おにいちゃんに乱暴な事をしないで!!!

「おい、起きろ!!!」

「ん・・・・・ここは・・・」

意識が朦朧とし鼻先になにやら薬品のような異臭を感じながら俺は今、小さな電球ががチカチカとついている廃工場の中で、手足を縛られ冷えた地面に頭をこすられて寝ている。

そしてそれよりも目の前にはなにやらガラの悪い集団がニタニタと笑みを浮かんでおり、その一人は金属バットで俺の頭をツンツンと突きながら俺の様子をうかがっていた。





あれ?なんで俺こんな状況になってんだ。確か記憶によると九頭竜とデートをして飯を食って、服を買いに行ったり・・・・・・それとダーツで遊んだ感じがするんだけど・・・・

それ以降記憶がない。






「あの・・・・・・オジサン達は・・・・・・」

「誰がオジサンだ。コラぁ!!!!そこはお兄さんだろうが!!!!!」

「うわっ!!!」

危な!!!その集団の一人の強面の禿坊主がいきなり激高し近くにあったドラム缶を蹴り吹っ飛ばしやがった・・・

ちょっと待てよ・・・・・俺もしかして選択肢間違えた?




「まぁっそんなに怒んなって。こいつは客だから余計なことをするなよ・・・・」

そんな中リーダ格であるヒョウ柄でサングラスで誰よりも高い機材の上に突っ立ている男が間に入り俺に向かって降りてきた。どうやらこの男がリーダーなんだけど・・・こいつどこかで見たぞ。





「はぁい!!!ボク。久しぶりだね」

「・・・・悪いけど俺は知り合いにこんなチャラい奴はいない。いたとしても姉ちゃんにこんなのを許すはずない」

「そんなこと言うなよ。ボクぅ。俺は覚えてるよ。あの時路地裏で九頭竜乃希亜と一緒にいたガキでしょ」

赤ちゃん言葉で舐めた口調で腹立つが・・・・・ん・路地裏にあの顔・・・・

確か一週間以上前、九頭竜の秘密が明かされたあの夜、あいつにボコられたあの時のチンピラか・・・

まさか、仕返しの為に俺をラチって来たのか・・・・・






「あの時のナンパ男か」

「せいかい~~~~~~。それが分かってるのなら答えは分かるよな」

「九頭竜の復讐か」

「またまた正解!!!さすがあの龍の彼氏だなぁ。伊達にあの女が行きつけの店を張り込みしたかいがあったわ。ほんと今日は最高の日だわ。仲間にいつものようにあの店に張りこまさせると案の定お前達が来たから仕事そっちのけで来たんだぜ感謝しろよ」

余程俺を捕まえてテンションが高めなのか、はしゃぎながらそいつははしゃぎ取り巻きはそれをニタリと笑っていた。

そしてその男は俺に恐怖を与えるようにナイフを取り出す。




「俺達はぁ、あの女にやられたから百倍にして借りを返そうと思うんだ・・・・・・・」

「は?」

「実はよ。俺らの仲間があいつを連れてくるはずだ。まぁ逆らうことはできないはずだ。人質がいるから返り討ちにはしないだろ」

「それで俺をどうするつもりだ・・・・・」

「安心しなよ。じっとあいつが俺らになぶられるのを見てるだけで助けて上げるからよ」

「出ました。リーダーお得意のNTR」

「ふざけんな!!!お前ら俺は純愛派だ」

「何言ってんすか。そう言って何人も女をぶっ壊してるのはどこの誰っすか?」

「ちげぇねえ。ちげぇね」

ハハハハハハハハハハ!!!

なんだこいつら。本気で九頭竜をぶっ壊そうと思ってんな・・・・

そうはさせるか。

俺は、渾身に息を吸い叫ぼうとする。





「だ・・・・・・・」

「はぁい。だめぇ」

だがそれはその男の蹴りにより塞がれた。くそぉ・・・・・あの野郎本気で蹴りやがったなぁ・・・・・

信じられない痛みが腹に感じてしてしまい吐きそうだ・・・・






「げほっ・・・・・げほっ・・・・」

「ねぇ大人しく。黙ってろよ・・・・・さもないと。殺すよ?」

「・・・・・・・」ゾクッ

男の一瞬に見せる殺意的かつ狂った笑みによって身体全体が凍りだした。

俺は直感したこの男なら絶対に刺しそうだ。

九頭竜も喧嘩するときは殺意的な顔をするがこの男は違う。心に感情というものが無く冷めきってるような感じだ。一体どんな環境に育ったらこんな子供が育ってしまうんだと言わんばかりの変人だ。







