まるで映画のワンシーン見たいです

公方寧々の幼いころは、両親が共働きの為、よく母親の祖父母の元に遊んでいった。祖父は寧々が幼い頃にはすでに亡くなって面識はないが、祖母は、業界では名をはせた生け花の先生で、その門下には各業界で活躍してる人が多くおり、寧々の事務所の社長である松村さんや、行きつけの喫茶店のマスターもその一人だ。

彼女はコンクールで何度も優勝し雑誌で載ることもさながら、穏やかで人望がいいので誰からも慕われていたのだ。






そして寧々は、今と違って昔は明るく元気な性格で同級生の子と一緒におばあちゃんの実家で遊ぶのが特に日課とされている。

寧々は大のおばあちゃん子で、おばあちゃんが好きな酢昆布を真似して食べていたのだ。最初はすっぱくて嫌いだったが我慢して食べることで自然に好きになったのだ。




そんなおばあちゃんは人の素質を見抜くタイプで、寧々の運の良さを見出したようだ。



彼女の運は特によく雨の日で外に遊べなかった時は、念じることで晴れたり、おかしについている当たりのマークも念じることでこれまた高確率で当たりがでるようだ。



それは、頭の中におばあちゃんの思い出を思い出すことで運を引き寄せることがあるようだ。

勿論これはあくまでおまじないの類なので当たる時もあれば無論外れることもあるのでその時はワンワン泣いたときはよくあやしてくれたようだ。






そしてあることが彼女を笑わないきっかけが作った。それは当時の女子小学生では、一時期話題になったアクセサリー集めが日本中話題になっており、そのブームは寧々の友達にも影響を与えそれにハマってしまっていたのだ。







小学生のブームなんて期間限定でいつ飽きてもおかしくないのに、その友達は他の話題をそっちのけで話していて全然相手にしてくれなかった。





寧々は友達はいるのだが、友人を作る方法はあまり得意ではないのでどうすることもできなかった。



両親にもそれを欲しいとねだっても、両親は共働きの為全く相手にぜずに誕生日やお年玉は大分先でしょと言って軽くあしらわれていて、おまけに小遣いもあまりくれないので、友人のように多く買えることができなかったのだ。




そこで頼みの綱である寧々は、大好きなおばあちゃんに今話題のアクセサリーセットを買ってほしいとねだるとおばあちゃんは、頑張ってネットや近くの店で買いまわることにしたが買うことができなかった。

それもそのはず、寧々が欲しがってたアクセサリーセットは女子小学生の中では人気の商品の為に入手が困難とされることができなかった。



無論そのことを当時小学生だった寧々に説明しても聞く耳を持たず、




「おばあちゃん嫌い!!!」

と泣き叫んで行ってしばらく顔をしばらく見せなかったこともあった。







そしてしばらくすると、おばあちゃんは約束通り寧々が欲しがっていたアクセサリーセットを買うことができ寧々はご満悦だった。

お陰で寧々は、ようやく友達の枠に再び入ることができ楽しく過ごせれたのだが、程なくして、寧々の祖母は亡くなった。



寧々はそのことを知ると真っ先に病院に駆け上がり祖母の元に涙がやむまで泣いていたのだ。

そして悲しみの中で眩む中、両親達が医師と話しているときに亡くなった理由は過労と判断されていたのだ。

とはいっても後から聞いた事実は過労のほかに様々な持病を患っており、または祖母は自分より他人を優先するお人よしの人物なので、細かい病気は気にせず人のためにボランティアをしていたので病院に行くことをしなかったようだが、





寧々はその事実を知ることがなく、祖母が死んだのは自分のせいだと強く責めていたのだ。

それ以降寧々はまったく表情を見せず、友人と疎遠になり一人でいることができた。





そんな孤独な日々が続く中、3年後の祖母の三回忌の法事の時、当時中学1年生だった寧々に声をかけてきたのは、事務所の社長である松村さんだった。



当時松村さんの事務所は、有名な人材があまりいなく事務所の経営に危機を瀕していており、寧々にスカウトをしたのだ。



当時寧々の素質はコミュニケーションに欠けていることを除けば、完璧な素質があったのだ。寧々はそれに対して最初は、断ったのだが、寧々は、改めて祖母の思い出を思い出す。それは祖母と昼間のドラマの再放送を見ている最中だった。




『寧々は、可愛いし賢いから将来が楽しみやねぇ』


『ほんとぉ?でもどんな仕事がしたいか分からないよ・・・」


『ならテレビに出る仕事はどう?べっぴんだかみんなに注目されるよ・・・ほら今テレビに映ってる女の人みたいに演じてるのを・・・』


『考えてみる』



話のやり取りはそれで終わったが寧々にとってはそれは今までの思い出よりも印象があり、忘れていた祖母の思い出を掘り起こすために祖母が写真に映った思い出のアルバムを振り返ることで、寧々は、テレビに出る仕事をする決心をし、その日以来松村さんの事務所に入り、祖母がお世話になったあのマンションにお世話になったのだ。



