お姉ちゃんの撮影に付き合うことになりました 1

青い海、白い雲、ギラギラと光る日光に揺れる船内、そしてデッキ内でパラソルを当て、日光浴をしながら優雅にカクテルを飲み完全なバカンス気分な姉。

というか、飲みすぎじゃないのか?

そう思いながらも俺は早朝ながらもパラソルがさしていても濃い日差しを当てられ、おまけに揺れる船内で船酔いというコンボで完全に調子が悪いのだ。





「う・・・・・気持ち悪い。姉ちゃんもう中に戻ってもいいか?」

「何を言ってるんだ?我が弟よ。せっかくの婚前旅行なのにもったいないだろ。ホラ思いっきり甘えろ」

「婚前旅行ってなんだよ?よくそんな恥ずかしいことをこんな人が多くいるデッキの前に言えるな」

「何を言っている。お前がどうしても来たいと言ったから特別に連れてきたんだ?なら姉の我儘を付き合うのは当然だろう?」

「それは・・・・」

「ほら、グダグダ言わんで、このフルーツでも、ぶどうジュースでも飲んでけ。ハハハハハ」

「飲んでけって・・・・・離陸したらもう撮影だろ・・・・ダメだ完全に酔っぱらってるよ」

この朝っぱらにも関わらず顔を赤くして暴走気味だった。俺はすかさずそのことを撮影スタッフや担当マネージャーに報告し、総動員で船内に休ませることにするが、うちの姉はすでで熊を殺しそうなほどの戦闘力があるのでスタッフ総動員で姉を連れてくことにした。

運よく姉はほろ酔い気分なのでそれほど暴走しなかったのが幸運だ。




「離せ~~~~~~~~私はまだ飲むぞ~~~~~~」




「はぁ・・・・・・なんでこんなことに・・・」

ようやく姉から解放された俺は疲れを表すかのようにデッキの手すりを持たれながら広大な海の景色を眺める。波打つ潮が唇まで飛びしょっぱく感じ空にはカモメがうるさく泣きわめく。





そう俺達姉弟は現在都内を離れ少し離れた離島にて、姉の仕事を就き添うことになった。

それだけだと先日の公方寧々のマネージャーの仕事と少しかぶりはあるが今回のバイトは、似てるようで非になるのだ。




話は遡ること二日前、ふと、俺の携帯から親父から電話がかかり、

『お前暇なら、今すぐ美国の暴走を止めてくれ!!!』と真面目で堅物な声を出しながらも心の内は絶対泣き崩れそうな感じをしたラブコールが響きわたった。




俺はとりあえず親父の話の一連を聞くと、姉ちゃんはこの二日後に一泊二日の泊まり込みで離島でのモデルの撮影があるようで、そこで姉の監視をするようだ。

ここまでなら事前に姉に話を聞かされたのだからなんの問題はないのだが、これからが本題で、実は姉ちゃんは今大学四年でとっくに内定が決まっており、モデルの仕事は今年いっぱいで辞めるようで、その最後の記念として、若手のモデルと混じっての貸し切りのビーチで水着撮影及び島民の触れ合いPV取るらしい。




で、その姉の暴走と言うと先ほどの泥酔事件と同じように今後姉はこの先なにかやらかし、あらぬ姿が一般誌でさらされる危険性があるようだから俺がそのブレーキ役になったのだ。そこまで言うのならまず親父自身が来いと言いたいのだがお互いが変なプライドを持って会いたがらないのだ。


まぁ俺も、この日は乃希亜は、補修で学校に来なければいけない日程だし、宗助の大会の観戦も、二日目の撮影を難無く終了すると、大会一日目の夕方くらいには会場に着くことができ、二日目の宗助野個人戦を観戦することができ、おまけに親父から報酬の小遣いが貰える為に仕方なく引き受けることにした。




「おーーーーーーいもうそろそろ着くから準備しろ!!!」

午前九時、気づけば撮影スタッフの一人が俺達に声をかけてきて、さっそく荷物を持ち降りる準備をする。






「あーーーーーーーーー空気が美味しいーーーー」

しばらくするとようやく港に着き、離陸した俺は、先ほどの気分の悪さが嘘と言うほど治り開放的になり改めて大きく息を吸う。

ここがしばらくお世話になる島か・・・・うんうん都会と比べたらとても静かで空気がとてもおいしいな。


俺に続き他のモデルの女性も続いて降りており、ちなみにこの企画で呼ばれた女性モデルは、トップモデル二人と若手の新米モデル二人のを含めた計4人でやるようで一番若い子だと俺とそんなに変わらない子がいるようだ。


そのパッと見、初々しい若く活発な子がいる中、姉だけが顔を青ざめて吐きそうになっており、完全に俺の酔いがうつってしまったようだ。



「うーーーーーーーーーー気持ちわりぃ・・・」

これがいま女子高生に人気のモデルの姿か・・・・はたから見てもそう見えない。



念願の弟と一緒に島に行けることを浮かれて朝っぱらから飲みまくるからこうなるんだよ。

これから水着撮影があるのになにやってんだか・・・


「おい、姉ちゃんちゃんと立てよ・・・」

「あん・・・都、担ぐよりお姫様抱っこにしてくれ・・・それだったら少しはマシになる」

こいつガチで、海から落としてやろうか・・・




「まったく何してんだか・・・・・ほら美国・・・・手を貸そうか・・・」

「あっ、柊さんありがとうございます」

そんな困った状況の中、同じモデル仲間の柊さんが姉ちゃんの肩を持った。

この人は、柊アウラといいイギリス人のハーフの姉ちゃんと同じモデル事務所だけではなく同じ大学に通う一つ年下の親友で、涼浦が二番目に好きなモデルでもある。

ちなみにこの前涼浦とざーさんの和解作戦で、俺の頼みを快く引き受けたのは彼女だ。



「嫌だ嫌だ・・・・都と一緒じゃなきゃダメだぞ」

「全く・・・いい年なんだから少しは落ち着きなよ」

「でも・・・・・うっ・・・吐きそう」

姉ちゃんは反論するが口を押えるのが必至でなにも返せなくそのままバスの一番奥に連れて行かれた。




アウラさんは世話好きな性格で、他のモデルの後輩と親交が深いなにより姉ちゃんの事をよく知ってるからブレーキ役になってくれる頼りにになる姉貴分だ。

・・・・・・・・ってよくよく考えたら俺ここにいる意味あるか?

そんな後悔の念が混じるなか、バスに乗りホテルに向かうことにする。




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