偽りの恋人
市葉に無理に手を引っ張られ、古傷を耐えながらもしかたなく外に連れてくことになった。
たどり着いた場所はこれも偶然か一昨昨日、神代姉妹と一緒に宗助の件について話したあの公園だった。
「はぁ・・・・・いい風ですね~~~~~とても気持ちいいです」
「それは良かったな」
市葉は思いっきり身体を広げ思いっきり息を吐いていた。やれやれ元気なことで・・・
「相変わらずみやこは無愛想ですね。そこはもっとロマンティックに言えませんか?」
「なにを言ってんだお前?」
確かに空は星々が奇麗で夏の大三角形を現して、素敵だが、そんなの親戚に言われてもなにもときめかねぇよ。
「つれないですね~~~それよりも何か飲みます?あたしのおごりですよ」
「珍しいなお前が奢るなんて、とりあえず、ファ〇タグレープで」
「はいはい、じゃああたしは大好きなコーヒーにしますかね」
「馬鹿じゃねぇの?お前、コーヒーなんか、注文したらますます寝れねぇだろ」
「なんですか?いきなり」
一声をかけ、なんとかあいつがコーヒーのボタンを押すのを中断させた。
というかそもそもこのクソ熱い中になんでこの自販機は普通にあついコーヒーが売ってるんだよ?普通にこれ市葉以外は買わないだろうに。
「そんなの迷信ですよ。そんなガセ信じるみやこは可愛いですね」
馬鹿野郎カフェインなめんじゃねぇ!!!!
「とにかくやめろ下手したら朝までお前が寝るのを付き合うことになる。明日帰宅するのに余計な力を使わないでくれ」
「しょうがないですね。言う通りしますよ」
俺の言葉が通じたか渋々押すのをやめ代わりに俺が選んだものにし、ベンチに座る。
「はぁ、美味しいです。これならちょっとは寝れそうです」
「だろ。俺の言葉に間違いないだろう。これでサッサと寝てくれ。俺マジで眠いよ」
「そうですね。無理に付き合わせてごめんなさい」
市葉が謝っているのが聞こえるが、マジで睡魔が迫って・・・・・・意識が朦朧とする。ここは我慢すべく顔を強く叩くことにした。
パン!!!
「よし、これでしばらく大丈夫だ」
「みやこ・・・・やっぱり昔と変わりませんね」
「あ?なにがだよ」
「困ってる人が居れば、自分の事よりも他人の事を優先する。そういうところです」
「そうか?俺は自覚はしてないけどな。もしかしたらこの性分は親父が警察官の影響かな?」
「いえいえ、伯父さんの仕事柄ではなく本当に優しいですよ。そんな人柄だから色んな人が寄って来るんですね」
思えばこの性格のせいか、俺は乃希亜だけではなく色んな人に出会ったかもしれない。
そうでなければ俺は、その人と出会わない未来が待ってたかもな。
「なんか。その言い方まるで俺がエロゲの主人公になったような言い方だな」
「まったく魁里の言う通り相も変わらず破廉恥なゲームをやってるようですね」
市葉はそう言いながら顔を膨らして怒ってるように見えた。もしかして市葉ってこの手のゲームは苦手だったかな?そういや魁里がまともにテレビゲームをしたこと見たことないな。
「あたしのせいですよね・・・・・・みやこがその手のゲームにハマったのは・・・・」
「市葉?」
「あたしがみやこと離れなければこういうことにはならなかったんですね。納得がいきました」
なぜか市葉は顔を俯かせてなにか後悔をしたような雰囲気を漂わせ、なにやらブツブツと自分に言い聞かせようとしていた。
「みやこ・・・・あたしと寄りを戻しませんか?」
「は?なにを言ってんだお前?冗談だろ?」
「冗談?なにを言ってるんですか。あたし達・・・・・・・まだ別れてないですよね?」
「あ・・・・・・・」
その一言により俺は今まで封印してたことがフラッシュバックして思い出してしまった。なんでこんなタイミングで言うんだよ。こっちは思い出したくないのに・・・
とてつもなく真面目な顔で俺はなんて答えればいいか分からなかった。
「もう、そのことに触れるのは止めろよ。あの時決別しただろ」
「そうですね。確かに決着はしました。けど、なんでですかね。なんだかスッキリしないんですよ。それはみやこだって同感ですよね。あはははははは」
まるで作り笑いのように、感情が無いような笑い声が響く。今市葉がどんな感情で笑ってるかまるで分からなかった。
今の俺はこの場に逃げたいと思いふと立ち上がった。
「もういいだろ。そんなことは、俺の今の彼女は九頭竜乃希亜だけなんだよ。いい年こいてそんな幻想話に付き合わないで、現実を見ろよ。じゃあな。俺は寝る」
「みやこ・・・・」
市葉はなにも反論し追いかけることはなく、俺はひたすらこの場所を去った。
俺はなんてひどい事を口にしたんだ。最低なクソ野郎だ。
けど、許してくれ。あの時の事を振り返るのが嫌でただ逃げたかっただけなんだ。
お前なら分かるだろ?市葉・・・・・・・・
「嘘だろ・・・・・・・・ミヤのやつ、なにを言ってんだよ・・・・・・・」
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