ。じゃん。昨日仕入れてきた。いわくつきのエロゲだ。タイトルは、『奴隷病院』俗にいう調教ゲーだ。これお前やるだろ」

「・・・・・・それはそうとお前一回この隙間に頭入れてみろ?」

「なんでだ?」

「いいからやれ。ジュース奢ってやるから」

「お・・・・おう」

馬鹿め。言われるがまま、塀の隙間に頭入れやがって・・・・俺がこういう女の子が不幸になるエロゲが苦手なのは知ってんだろ。この変態エロゲーマドMが・・・・

俺は樹の伏せた背中に向かって思いっきり踏みつける。






「だから俺に気持ち悪いもの見せんなつったろ!!!!!」

「ありがとうございます!!!!」

樹はドMながら歓喜のお礼が聞こえたが俺はこれまでのストレスを解消するべく全体重を乗せることにした。いや~~~~~~親友をリアルに踏み台にするってことはこんなにすがすがしいと思わなかったな~~~~~







しばらく樹は塀の間に顔を突っ込んだまま気絶し俺と宗介はそれを軽くスルーし校門に入り持ち物検査をなんなく通過し教室に向かう。




教室に入ると、珍しく九頭竜がいた。昨日の件があったせいかなんか緊張する。

見た感じいつもと変わらぬ感じだったので俺はとりあえず挨拶する。





「おはよう。くずり・・・・・」

「・・・・・・・・・・」スッ

どうやら昨日の事は現実だったようで俺が話しかけようとした時あいつはこれからホームルームが始まるのを関わらず俺を静かに避け教室から出て行った。

それをそばから見ていた樹が心配そうにしていた。






「都・・・・・」

ははっ・・・・・やっぱりこうなったか・・・・・・





俺は何をすれば・・・・あいつと前みたいな関係に戻れるんだ?

その糸口が見つからない・・・・・













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