だが、松村さんところの事務所は、声優事務所の為にタレント方面ではないのだ。

なので寧々は声だけではなく、アイドル声優としてテレビに出るために日々の運動を休む暇もなくやり続けて、スキルをアップしたのだ。

彼女はアイドル声優で終わるわけにはいかない。このまま有名になりあの日祖母と一緒に見たドラマの女優みたいに感情豊かに演じたい。



今の自分は、感情を自由に表すことはできなくても無理に表情を作ることができる。

そう思いながら表情を作りそれが運よく業界に注目され最近では、地味にだが、ゆっくりとドラマ出演を多くこなし、そのたびファンも増えた。



彼女が今の地位に就いたのは、運もそうだが努力の賜物だ。

友人としての時間を削ることで今の地位に就くことができた。

後悔は・・・・・・・・ない。










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たった今、彼女の口から過去を話してくれた・・・・

壮絶な過去で、頭がポカーンとなってしまいがちだがこれだけは言える・・・・



「なぜ・・・・それを俺に話すんだ」

「さぁ・・・・なぜかしらね・・・ただ言いやすかったかもしれないわね」

「はっ・・・・・やっぱ俺、軽く見られているのか・・・・なんか悲しいな

「誰もそうとは言ってないわよ。まぁ最初は貴方の事は、優しすぎて怒らないから好き勝手にやりやすいと思ったのは事実よ」

やっぱりそう思われてたーーーーーー







「ただ、この6日間ともに寄り添ってたお陰で貴方の評価は変わったわ。好き勝手にやっているこんなわたしを身体を張って守ってくれておまけに必要でもない友人をも勧めてくれる・・・・・・とんでもないお人よしな人・・・・嫌いじゃない・・・・・むしろ尊敬するわ・・・・」

まるで告白シーンのように背後の夕焼けが非常に絵になり、それに加えそよ風が吹き荒れてカブトムシが飛び交い、ひぐらしの音色、これが夏の絵なのか分からないが、今自分は、アニメ・・・・いやドラマの撮影をしているような緊迫感があった。

目の前にいる寧々はいつものような真顔だが、声だけは生きている感じがし、口元が静かに鮮明に動く、これはこれから大事なセリフを言う瞬間だ・・・・







「貴方、このままわたしのマネージャになってみない?・・・・・・」

その一言を終えるといつものように無風になり周囲は静まりかえる。




まるでこのシーンをより迫力をさせるために自然が起こしたいたずらなのだろう。

さらに彼女にセリフは続く。





「もし断るのなら好きにしてもいいわ。だけど・・・・貴方が正式のマネージャ

になってくれたらさらなる高みを目指せるかもしれない。貴方には優しさもあるけど中には厳しさもある・・・・その力で支えてほしい・・・・」

支えてほしいか・・・・・

完全に告白シーンそのものだな・・・・・





始め松村さんからこの仕事を受けたときはめんどくさそうと思ったけど、だんだんとやりがいを感じていた。

今俺の将来の夢は考えてないけど・・・・・彼女のような心に影がある人間を支援する仕事を就きたいとほんの一瞬考える時がある・・・・

それくらい俺はこのバイトが好きだ。機会があればまたやってみたい。

今度は松村さんのフォローなしで、自分で担当の仕事を探りたい。

けれど・・・・




「ごめん・・・・・・もし、仮に俺がこの仕事を就くのなら最初は、推しの担当を選ぶ・・・・・・なんせ俺、オタクだからな・・」

「そう・・・・・少しがっかりしたけど、なんとなくそう思ったわ」

「はははははははははは」

断ったのに寧々は落ち込んでいるのに、声は、そんな感じはしなかった。むしろ逆に嬉しそうな口調だった。






「ねぇ、マネージャ・・・・話は戻るけど・・・・あと一日でマネージャの仕事終わりよね・・・」

「ああ、そういえばそうだな・・・・けどその日仕事ないぞ」

「なら、なんかやり残したことある・・・・・ないのなら、最後に思い出つくりをしたいのだけど・・・・」

「思い出つくり」

「そうよ・・・・このわたしがわざわざ言うことなんて滅多にないのよ。好きにサービスをしてもいいわよ」

サービスって・・・・・なんかこの人どさくさに紛れてやらしいこと言ってないか?




けど、思い出作りか・・・・・・明日なんかイベントはあったっけ?







・・・・・・・・・

いや・・・・・・明日は実家近くの祭りがあった。





「一緒に祭りに行かないか?もちろん俺の彼女や親せきとかの同伴だけど・・・・」

「え?」








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