外伝 涼浦銀華のゼロからのスタート1
『クスクス・・・・・・おいブタの妹、お前もあいつと同じだらしねぇな』
『ホント、ホント、マジで無様・・・・やっぱ兄妹よね・・・・・』
『おめぇ冷てぇな!!!この前までこいつと仲良かったじゃん』
『ちょっ止めてよ・・・・あたしは被害者だよ。声をかけて来ただけで親友ズラしてるこいつが悪いよ・・・・正直こんなのと、傍いるだけで虫唾が走るのよ・・・その顔、やっぱ兄妹だわ・・・醜い』
止めて・・・・・・・・止めてよ・・・・・・あたしは関係ない・・・・・・関係ない・・・・・・誰も迷惑なんてかけてない・・・・なんでみんなは揃いも揃ってあたしの事を否定するの・・・・前までは良かったのに・・・・なんで歯車はこうも狂ったの・・・・・
ああ・・・・そうか・・・・・・これも全てあいつが悪いんだ・・・・・・
「はっ・・・・・・・夢か・・・・・・・」
少女は悪夢から逃れようとふと目を覚め周囲を見る。気づいたころには机の上に伏しって寝てる自分がいた。時期は真冬なので、厚着を着て寝てもその寒さは痛感する。彼女は運動不足の身体をくねらせ、ストレッチをする。そう・・・・明日が彼女の運命の日なんだそう決心しながら、最後の荷造りをする。
彼女の名は涼浦銀華、高校受験合格祈願に向けて頑張りを見せる受験生だ。
彼女の住まいは、東北のとある街に住んでおり、そこは田舎でも都会でもないただの中途半端な街に住んでおり、通勤や付近にも充分な娯楽施設があるのでそこの住民はなんの不便もなく住んでいるが、彼女はそこでの生活は色んな意味で嫌になり、ここより派手な都会の街に憧れを持っていた。
「ギンカーーーーーーーそろそろ、時間よ準備して」
「分かってるーーーー」
部屋の外から聞こえる母親の声で完全に目を覚めて私服に着替え朝食を食べる為に一階に降りる。
ギンカはこれからこの家に出て、東京までバスを使い、夕方に下宿先の親戚の家まで使いそこで最後の仕上げとして復習をし、来るべく明日の受験する高校の『上谷ヶ丘高校』の受験に受けるつもりだ。その高校の志望動機は対したことなく、ただその親戚が通った母校がそこのようだが、それよりも自分を知らないとこならどこでも良かったのだ。
朝食を終え顔を洗ったギンカは、最後に中学の制服をカバンにしまい、部屋に出て、一階の玄関に降りようとするが、その途中彼女にとっては、その耳障りの音を耳にし、軽く苛立ちを見せる。
その音が駄々洩れているのは、3つ上の自分の兄貴の部屋のようで、その部屋には母が作ったとされる朝食のおにぎりと添え書きが置かれていた。
ギンカの兄は現在引きこもり中で、今も部屋の奥で、駄々洩れのゲームの女の子の喘ぎ声と、その兄貴のぶざまな鼻息が聞こえてくる。
『ああん・・・・・・ダメですよぉ。おにいちゃん・・・・本当の兄妹なのにこんな・・・・』
「はぁ・・・・・・・はぁ・・・さだかちゃん・・・はぁはぁ・・・」
その部屋をチラッと除くと薄暗くて、部屋中に染み付くほこりぽい空気と鼻につくほどの異臭の中に、PCと睨み続ける兄の後ろ姿に聞こえないように言葉を漏らした。
「ちっ、本当に嫌い・・・・・」
その後彼女は両親にいってきますと小声で言い、扉を開け外の日差しを浴びると目を凝らした。
「(眩しい・・・・・・そういや最近受験以外、外に出たことないからこの日差しまだ慣れないな・・・・)」
ギンカはそう呟き冬の寒さを受けながら、バス前に向かって運動不足の身体を慣らそうと走る。
かくゆえ彼女涼浦銀華もあの兄と同じく引きこもりだった。だが、その根暗の生活もここまで彼女はゼロからのスタートの為に受験希望の高校は地元の同級生が選ばないとされる県外を選んでいたのだ。
なぜなら地元の同級生と高校生活で一緒になるのを嫌がっていた。彼女にとってこの姿が人生にとっての汚点に近いのだ。
話を遡ると、幼少の涼浦銀華は大のお兄ちゃん子で、事あるごとに自分の兄貴にべタベタして明るく活発な子だった。
『お兄ちゃんーーーーいつものゲーセンにいこーーーよ』
『分かったってそんなに引っ張るなよーーーー』
兄の容姿は肥満体系で、なにより根暗で友達がいないので同級生からはデブやオタクと小バカにされても、それでも兄について行こうとしていた。
ゲーセンには主に格ゲやレースゲーとあらゆるジャンルが好きで、ギンカがクレーンゲームで欲しいものがあったらその兄は嫌な顔をせずに優しくそれを取ってくれたのだ。
