宗介さんにも恋がしたいです
「ふぅ~~~~~~何とか間に合ったーーーー」
「え、ここって・・・」
俺は姉ちゃんにこれまた無理に走られ着いた場所は、うちの学校より離れた場所にある旧校舎敷地内にある剣道道場で、目の前には今から合宿場に行くためのバスが停車していた。
そこは普段俺らのような一般生徒は剣道の授業と剣道部の部室の見学しか利用しない場所で、俺も最近来たのは宗助の部活の練習試合にしか来てないのだ。しかも剣道の授業も二年の後半と三年の授業のみなのでここを使う機会も少なく、それに加えこの場所は、内装はリフォームしているとはいえ外観は旧校舎時代から使われた建物だけあってとても古く幽霊屋敷と言ってもおかしくないくらいの建物で学校の七不思議で噂されるくらいのいわくつきの場所なのだ。
その一般の生徒はこれまではあまり来ないとされてる場所が、宗助の個人戦の初インターハイ出場がきっかけに道場前には野次馬(特に女子ファン)が宗助目的に大量に湧いているのだ。
『キャーーーーーーー沖クンカッコイイーーーーーー』
『応援してるよーーーーーー』
『サインお願いーー』
「あはは、また今度ね・・・」
ちょうどいいタイミングで宗介達剣道部メンバーはいまから合宿場に向かうようだ。
それにしても宗介のやつ相変わらず、こういう声援は断ることができないようでとても困った顔をしてるな。
非リアならこの状況泣いて喜ぶのにもったいないな。
「はいよーーーーどいてくれーーーーー」
「ちょっ姉ちゃんなにしてんだよ」
「なにって、決まってるだろ。宗介今から合宿だから挨拶するんだよ」
挨拶って・・・・俺人混みが苦手なのを知ってるのに・・・・
とりあえず俺も宗助ファンという壁をかいくぐるのだが・・・・・
って姉ちゃんいつの間に最前列に行ったんだよ?早いな。
「おーーーーーーい!!!宗介!!!久しぶりーーーー終業式以来じゃないか!!!」フリフリ
「え・・・・・・美国さん・・」
ざわざわ
「誰?このオバサン?」
「知らない~~~~~なんだか先輩の知り合いぽかったけど・・・」
「てか・・・・この人どこかで見たようなって・・・みくに・・・・ってあのMicuniさん」
「マジ?サイン貰おうかな?」
ざわざわ
周囲が姉ちゃんを気づくと、さらに賑やかになり、宗助そっちのけでスマホで撮影するものもいた。
ズドン!!!!
その騒ぎも地震に似た快音と威圧によって消周囲は恐怖を感じた。
それは姉ちゃんは先ほどコンクリートが抉れるようなほどの思いっきり利き足を踏み込むたったそれだけの事で静寂になっていたのだ。
それもそのはず先ほど穏やかだった姉ちゃんは険しくなり、まだ乗ってない剣道部員をすり抜けバスをドン!!!と響かせ、野次馬どもに目を向ける。
「おいお前ら!!!!大会前日なのに急に馬鹿みたいに騒ぎ立ててるんじゃねぇよ!!!宗介のやつ完全に縮こまってるじゃねぇかよ!!!まだ仕上がってねぇ状態での応援は逆効果ってのは知らないかよ!!!それになぁ・・・・大会には出れないけど宗介以外にも選手がいるんだからそいつらも団体戦で必死こいて活躍したんだからちょっとは声をかけて励ましてやれよ!!」
「・・・・・・・・・・」
姉ちゃんの恫喝により目の前の野次馬は揃ってなにも言えなかった。
まぁこうも正論を言われちゃなにも言えないだろうな・・・・
「後!!!私に今オバサンって言ったやつ前に出ろ!!!その命神に返しなさい!!!」ポキポキ
みんな一斉に39238315(みくにさんはさいこう)って言って!!!それ言ったら殺意丸出しの鬼神は大人しくなるから。
「あの・・・・・待ってください。美国さん・・・・ちょっと話があるけどいいかな?」
「んあ?」
その後、宗助は顧問に一度謝った後姉ちゃんと一度どこかに向かっていた。
なんだろう。気になるな。
「おい、みゃこお前は行かないのか?」
「うお!!!樹いつの間にいたんだよ?」
「居たってお前見送りに行くって言ったはずだぞ。いや、俺の事よりあの二人の事をコッソリと後をつけろよ」
「お前は行かないのかよ?」
「生憎俺はこういう無駄な事するより応援に来たお姉ちゃんをナンパした方が得策だ」
「そっか・・・」
樹の無駄な努力を感じながらも俺はあの二人を忍びのごとく影になりついていく。すると旧校舎の校庭内にある古びたベンチに姉ちゃんは、足組して座っていた。
「あ・・・・・・・あのこれで・・・・・二人きりになりましたね・・・・」
「そうだな・・・・誰もいない校庭で男女が二人・・・・ここではなにをしてもよっぽどな事が無い限りいろいろなことができるな。もしかしてお前はこれを狙ったのか?」
「いえ、そういうわけじゃ・・・・」
口ごもりあたふたと慌てながら否定をしていたが、姉ちゃんは立ち上がり宗助の頭をサスサスと頭をなでていた。
「ふっ冗談だ・・・・相変わらずお前は可愛いな。この初々しさ昔と変わらない。本当にこんな頼りなかった男の子が、こんなまともな設備がない弱小の剣道部で優勝できたものだ」
「それは・・・・小さい時に神代の道場に通ったお陰ですよ・・・・都が・・・魁里ちゃんが・・・市葉ちゃんが・・・それに美国さんがいなければここに僕はいなかった。ありがとうございます」
「そっか・・・・・・私達のお陰か・・・・その言葉都達にも聞かせたかったな」
いや、バリバリ茂みのように隠れてるよ。
「で、もう話は済んだか。そろそろバスに戻らなきゃまずいだろ?」
「待ってください・・・・話はこれからです」
立ち上がりバス方面に戻ると宗介は声を震わせ叫び、姉ちゃんは足を止めた。
これ・・・・・まさか・・・・・言っちゃうのか。
「美国さん。貴方にとって僕は憧れの人だ。昔の貴方は女性なのに、男性の誰よりも勇気があってカッコよくて輝いていた。僕もそうなりたい為に今日まで努力をしたんだ。その結果をここで出したい。もし・・・・・インハイで優勝できたのなら僕と付き合ってくれますか・・・・」
言ったーーーーーーーあの、引っ込み思案で奥手のあいつが誰の手もいらずに告白していったぞ。
てかあいつの性格上姉ちゃんを始め基本年上の女性と話すのは苦手なのによく勇気を出せたな・・・・・これもしかして俺達が日ごろ宗介に姉ゲーのエロゲを借りたおかげなのか?
