九頭竜さんを許せないという気持ちはわたしもあります。けれど・・・・

光を失いかけた俺と九頭竜の前に現れたのは、希望の光であった。

それは、黒のライダースーツで白のヘルメットで茶髪の長髪を露出し、どこで入手したか分からない変声機を使い声を変えてもそれがうちの姉であることを認識できた。なぜなら・・・・・・




『どりゃぁ!!!!』

「ぐはっ・・・・・」

「な・・・・・なんだ・・・・こいつ。いきなり俺のなか・・・・・ぐわ・・・」

『せい!!!!』

出会いがしらわずか5秒も経たずに九頭竜の衣服を乱暴に脱がそうとしたチンピラ風情をいきなり飛び蹴りをかまし、武器を所持してるにも関わらず素手一つで無双ゲーのように相手をボコボコに出来る知り合いはここにいる九頭竜を除いては他でもなくうちの姉にしかいないからだ。






『くそ・・・・・このや・・ギャアアアアア!!!!!』ゴキン!!!

「悪ぃ!!!!近くにいたお前が悪い・・・」

いやいやいや!!!今ボコって寝そべっているチンピラの男の腕が折れてそうな感じで音が鳴ってるんだけど!!!これ絶対ワザとだろ!!!

変声機で声が変わっても、怒りの声質で分かるんだけど・・・

申し訳ないけど仮面ライダー王蛇でもそんなサディスティックなことはしないと思・・・・・・・いや、するなあいつは。




『おい大丈夫か?・・・・・後でじっくりと聞かせてもらうからな・・・・』

「あ・・・・・ああ」

「九頭竜・・・・」

九頭竜の周囲にいる取り巻きは瞬時に掃討し、残りの敵は今俺の首元にナイフを構えてる男とその傍にいる残りの取り巻きの計3人みだった。



九頭竜の様子は遠目でよく分からないが、どうやら姉ちゃんと普通に話したりしてるようなので目立った外傷、心身的の傷はあまりないように見える。





「おい、なにをしてる。サッサとやれ・・・・・」

「しかしリーダー。あいつは俺らの仲間を次々と・・・・・」

「いいからやれ。つってんだろ!!!相手が丸腰なのは変わらねぇ!!!その金属バットであのアマの頭をカチ割れや!!!!さっさとしろこのぼんくら共が!!!」ドカ!!!

「へ・・・・・・へい・・・・・・・うわぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

『ふっ・・・・・・・』ボカ・・・・・・

姉の無双を見て、リーダーを初め敵は怖気づいてしまい、部下に脅してまで、前線に出そうとするが、一人・・・・・





「ひ・・・・・ゆるし・・・」

『・・・・・駄目だ』ボカ・・・

また二人と余裕の裏拳で殴り飛ばし、敵はあっという間にリーダー格のヒョウ柄の男のみになってしまった。





「ひ・・・・・・・来るな!!!!」

男はすっかりびくびくとし下半身がかなりの振動で震え俺の首元にナイフで脅す。

いやいや、そんなことしても逆効果と思うけど・・・・・

俺を追い詰めれば追い詰める程この男の身体が心配になってくるぞ。

そう思うと姉ちゃんは倒れこんで動けなくなった取り巻きの一人が所持したナイフを取り上げ、双方がナイフを武器にし対峙していた。




『来るな?目の前に可愛い・・・・・おとう・・・・・男の子を人質にしておきながらそんなことをいえるな・・・』

「だから来るんじゃねぇ!!!!ほ・・・・・本当にさ・・・・・刺すぞ」

姉ちゃんがジリジリと近づくたびにリーダーの男はますます恐怖で顔を青ざめて全身の震えがさらに激しくなって冷や汗を掻いていた。

姉ちゃんは余裕の表情でナイフを器用に回転し遊びを見せる中男が涙目になっており、精神的にすでに結果が見えたところで勝負は決まり始めた。




『おりゃ!!!!』

「え?」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」ざく

「うおっ」

その瞬間信じられないことが起き、姉ちゃんはいきなりナイフを俺らの方に投げた。その方向は男の顔面より少し離れた場所に投げられ、後ろの機材に当て鈍い音が響いた。あまりにも恐怖で男はびびり無意識に俺を解放し、俺はすかさず地面に伏せる。なぜなら俺は姉ちゃんの考えてることが事前に分かったのでそれを予測したのだ。


