おにいちゃんがいますからボッチではありません

「おーーーーーーい。大河君ちょっといいかい?」

「ん?松村さん?」

九頭竜に追い出された俺は、あいつの事を考えながら家に帰ろうとしたところ、後ろから背後から白のレクサスに呼ばれ振り向くと、そこには先ほど九頭竜と打ち合わせをしてた声優会社の社長であり九頭竜の叔父の松村さんが窓を開けて近づいていた。

その紳士的な身なりと高級車はまさに社長としての貫禄が肌身で感じていた。




「あの・・・・九頭竜と仕事の打ち合わせをしてたんじゃ・・・」

「いや、今回はあくまで様子を見に来ただけだよ。なんせ熱で休んだって聞いたのは今日の昼頃で、担任に連絡があったからね・・・・本当はすぐにお見舞いに行きたかったけど仕事で忙しくてね・・・・・・・ねぇ良かったら家まで送りましょうか」

「は・・・・・・・・はぁ」

本当は一人になって家まであいつの事を考えながら帰りたかったけどせっかくの九頭竜の身内の頼みだから、俺は疑いなく隣の座席に座わり乗せてもらった。








『~~~~~~~~~~~~』

車に乗った俺は家まで向かうのだが、高級車であってか音は静かで独特な匂いがして全く味わったことがない経験をするがただ一つ違和感があるのが、今中で聞いている音楽が今やってるアニメのオープニングソングが流れており、それ以外は完璧な感じがしていた。





「あの、これは今やってる日常アニメの『初恋シンドローム』じゃ・・・」

「ああ、よく知ってるね。実はこれを唄ってるのが主人公の望月きらり役の公方寧々(くぼうねね)君でうちのプロダクションを代表する若手だよ」

ああ、その声優は確か九頭竜と同じく現役女子高生声優で声だけではなく、アイドルグループのセンターとして活躍されて顔も声も綺麗だって注目されてたな。




「あれ?代表ってことは九頭竜は?」

「乃希亜ちゃんも一応人気なんだけどね。ただ、彼女の場合顔は非公開でおまけにエロゲ声優の専門をやってるからマニアックな方面には人気なんだ」

た・・・・確かに、あっちは普通に顔を公開しグラビアどころか〇ステに出る程の人気に対して九頭竜は未だエロゲ界での有名人同じ土俵に立ってのに差がついたような・・・・




「なんで九頭竜は顔を公開しないんだ。あいつだって顔はいい方だろう・・・・・・あっもしかして暴力沙汰があるから顔を非公開にしたんじゃ・・・・」

「それもあるけどあの子小さい頃からいい照れ屋で昔から写真に写った自分の顔を人には見せるのを相当嫌がるんだ」

「ああ・・・・・」

照れ屋か・・・・・どうりでファンの俺を見るとそれ以上にテンパってたな。

まぁそこが可愛いんだけど・・・・





「あの・・・・・松村さんいいですか?」

「ん?なんだね」

「九頭竜ってどうして声優になったんですか?」

「・・・・・・・・・・・」

俺が前から気になったことを聞くと無言になりそれと同時に赤信号になったので止まりだし、余計に緊張感が増していた。





「見たところあいつにはアニメとかゲームが好きな雰囲気がなくそれに憧れたという動機が見られません・・・・・それにあいつの家、あいつしかいないんだけど家族はいないんですか」

「・・・・・・・・ふぅ」

松村さんは無言を貫きだし青信号になると車を発進させその数十メートル程走った後真実を語った。




「君は、乃希亜ちゃんからどれだけ聞かされているのかな?」

「え?」

突然の問いで俺はどう答えていいのか分からなかった。




「・・・・・どうやらあまり詳しくは教えて貰ったことは無いんだね・・・・・悪いけどこれは彼女のプライバシーの事だからあまり教えてあげないんだ・・・・」

「それって俺を信用してないんですか?」

「信用するしないの問題じゃないんだよ。ようは本人からどれだけ聞いたかの問題なんだ。君の事は彼女にとって唯一信頼できる縁だけどそれを教えるのとは別なんだ・・・・」

「唯一の?」

「ああ・・・・すまない。喋り過ぎたね。ではこれだけは教えるとするか・・・・・」

松村さんは独り言をつぶやくように語りだした。






「あの子ね・・・・とある理由で今は両親がいないんだ。それ以降私は彼女の保護者として育てているが、生憎私の事をなついてくれないんだ。それどころか中学時代は意味のない喧嘩で街の不良と喧嘩をし毎日ボロボロになって帰ってくるんだ。

彼女には、お互いを理解してくれる者がいなかったんだよ」

「え?」

「それは声優事務所に所属しても高校に進学にしても一緒、彼女にはよくない噂が流れているからね・・・・その影響で話しかける子は少ないんだけど、中には積極的に仲良くする子もいたのだけど、彼女は自分から壁を作り自らも避けようとしてるんだ」

そういえばざーさんが九頭竜を何度も声をかけても、断れて困ったと言ってたな。

うちの学校は九頭竜程でもないが少々ガラがわるそうなのもいたがそいつらで九頭竜の恐怖で避けるのを聞いてたよう・・・・いやそもそも九頭竜につるむような友達って今までいたか?俺が見た経験ではずっと一人だったはずだ。


ずっと一人で悩み、相談できる相手がいなく、それが原因で喧嘩をし孤立しまた悩むの繰り返し・・・・・・それが今までのあいつなんだ。




「でも君がいたから少しは変れたと思えるんだ。だって君と関わってからずっと私に愚痴のように言ってたんだ」

「どういう風に・・・・」

「なんでも『この前オレの喧嘩に勝手に割って入ってくる変な奴がいてそれがファンなんだよ。そんな可笑しな奴がいるんだよ』と久しぶりにほくそ笑んでいたよ」

「そんな・・・・・あいつが・・・」

なんだよ。俺の事をチクるのかを自分の敵として監視してると思ったらそんな秘密があったのかよ・・・・あの不良が・・・・




「君、本当は彼氏じゃないんだろ」

「え?」

「見たら分かるよ。さっきのやりとりどう見ても彼氏彼女のやりとりじゃない。どうみても友人のそれだ。なぜカップルの振りをしたか問わないけど・・・・・・姪の事を頼みますよ」

「・・・・・・・・」





その言葉を聞いてどれだけ時間が経ったか・・・・それ以降俺はあの言葉が脳裏に浮かんだままマンション前に送られて家に帰ってもずっと上の空で姉ちゃんの言葉を聞かなく、今日は珍しくエロゲをせずに早寝をした。




九頭竜の事を頼むか・・・・・・

ああ・・・・・任してくれ・・

俺はあいつの一番のファンで偽の彼氏だがそれ以上にあいつの友達だ。

・・・・・・なにがあってもあいつの事を信じてやる。

そうギャルゲである分岐を決定したが如く俺は天井を見据え決心した。




エロゲ思想だが・・・・・・・あいつを攻略するぞ・・・・・

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