おにいちゃんに会えなくて寂しいです

あれから寧々はほぼ缶詰状態で部屋にこもり曲作りを専念し、今回も泊まることにし、なんとか次の日を迎える前に試曲を何曲か完成することはでき、無事就寝することができた。




それでその次の日である七月三十一日、最後の七月、この日の仕事はレコード会社の打ち合わせのみなので、サクッとレコード会社に乗り込み打ち合わせをすることにする。




今回の新曲は今までの彼女のイメージを変えた夏曲で、どれも情熱が混じった暑い曲なのだが、聞いててどれもエロゲソングみたいな感じで、レコード会社のお偉いさんとこの曲を隣で聞くのだが、皆真面目で聞いてる中俺だけは冷や汗を流していた。

本当にこれでいいのかと不安しかなかったが、寧々は結構運がいいと自負していたせいなのか、意外にも今回の楽曲は受けが良く、特にいい印象を受けた一曲が採用され細かい編曲を終えた後は近々レコーディングする予定のようだ。

勿論寧々は当たり前のような顔をしているが、俺はどうも昨日から喜びを感じることが出来なかった。




その理由があの日の夕飯前にかかっていた見知らぬ男からの電話だ。

彼女ってのは、どう考えても寧々なのだが、あれ・・・・・完全にストーカーの類じゃないのか・・・・

いやそもそもなんで俺の電話番号を知ってるか分からない。

心当たりがあるのは樹なのだが、あいつは馬鹿だがこんな卑劣な事はしないはずだ。



それに寧々にこのことを伝えたのだが、いたずらの類じゃないと一蹴されており、新曲の打ち合わせが終えた後は普通に家に帰ってもいいと言われたので、念のために、気をつけろとくぎを刺し二日ぶりに家に帰ったのだが家に帰っても、溜まった宿題が手が付かづこの日はネット掲示板で公方寧々のネットの評価について調べることにした。



公方寧々は熱狂的なファンがいる反面中にはアンチがいるらしく過去には殺害予告てきなものも出されていてるくらいの過激派がいるという噂だ。




まぁ今回の件も涼浦の言ってたつけてた男と先ほどのイタ電が同じタイミングで来たという偶然もあるかも仕入れないが、それでも俺はこれについては松村さんに報告はした。

マネージャーのバイトも半分を迫ったのだが何事も起こらないことを願いたいな・・・・



そして明日は、八月に入り夏はより熱い休日を迎えようとする。










~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「マネージャ・・・・・・マネージャー・・・・」

「・・・・・」

「マネージャ!!!」

「うぉ!!!!」

突然の明るい声で俺は椅子から転げ落ちそうになった・・・・

ここは、どこかの休憩室か・・・・どうやら俺は少しの間うたた寝をしてたようだ。

え~~~~~と俺今何してたっけ・・・・

そうだ・・・今日はマネージャ生活5日目で、今とあるラジオ局で同じ事務所の寧々先輩である『棚橋ゆりか』のラジオ番組に寧々がゲスト出演しもうすぐ収録するんだったな。

すっかり忘れてたわ。






「まったく、こんな所で寝てるなんていい度胸ね。よっぽど絶望というゴールを向かいたいようね」

「そろそろアクセルネタ飽きたな・・・・」

「頭で思ったことを口に出す人間は、基本空気読めないらしいわよ」

収録前に酢昆布食ってる人間にとやかく言われたくないな。まちがいなく現場酸っぱい匂いがしてコメンテーターに迷惑かける未来が見えるな。





「もうすぐ収録だから口臭スプレーしとけ」

「分かってるわよ・・・・・」

いらない口を動かしながら現場に向かいラジオの収録は始まった。



寧々は相変わらずの猫かぶりでコミュ障と思えないトーク力でベテランのゆりかさんと楽しくトークをしている。



俺はその光景をガラス越しから見守るしかなかった。




「おつかれさまでしたーーーーーー」



そして収録も無事に終わり今日の日程はほぼ終わりのようだ。

俺は今回のラジオ番組でスタッフから渡された寧々のファンから届いたプレゼントを確認するのだが、寧々は人の心が分からないか、すべて捨てなさいと言われたがさすがにそれはもったいないので、一通り読んでよかった手紙の何通かを俺が持つことにし後は事務所に送るように手配することにした。

現在寧々は早く帰りたいとすでにタクシーで休んでいるので早く戻らないとな・・・




「あ・・・・ちょっと待って」

「はい?」

部屋に出ようとした時、廊下にて先ほど寧々と共演してたゆりかさんと出会ってしまった。

まさかこんな所でゆりかさんに鉢合わせになるとは思わなかったな。

棚橋ゆりかと言えば、深夜アニメや朝の子供向けアニメは勿論別の名義だが一応エロゲにも出演したことがある実力派の声優で出演した作品は乃希亜には劣るがそれほどには拝見してるくらい興味がある。