男がほんの数秒油断した隙に姉ちゃんは、相手がナイフを所持してるのを関わらず瞬時に全速力で駆け出し、拳を握りしめた。



そして、叫ぶ。





「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

『絶望するのは早いぜチンピラ!!!!くらえ必殺『ブラコン・スカイ・アッパー!!!』」

ただのアッパーカットなのにここまで輝いて見えるのはなぜだろうか・・・・

男は吹っ飛びこれより姉ちゃんの反撃はまだ・・・・いや残酷をつけた方が正しいかな?



姉ちゃんのお陰で俺と九頭竜はなんとか自由になれた。九頭竜の様子はというとむりやり男達にジャージのチャックをひん剥かされたのでチャックは壊れ下着姿でブラジャーは半分はだけされ、本人いわく胸や尻をさらわれたのだがそれ以上の外傷はないと言ってくれたようだ。

今はあのジャージが使い物にならないので先ほど店で試着した私服を着ているのだ。

あいつはその屈辱の仕返しで一発ぶん殴ろうと試みたがが俺の説得でなんとか収まることが出来た。

で、肝心のチンピラ一味はとはいうと・・・・・








『はい、しっかりと笑って笑って・・・・・・・はいチーズ・・・・』パシャ

「ぐぐぐぐぐぐぐぐ」

『あれれ・・・・・全然笑ってないぞ・・・・せっかく有名になるのだから笑わないと・・・・」

ボコボコにしたチンピラ一味をまるまるひん剥かせ縛り上げスマホのカメラ機能を作動し、この人気のない工場で全裸姿を撮影し始めてた。この暴走ぷりを陰で見る俺は勿論九頭竜もドン引きだ。

なんせ顔は笑ってるけど、目は完全に笑ってないもんだから完全に鳥肌もんだ。






「オレもやり過ぎな部分はあるけどお前の姉ちゃんはさすがにその域を超えてねぇか・・・・・・・・・」

「俺も姉の奇行ぶりを久々に見たが、まさかここまでやるとは思わなかった。こんなんブラコンの域じゃねぇ・・・・ハッキリ言ってヤンデレに片足を浸かってるくらいの暴挙だ・・・・」

俺らはそう姉の見てはいけない部分をを見守りながら撮影が終わるのを待つ。






『よしこれで全員の縛りは解放したな。いいか、もう一度言っておく。今度悪さしたら、さっき撮影した画像を一斉にネットにばらまくからそこんとこよ・ろ・し・く。それじゃ記念にこのスマホは貰っとくから』

「すみませんでしたーーーーーーー!!!!!」

なにやら後悔の叫びが廃工場に響きチンピラ共はあたふたした感じで逃げ出し、最後に姉ちゃんが出てきて、俺ら以外に誰も気配をしないのを感じるとヘルメットを外す。




「お前達ちょっと付き合え!!!」

その一声で俺達三人はしばらく歩いた。その道中姉ちゃんは奪ったスマホをなにやら覗いているのが気になりそれを聞こうと思ったがなにやら重い空気が漂ったので口に出すことが出来なかった。

そして着いた先は人目がない河原であった。姉ちゃんはタバコを吹かしながら奪ったスマホをばらまき、思いっきり踏み潰し壊していった。





「さてと・・・・・」バキッ

「姉ちゃん・・・・なにを」

「決まってるんだろ。データが漏れないように、消してやったんだよ」

「どういうことだ・・・・・」

「あいつらは、ここらでたちが悪いチーマーの集団で、捕まえた未成年、大学生の女を捕まえては××し撮影してるからな。うちの大学にも被害があって警察も調査をしてるはずだ。だからそのデータが入ってるであろうスマホを見ると案の定入ってたよ。だから証拠隠滅でデータを潰したわけ」

「そんなことが・・・・・でも、相手がバックアップ機能と予備のデータを持ってたらどうすんだよ?」

「そういう時のために脅しで、撮影して置いた。このスマホには奴らの辱めのデータがある。連中の単細胞の泣きわめく表情を見る限り予備のデータはないと思うが、これで脅しにはなっただろう」

