おにいちゃんはとても心配してます

九頭竜と別れて三日後の木曜日のとある午後の休み時間俺は、一人で机に伏して呟いていた・・・・・・

「う・・・・・・・・・九頭竜・・・・」

「おい、みゃここれで何回目だよ」

「ああ!!!んだよ樹!!!人が一人でたそがれているのに邪魔するなよ」

「邪魔ってなんだよ。ただ机に伏して自分の彼女の名前を呼んでるだけじゃねぇかよ。羨ましい」

「なんだよ。妬いてるのか。でも渡さねぇぞ。お前はせいぜいドSヒロインに踏まれる夢でも見てろ」

「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ」

樹の言い方に腹が立つが、宗介がフォローに入ってくれたのでなんとか落ち着くことが出来た。






「それにしてもこの前まではあいつの事を軽く軽蔑してたのに・・・・随分な変わりようだな・・・・・」

「ホントホント、九頭竜さんのどこが好きなの」

「全部だ・・・あの鋭い眼に・・・あのくせ毛の目立つ金髪に周りから一線離してるが実は寂しがり屋で照れてるところがいいんだよ」

「おい、宗介、後半に九頭竜の要素がどこにあるんだ?まったく皆無だぞ」ひそひそ

「しっ聞こえるよ。確かに九頭竜さんが照れたりとかは想像できないけど、きっと都しか見せないんだよ」ひそひそ

「そうか?俺には美化してるとしか思えないけどな」ひそひそ

二人共その話丸聞こえなんだけど・・・・




「おい、アンタらなんの話をしてんの?」

「涼浦さん」

「よっこしょっと」

俺らの話をどこで聞いていたか今度は涼浦が入ってきてなんと、隣の九頭竜の席を音を立てて座り俺を誘ってるかのようにスカートの中身が見えるくらいのきわどさの足を組んでいた。






「よっこいしょってオッサンかお前」

「うっさい木野原。うちは大河に話があんだから入ってくんなし」

「はいはい」

相変わらずのブサ面には辛辣で、そのまま椅子を動かしさらに俺の元に近づいてくる。やれやれ姉ちゃんの件は解決したのになんでこいつは俺に関わってくるんだ・・・・






「なぁ大河、咲那から聞いたんだけど今度の休み暇だろ?その日だけでもいいからうちの彼氏になってくんない」

「は?」

「実はさ今度うちらのグループでまた知り合いの大学生グループと遊びに行くんだけどその中のタイプじゃない男になんか目を付けられちゃって正直ウザイのよ。だからアンタが彼氏代わりになっておっ払ってくんないかな?」

「あの・・・・・そのグループって、ざーさん達も入るの?」

「ん~~~ん。咲那と優子達はなんか行かないよ。だって誘ってもこういうチャラそうな年上とか苦手そうだから断ったから、残りのメンバーで楽しんでるだけ。なに、沖もしかしてあのメンバーと行きたかったわけ」

「いやそういう意味じゃないよ。だって大学生ってなかには変なことをする人がいるから心配なだけだよ」

「ブーーーーそれってうちらの事が心配しないって訳。それショックーーーなんですけど」

当たり前だ。お前のようなHお断りのただ単に遊ぶだけのビッチは一度痛い目にあってこい。そしてエロ漫画みたいに永遠に堕ちるか。悟りを開いて真人間になって生きてろ。

その悪乗りのケラケラ笑いが無性に腹立ってきたぞ・・・・





「なぁ、頼むよ大河、アンタ正直あんな九頭竜と付き合うよりうちらとつるんでた方がいいよ。だってさあんな問題児いるとアンタまでとばっちり受けて痛い目にあうよ」

「なんでお前は俺に構うんだよ。姉ちゃんの弟ってだけじゃないだろ?」

「そ・・・・・それは、まぁ、そんなのどうでもいいじゃん。ああいう喧嘩しか能がない人間とアンタとは釣り合わないってことを言ってんだよ」

「おい、お前に九頭竜のなにが分かるんだよ。さっきからあいつの事を馬鹿にして、そんなに俺を怒らしたいのか」

「え?なになに。なんで怒ってるの冗談なのになにムキになってんの。それうけるわww」

正直あいつの態度を見てるとなんか殴りたくなる。あいつは普段からカーストが低い人間を見下したりと日々我慢したが、もう許せんここはガツンといかないと




「都?」

「お・・・・・・」

すまん宗介。止めるな俺はたぶん今日、問題を起こすかもしれない・・・

だって俺はあいつの事が本当に・・・・




「おい、お前、なにオレの席に座ってるんだよ」

「は?」

俺が頭に血が上り周りが見えなかったその時聞きなれた声で目が覚める。そこには自分の席を軽々しく座っている涼浦に敵視するが如くそいつの肩に触れる九頭竜の姿であった。

九頭竜はこの前見た熱っぽさはなくすでに快調な姿を見せていた。





「九頭竜・・・・」

「さっきから聞いてみれば、お前好き放題嫌がって、舐めた口を利くじゃねぇか・・・・」

「は?それがなに?ただ事実を言っただけなんですけど」

「オレの事は別にいいわ。ただオレの断りなく大河を誘うってのが許せねよ・・・・」

九頭竜は来た早々カバンを強く机に叩きつけ喧嘩腰の姿を見せていた。

おい頼むから喧嘩は止めてくれよ・・・・





「だからなに、もしかして喧嘩?おいいよかかってきなよ。どうせ困るのはアンタなんだから」

「いいやしねぇよ。てめぇみたいな口だけのクソガキを殴ったらこっちが虚しくなるだけだ」

「は?どういう意味?それまじで分かんないんだけど・・・」

「ちょっとちょっと、銀華何やってるの」

騒ぎを聞きつけてかざーさんが割って入り仲裁に入った。




「ちょっとちょっとどういうわけ?」

「ちっ咲那・・・・・まあいい。興が冷めた戻るわ」

涼浦は、余計な戦いをしないように引き下がっていた。たぶんここで問題を起こしたら自分まで巻き込まれて周囲の評価が下がるから諦めたのだろう。

まったくカースト上位は無駄に神経質だな。





「九頭竜さんお帰り」

「おい九頭竜。みゃこがお前が来るの寂しがってたぞ」

「余計なこと言うな・・・」

「大河、それは本当か・・・・・・」じ・・・・

う・・・・・そんな目で睨むな・・・・






「ああ・・・・・・・寂しかったよ。それでいいか?」

「プ・・・・・えらい正直だな・・・・・・仮初のカップルなのによ」ボソッ

笑いながら耳元で吹き込まれた。

ああ・・・・仮初だろうがファンだろうとどうでもいいんだ。

俺はお前が体調を戻しただけでいい気分になれるんだ。






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