声もそうだが年齢は40手前の独身なのだがそうは思えないくらい若作りしているように見え大人の色気があるようだ。




「君、寧々ちゃんのマネージャよね」

「はい・・・・臨時ですけど・・・・」

「これから仕事はあるかな?」

「いいえないですけどそれが・・・・・」

「実は折り入って頼みたいことがあるけどいいかな?」

寧々を待たすのはアレだけどとりあえず話を聞くことにした。






その内容によると寧々のとこの事務所では定期的に同じ事務所の声優同士の親交の為に行きつけの飲食店にて交流会があるらしく、今日はその日のようで、今まで寧々にその誘いをしようとしたら軽く断るらしく、今まで通算で来た回数は新人声優の時の二回しかないようで、未だに事務所の仲間と仲良くなった試しはないゆらしく、マネージャーが変わったので改めてお願いするように頼まれたのだ。




そうは言っても、前のマネージャでも無理な事を俺が出来る訳ないだろと思ったのだが、松村さんにも寧々にはなるべく他の人達と交流を深めて欲しいと言われたので、とりあえずやるだけの事をするか・・・・







「寧々すまん・・・・」

「遅いなにをやってたのかしら・・・・ふぁ・・・・・しばらく寝たじゃない・・」

「別にもう今日のスケジュールは終わったんだからいいだろ・・・」

「まぁいいわ・・・それじゃわたしは寝るから、着いたら起こして・・・」

「おう・・・」

寧々はあくびをすると俺の肩にもたれて寝ていて改めて寝顔を見る・・・・

顔は可愛いのだが性格に問題がありすぎるな・・・・・なんで俺が知り合った声優は揃いも揃って問題があるのばっかりなんだよ。




まぁそれでも寝てるのは好機なんだけどとりあえず寝ている間に運転手さんに自宅ではなく交流会の場所に変更することにした。






そしてその数分後その場所に着き、俺は恐る恐る寧々を起こす。




「寧々・・・・ついたぞ・・・」

「そぉ・・・・・さてとお疲れ・・・・・・てここどこよ!!!」

さすが感がいいな。寝ぼけて僅か数秒で覚醒しやがった。





「これから事務所恒例の交流会だ」

「はぁ?ふざけているの?」

「ふざけてない・・・・もしかして要らないことをしたか?」

「当たり前よ。だれがそんな事をしていいと言ったかしら?」

寝起きであってか機嫌の悪さはすさましかった。




「俺も最初は断ったのだが、ゆりかさんに頼まれて仕方なく」

「そんなのただ断ればいいじゃない。マネージャ失格ね」

「でも予定ないだろ?」

「ぐ・・・・・」

図星をつかれていたか思わず声を漏らしていた。





「でも疲れているのよ」

「そう言って休まず筋トレ、発声練習するんだろ?生憎あんたの行動は、事務所から聞いたからすべてお見通しだ」

「ストーカーで訴えるわよ」

「先ほどゲーセンで取ってきた酢昆布のバリューセットで頼む」

「よし、行きましょう!!!!」

切り替え早!!!!やっぱりチョロすぎるな。

タクシーに向かう前に近くのスーパーで買ってよかった。





そして俺は寧々を連れてその事務所の行きつけであるとある焼肉チェーン店に向かい団体席に向かうことにし、お座敷に連れて行かれた。

で、なんで俺が一緒に同行してるのかというと酢昆布と俺そのものが護衛をしてくれるのなら別にいいと言ってくれた。

まぁこれからやることないから別にいいけど・・・・

酢昆布のバリューセットを持って嬉しさを漏らしてるのが腹立つが、松村さんに免じて我慢するか。






「はいこちらになります・・・・」

「し・・・・・失礼します・・・・・」

「あら、いらっしゃい・・・・やっぱり来てくれたんだね。やっぱ君はできる子と思ったよ」

その座席に到着するとゆりかさんを初め、その事務所の若手声優がすでに何人か揃っていた。

寧々は周囲のリア充の雰囲気で嫌そうにしてたがとりあえず空いてる席に座らすことにした。






「公方寧々ですよろしく・・・・」

さすがにオフだから自己紹介も素気なくやる気がなさそうだ・・・・こりゃボッチになるわな。




「よろしく~~~~~~」パチパチパチパチ

まるでテンションが体育会系だな・・・・・気持ちがわからんでもないな・・・・・・・・ん?

なんかお座敷の隅に見たことがある金髪の女がいるんだけど・・・・・まさか・・





「・・・・・・・・・・よぉ」

「げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

なんで乃希亜がここにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ







「実は今回珍しく、辰巳ノアさんが参加してくれました。ノアさんなにか一言を・・・」

「お・・・・おう初めて交流会に参加する。辰巳ノアってもんだ。演じてる時とは大分印象が違うが・・・・みんなと仲良くしてると思ってる。よろしく頼む。それと・・・・・・洗いざらい吐いてもらうからな」ギロリ






これ・・・・・・間違いなく俺に言ったセリフだよな。









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