「リーダー、あの女連れてきたようですよ」

「そっか。なら入らせろ」

部下の一人が携帯を取り出し九頭竜が来るのを確認すると扉を開ける。

すると九頭竜が現れ、心配しそうな顔で俺に声をかける。

なんで・・・・・来たんだよ・・・・





「大河!!!!」

「九頭竜・・・すまん」

「馬鹿野郎。手間かけさせやがって・・・怪我はないか?」

「今蹴られただけで他は平気だ」

「そっか・・・・」

九頭竜は俺の無事を確認すると手持ちの荷物を思いきり投げ飛ばし憤怒の顔で前に歩む。





「てめぇら!!!!なにしやがんだ!!!!ゴラァ!!」

「おっとストップ。これ以上動くなよ。・・・・・・・でないと刺しちゃうぞ」

だがそのリーダーの男はそうはさせないと俺に向かってナイフを突き立てる。





「くっ・・・・・それがどうしたよ。もし大河を刺してみろ?重症になる前にそのナイフを蹴り上げてお前らをひねりつぶすぞ」

「やってみろよ。ただしこいつらの壁を越えたらな」

「へへへへへへへへ」

九頭竜の前には取り巻きが壁として前に出て、さらに後ろからも現れ出口を封鎖され文字通り八方ふさがりになってしまった。





「てめぇら・・・・・マジで生きて帰れると思うなよ。もし大河を死なしてみろ!!!お前らもまとめて皆殺し・・・・・」

「やめろ・・・・・」

「大河・・・・・」

絶対にそれ言わせない・・・・・・俺の推し・・・・・・いいや大切な人にそんなことはさせない。





「お前は、喧嘩をするな。頼む」

「でも、こいつらが・・・・」

「いいから頭を冷やせ。お前の顔はあいつ等みたいに狂ってる顔をしてるぞ。頼むからその道を歩まないでくれ」

「どうして・・・・・そこまでオレの事を・・・」

「俺はただ・・・・お前と楽しい学校生活を・・・・・送りたかっただけだ」

「大河・・・・・」

あれ?俺なんで泣いてるんだ。今危機的状態なのになんで悲しいんだ。

怖いなら分かるのになんでこんな感情が芽生えるんだ・・・・





パチパチパチパチパチパチパチパチ

「リーダー?」

「いいね。いいカップルだ。お互いがこんなに思ってるのはとても絵になる。俺涙もろいせいか。こっちも涙が溢れそうだ・・・・だが」






リーダーの男はそうニタニタと笑いながら九頭竜に近づき、そして俺がさきほど食らった腹部に向かって思いっきり殴りつけた。




「俺の屈辱に比べればカスみたいなもんだ・・・・」

「がっ!!!」

「九頭竜!!!!」

あまりにも強い痛みのせいか九頭竜は地面に膝をつき苦痛の悲鳴を上げていた。

そしてそのリーダーは指を鳴らし取り巻きに支持を出す。





「脱がせ」

「はい」

「おい、ボクしっかり見ててね。お前の彼女が最悪な結末を向かうことを焼き付けな・・・・」

「・・・・・・・・」




「こら、大人くしろ!!!」

「くそがっ!!!!放し・・・・・・やが・・・・・・れ・・・・」

「うひょーーーーーーーー乳デケーwwwwwww」

「てめぇ・・・・・なに触って・・・がっ・・・・・やめ・・・・・てめ・・・・ズボン脱ごうとしてんだ・・・・・・や・・・」




九頭竜の周りにチーマー共が群がり服を脱がそうとしている。

ああ・・・・・・なんでこんなことになったんだろうな・・・・

最初はこいつの事なんてどうでもよかった。ただのヤンキーで関わりたくないから背を小さくしてたのに、憧れの声優と同一人物だっただけで舞い上がって知り合いになり、いつの間にかこいつ自身の事が好きになってしまった。

畜生。松村さんになんて説明すればいいんだ。

俺はなんて情けない男なんだよ。目の前でピンチになってる女の子を助けられないヘタレな小さな人間だ。

なんで九頭竜が脱がされてるのを見てるんだ情けねぇ・・・・二次元でもいい力さえあればこいつらを押し抜け、九頭竜を助けれたのに・・・




ああ、人生終わったな・・・・・・






ドゴォン!!!!!



「なんだぁ!!!!あの音は・・・・」

『たく・・・・わたしがいないと思って随分好き勝手なことをしてるじゃねぇか。あのチンピラ女は・・・・まぁうちの大事なおと・・・・いや少年が無事ならそれでいいか』

「な・・・・・何事だ。いきなりシャッターがふっ飛んだぞ。・・・・・ありえねぇ・・・・」

「しかも誰か出て来たぞ」

「何者だこのヘルメット野郎は・・・・」

『わたしか。ただの正義の味方だ・・・・』





うちの姉ちゃんを敵に回したこいつらの寿命が・・・・・


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