姉ちゃんは静かにライターの火を灯し壊したスマホの残骸を燃やした。






「まさか、アンタがそんなひでぇことするとは思わなかったよ」

「はっ。どうとでも言えよ。これはあくまで最終手段だ。とりあえず脅しで撮影した写真を一枚だけ残して残りのデータを消しておいた。さて残りはSDに入れて、引き出しの奥にしまっておくか。まぁ心配するな。連中の動きが完全になくなったのを見るといつか消すからな」

「警察には言わないのかよ」

「そんなことするかよ。ここで、被害届を出してみろ?問題を起こしたのがバレたら、せっかくの就職内定とモデルで築いた華やかな道のりと弟の人生がパーだ。わたしの人生はどうでもいいが、弟にはいい人生を送って欲しいからそれは止めとくよ」

確かにここで警察に言うと、被害者とはいえ問題を起こしたのだから九頭竜の退学が確定になる。

複雑な気分だけど、姉の提案に乗ることにした。









「そうか…だけどアンタ。よくオレらがあの廃工場にいるの分かったな?」

「決まってるだろ。つけてきたんだよ?お前達がデートをしてる時からな」

「最初から?」

「おう、都の様子がおかしかったからな。宗介や樹に聞いてもごまかしてる素振りを見せているから、都のバイト先の店長に聞くと案の定あのチンピラとデートと聞いたからもしやと思ってデート先からこっそりと覗いてたんだよ」

「あ・・・・・・そうか」

だからか、あのデパートでの試着室でなにやら気配を感じたのはそれか・・・・

全く気づかなかったわ・・・・・




その後姉の話は続き結局あの後もバイクでつけておりあのダーツカフェも陰で来店し、こっそりと覗いてたらしく、俺があのチンピラに店の裏に拉致られたのはうっかり油断して気づかなかったものの九頭竜がチンピラの男に連れて行かれるところで後をつけさっきの廃工場にたどり着いたわけらしい。







「それなら、もっと早く助けに来いよ」

「すまんな。あのチンピラが逃げないかと思って見張ってただけだ」

「え?オレを」

「もしお前が、都を置いて逃げたのしたら完全にコテンパンにして、助けるつもりだった・・・・・・最後まで都を守ってくれて感謝するぞ」

「大河の姉ちゃん・・・・こっちこそすまねぇ。アンタの弟を巻き込んでしまった」

姉ちゃんは珍しく頭を下げ感謝していた。普段なら俺を傷つけるやつは何人たりとも許さない質なのに・・・・・・






「・・・・・だがそれと弟を無理に連れて来たのは話は別だ。必殺『30パーセントブラコン・スカイ・アッパー!!!!』」

「がっ・・・・・・!!!このや・・・・・・・」

前言撤回、やっぱりいつもの狂った姉だ。







「大丈夫か?」

「くそ・・・・・・あの野郎。殴りやがって・・・・」

「まぁ30パーセントだから手を抜いたからいいだろ」

「そういう問題じゃねぇ!!!」

九頭竜は殴られた右頬を抑えながら、俺と共に夜の公園を歩く。

なんでもあの後九頭竜は叔父の松村さんに状況を説明ここに向かってくるらしく姉ちゃんはその付近で松村さんが迎いに来るのを待ってるらしい。なのでその間、姉の計らいで来る間にこの日最後のデートで一緒に歩いてるのだ。







「それもそうだけど。殴られた腹もどうだ?」

「あ?それは大丈夫だ。大したことねぇよ・・・・・・」

「そうか・・・・・」

それ以降俺達はなんか上手く会話を続くことが出来なかった。あんなことが起きたからしょうがないけど、そんなとき九頭竜は口を開け、空に光る星々を見上げる。






「なぁ・・・・・大河・・・・・・お前、前になんでオレがあの家で一人で住んでいるのか聞いてたよな」

「????なんだよ突然」

「それが聞きたいんなら、今教えてやるよ。オレのすべてを・・・・・・」

突然の告白で理解ができないまま、九頭竜は自分の生い立ちについて、説明する・・・・



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