花沢さんは卑猥な事を言いますけどいい事もたまに言います

あれから数日が経ち6月が終わりに近づくころ俺と九頭竜の関係は未だに穴が開いたままだった。なんせ向こうから話しかけると無視をされたり威嚇されたりと壁を作っているからまともに取り合ってくれないし、それどころか心のうちから九頭竜とはもう関わらなくていいのではと変な感情が湧き出ているのでそれを思いついてる自分が腹立たしかった。




俺はあれ以来宗介達と一緒にいるよりも空を見上げることが多く今こうして午前の休み時間廊下の窓で届かぬ雲を差し伸べるような幻想を掴もうとしている。

は~~~~~ずっとこのままか・・・・・・・

いやだなぁ~~~~~



「・・・・・・」

「お・・・・・・か・・・・・ん?」

「・・・・・・・・・」

「おお・・・・・・わ・・・・くん?」

「・・・・・・・・・・」

「大河君!!!!!」

「うわっ!!!!」

突然の大声で我に戻る。横を見るとざーさんがムスッとした表情で睨んでもう一度大声を出す体制をしている。

一体何をしてんだこいつは?





「ちょっと大河君。最近ボーとしてるんじゃない?」

「そうか?いつもと平常運転だけど・・・・」

「いや、明らかにおかしいよ。明らかに九頭竜さんに振られたことが原因だよね?」

「・・・・・・・いつから知ってたんだ?・・・・・・・って宗介か・・・・・あいつ余計なことを・・・・」

俺は教室にいるであろう宗介に舌打ちをする。

まぁよくよく考えたら人のせいにするのは悪いよな。最近ボケーとしてた俺が悪いし、恐らく宗介も俺を心配してか気を利いてザーさんに相談したんだろう。

とりあえず開き直るか・・・・




「で、それがどうした?慰めようとしてるのか?」

「いや、そうじゃないよ。あのね。返してくれないかな?」

「なにをだ?」

「むーーーーーーー」

え?なんで顔を膨らしてるの?確かザーさんどころか女子に借りたものなんてめったにないと思うけど・・・・・

そう思うと耳元でささやいていた。






「私の〇・〇・じ・ょ♡」

「今のセリフ。女じゃなかったらマジでぶん殴ってたぞ」

「冗談だって・・・・恐ろしい事言うね・・・」

恐ろしいのは、ブラックジョークをさりげなく言うお前の思考だ。

それに仮にそれを返せることが出来んのか?悪いが俺には、回復系のスタンドは持ってないんだ。







「いやそうじゃなくてこの前借りてたエロゲだって」

「ああ~~~~『そらかな』か~~~~~忘れてたわ」

そらかなっていうのは『空の彼方の記憶』というエロゲでカラオケ帰りに借りたままだったなぁ。





「で、いつ返してくれるの。PCゲームなんてダウンロードするだけでしょ」

「すまん。九頭竜と付き合うことになったせいで・・・・返すのを忘れてた・・・・」

「そっか・・・・・じゃあ次の集会の時に返してね・・・・」

「珍しいな。お前が学校でエロゲのこと話すなんて、涼浦とかのグループに聞かれても知らねぇぞ」

「コソコソ話位ならバレないよ。私の友達にはそういう卑怯な人間はいないからね」

そういうとざーさんは体操服入れを持ったカバンを振り上げる。

そっか五限目は体育の時間か・・・・・よくよく見ると教室から男子の着替える声が聞こえるな。そこも気づかないとか、俺も末期だな・・・・






「次の授業体育か・・・」

「そっ・・・・・またバスケ・・・・・この時期体育館暑いから嫌なんだよね。プールならいいけど」

「残念だが、うちの学校水泳部はあるがプールの授業はないぞ」

「それは分かってるよ。ちょっと言いたかっただけ・・・・・」

「なぁ・・・・・・・ざーさん俺どうしたらいいのかな?」

「え?もしかして体育の授業が無くて九頭竜さんのスク水が拝めない事?それなら秋の生徒会選考で生徒会長になって夏の体育の授業をプールに変更すればいいんじゃない?」

どこの学校に生徒会長になると授業内容変えれるという大きい力があるんですか?そんな権限があったら夏休みや冬休みを一か月延長するわ。







「ちげぇよ・・・・俺九頭竜と復縁したいんだ・・・・・・だけど話しかけても話しかけても、距離を置いててまともに話を聞いてくれない・・・・まるで攻略したくても攻略できない選択肢のないギャルゲのようだ」

「そっか・・・・・つまり九頭竜さんは現状で言うと攻略不能のサブヒロインってわけか・・・・」

「じゃあヒロインは誰だ」

「私でしょ」

「よしそのゲームのデータを消そう」

「酷い」

無理やりヒロインの座を乗っ取る奴がヒロインになれるわけない。そういう奴こそサブヒロインになるのがありがちなのだ。






「おっほん、話は戻るけど用は、九頭竜さんが攻略できるルートに戻りたいわけだね。でもそれは無理だよ」

「なぜだ」

「だっていくらサブヒロイン好きになろうともゲーム元の制作会社がそのルートを作らなきゃサブヒロインのルートができないでしょ。だからいくら頑張っても不可能・・・・・・でも現実は違う。いくらバットな状況になっても、主人公の力量次第では低い確率でも、正規のルートに戻るかもしれない。これが現実とゲームの違い。だって・・・・・・現実は何が起こるか分からないでしょ?」







「ちょっと!!!ざーさんに都何やってんの?もうすぐ体育始まるよ」

「沖君?げ・・・・・もうこんな時間まだ着替えてないのに大河君先行くね・・・・」

「ああ・・・・」

宗介が体操服に着替え呼びかけるとざーさんは慌てて体育館に向かっていた。

やれやれ俺も急いで着替えていくか・・・・

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