もしそうだとしたらエロゲで培った努力は決して裏切らなかったんだな。
「う・・・・・・・」クラ・・・・
って言った直後に気絶しそうになってるんだけど・・・・前言撤回。なんも克服してねぇ!!!
「おっと、大丈夫か・・・・」
宗介がふらついて倒れると間一髪姉ちゃんが支え、宗助を抱きかかえる。
すると宗介はよそよそしく立ち上がり恥ずかしそうに後ずさりをする。
「あっ・・・・・・ありがとうございます」
「大丈夫なのか・・・・これから合宿なんだからこのままじゃ持たないぜ」
「いえ・・・・僕は平気です。それよりも告白の返事を・・・」
「そうか・・・・お前にとってはそれが優先順位なんだな」
そう言いながら姉ちゃんは改めて告白された相手に面と向き合う。
うう・・・・・こっちまで緊張してきたぞ・・・
「悪いな・・・・せっかく告白したところ悪いがお前を異性として見れない。ただの友達としか思えない」
「え・・・・・・」
それは一瞬だった。宗助の甘い期待は非常な一言によって打ち砕かれた。
「な・・・・・なぜですか・・・・・」
「なぜ?言葉通りの意味だ。それ以上もそれ以下もない。それに・・・大体なぜ私なんだ。お前が好きな人間は山ほどいるのに・・・・」
「それは・・・・・」
「大体・・・・大会に優勝できたら告白?そんなご都合主義丸出しのスポコン漫画みたいにくだらない約束をサラッと口にするな。現実は二次元のようにうまくならない状況が数々あるのに・・・」
姉ちゃんは、まるで今まで築いた関係をぶち壊すかのように宗助の言動を否定していた。
なんで・・・・・あの内気な宗助が必死に言った思いをこうも滅多打ちにするんだよ・・・
「それに今のお前では全国に出場しても優勝することは不可能だ。全国には、お前よりガタイの体系の選手がいる。ヒョロガリでは勝つのは至難の業でそれ以前に才能と経験の持ち主なんてゴロゴロいる。お前はただ運よく優勝できただけだ。そんな甘い目的の為に剣を振るうなら辞退する方が身のためだぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「分かったならこの話は聞かなかったことにする。私はお前と普段の関係のままでいたいんだ」
「なら・・・・・・優勝するばいいんですね?」
「あ?」
落ち込んでると思ったら逆に燃えたかのように自身満々で、クシャっと笑いながらそう呟いた。例えるのなら熱血的な感じではなくどちらかと言えば闇落ちしたかのように少し陰気なような感じだった。
「できたらな・・・・・」
「ならお願いします」
対する姉ちゃんは宗助の変貌を何も感じずただ受け取ることにして、宗助は一礼するとバスに戻ってしまって、残った姉ちゃんはただただこの場を不動していて宗助が離れることを察すると周囲を見渡した。
「・・・・・・・・おい、都お前ここにいるんだよ」
げ・・・・・・やっぱりバレたか・・・・
「やっぱりここにいたのか。全く盗み聞きは良くないぞ。でも裏を返せば私の事を愛してるからそんな行動をとったんだな。まったくウブなやつだ」
「姉ちゃん・・・・さっきのことなんだけど・・・・」
「悪いな。いくら弟でもこれについた語るつもりはない・・・」
先ほどのアマアマなブラコン病から一変先ほど宗介の時と交わした険しい表情に戻った。
「でも・・・・」
「ああーーーーー全くあいつもめんどくさいことをしてくれたもんだ。これじゃあ興ざめだ。姉ちゃんもう帰るわ。お前はあのチンピラと飯を食いに戻ってろ」
そう言うと姉ちゃんも後味が悪いような顔をしながら帰っていた。
その後家に帰ると普段の姉ちゃんに戻ったが、あの話題に戻す雰囲気ではなかったのでそのまま追及しなくいつもの日常に戻った。
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