さらには、兄は、ゲーセンではちょっとした勇者で、彼がゲーセンに来ると、常連からにはヒーロー扱いされて、挑戦者が来るたびに返り討ちにしたのだ。ギンカはそんな兄の背中を見て育ったのだ。ゲーセンの行き過ぎで兄弟揃って金欠な時も、積極的に両親のお手伝いをするほどの真面目でその働きでお小遣いをもらうごとに頻繫にゲーセンに行っていた。それくらい兄とゲームが好きだった。その人生がいつまでも続くと願っていた。
ギンカは中学に上がっても以前変わらずお兄ちゃん子で、昔と比べてゲーセンに行く機会が少なくてもそれでも兄を慕っていた。そんな中ある変化を見せる。
それは、とある中二の秋放課後彼女は、中学入って一番の親友の女の子と帰宅していた。その子は、ギャルそうな見た目でガラが悪くDQNの彼氏持ちで教師に反感を飼うほどの問題児だが、仲間の女子に対してはとても優しい仲間思いの姉後肌だった。
その帰り際、家に帰る時必ず通るであろうゲーセン前で、自分の兄が、半裸の姿でヤンキー達にカツアゲにあっている姿だった。
「おい、てめぇ・・・・有り金全部寄越せよゴルァ・・・」
「す・・・・・すみません・・・これで・・・許して」
「うわぁこいつ、漏らしてるぜwwwww気持ち悪・・」
「うわぁ・・・・なにあれキモ・・・・・あんな人間にはなりたくないわwwwwあのデブうけるんだけど・・・・ね・・・・ギンカ?」
「うん・・・・・・・」
その後、近くの警察官から連絡がありヤンキー達は一斉逮捕されて、事態は終息に終わった。
なぜこのような事件が起きたのはというとギンカの兄は放課後、バイト前にいつものゲーセンにより、格ゲで対戦相手を完膚なきまで倒したのだが、運悪く相手はそのヤンキーグループだった為その腹いせとして、兄がゲーセンを出たのを見計らってカツアゲをしたのだ。
兄の受けた傷は数か所の打撲で終わったが心は予想以上に深刻で、外を出るのが怖くなり、高校を中退し、引きこもりになったのだ。
無論それで終わるわけもなく、その被害は何の関係もないギンカにも飛び火が来たのだ。
ある日ギンカが学校に向かうと、彼女の机には油性マジックで書かれた落書きとカッターで切り刻まれた教科書が散乱し、それを不敵に笑う信じたはずの親友の姿だった。
「おはよ・・・クズ・・・・早速だけどぉ、アンタの席はありませーーーーーーん!!!」
その親友はどうやら、どこで入手したか、あのカツアゲされた哀れな男の身内が一番信用してた親友だったことを知り、幻滅し、彼女にいじめようとしたのだ。
「ど・・・・・・どうして・・・・そんなことを」
「決まってでしょ・・・・アンタみたいなキモ豚といるとこっちの株が下がるのよ・・・」
そう言いながら理不尽にもその机を蹴り上げギンカの教科書は散乱した。
あまりにも唐突な事態でギンカは困惑し涙が込み上げていた。ただでさえ大好きな兄貴が引きこもりになったのにその追い打ちは耐えられなかった。
その親友は、人一倍プライドが高く、友人にこんな汚点を生ませて自分の株を落とすのを恐れていてなにより、ギンカが許せなく男友達に頼んでいじめに参加させようとした。
無論ギンカはその事をなんども教師に相談をしても相手にされずず、他の友人にも見放され、ついには、ギンカも兄と同じ引きこもりになってしまったのだ。
以来彼女はその日を境に中学に行っていない、無論両親に頼み近くの中学に転校するが、その噂は転校先にも知れ渡り、転校先にも居づらくなり再度家に引きこもりになる。
ギンカは家にこもる中、いつしか兄への憧れから、憎しみに変わっていったのだ。
あいつのせいで自分の人生がめちゃくちゃだ。あいつさえいなければ、あたしはこんな生活を送ることはなかった。そう心の中にぶつぶつと呟いていた。
その引きこもりが続く中、現在外を出て受験を受けれるようになったのは転校先の担任の先生のお陰だった。先生は学校に行けない彼女にPC越しで授業を受けたり相談を受けることで自然と心の闇を緩和されていた。そして、こうして高校受験で自分の事を知られてない県外の学校に進学するのを進めてくれたのもその先生のお陰だった。
こうして涼浦銀華のゼロからのスタートはこうして始まった。
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