祭りの延長です 2

市葉の誘いで俺達は晩御飯入ることになり俺は数年ぶりにバットを持ちとりあえず何回か挑戦する。

ちなみに球速は適当に110キロを設定してプレイをするのだが1ゲームはあえて全球を見送ることにし、目が慣れたころで3ゲーム目からは本気を出し、なんとかバットに当てることはできるがどれもカスるばっかで芯をとらえないのでなかなか前には飛ばなかった。

こういう不毛なプレイが3ゲームも続き・・・・



「うおりゃ!!!」

カキン!!!・・・ガシャ

「あちゃ・・・・・・ピッチャーライナーか・・・」

結局、前に飛ばしたのは三回だけで、とても誇れない結果になってしまった。

そんな残念な結果を後ろから市葉が見届けることになるのだがなぜかパチパチと拍手していた。



「どんまいです。みやこ」

「いやーーーーー久々だからめっちゃ難しいな・・・」

「そんなことないですよ。未経験者が110キロの球速でしかも棒立ちのフォームで当てるなんてすごいですよ」

「そうか?小さいときに姉ちゃんと野球するときこれ以上の球球は嫌というほど見られたけど・・・」

「それでも常人では当てるのは難しいですよ」

その言い方まるで俺が普通の人間ではない言い方がするんだが・・・・

俺にとっては、暴食剣道馬鹿の魁里の方がよっぽど怪物だ。






「うぉるりゃあああああ死ねーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

カキーーーーーーーーーーン!!!

ふと隣のバッターボックスを見ると魁里はかつてないほどの罵声を叫びながら打っており、挑戦する球速も俺と同じ110キロながらも完璧のフォームで放ってくるボールをフルスイングし、次々と前に飛ばしていた。

悔しいけど魁里は、高身長で恵まれている体系で剣道を問わずあらゆるジャンルのスポーツを得意とするうちの姉ちゃんに匹敵するセンスの持ち主だから勝てるわけがない。というか格下の俺をドヤって楽しいか?例えるのなら転生もののチート主人公並みにイキっているんだぞ。それをちゃんと認識してくれ。

後死語確実に俺に向けているんだよな?そうに違いない。長文失礼する。



チラッ

「にぃ・・・」

魁里は打つ途中でチラッと俺を見ると勝ち誇ったような顔をしているが、全然悔しくない。むしろその顔が腹立つだけだ。

そして魁里も俺と同じように三ゲームを終わらせるとその顔は続いていた。





「どうです。都クン!!!この魁里ちゃんの大・勝・利をまじかに見てどんな気持ちですかぁ~~~~~~すごい悔しいですよね。もっと魁里ちゃんを敬ってください」

「お前は俺を怒らせたいか褒めてもらいたいかどっちが心待ちしてんだ?」

「は?なんですかそれ?口説いてるんですか?ごめんなさい。私好きな人がいるので丁重にお断りします」

なんで勝手に振られたことになってんだ。





「もう・・・・魁里ったら、からかうのは止めなさい。みやこ困ってるでしょ」

「はいはい、姉さん相手にふざけるのはなるべく避けるようにします」

「それ本人の前に言って意味ないだろ」

「それはさておき、言いだしっぺの姉さんもそろそろ打ってみてはどうですか」

「え・・・・いいんですか?」

「なんで誘ってる方が抵抗気味なんだよ。俺達も打ったんだから市葉も打てよ」

「分かりました。とりあえずやってみます」

そう言うと市葉はスピード設定を俺達より早い120キロに設定しバッターボックスに構える。市葉は左利きなので左に立ち、プロ顔負けの様になる美しいフォームを見せる。




「おお・・・・一本足打法・・・」

「これはやる気満々ですねーーーーー姉さん頑張ってください」

普段のおっとり表情を消し真剣なまなざしを目の前のピッチングマシーンに向ける。あいつが普段真剣な顔をするのは面を被った剣道の試合の時だけでそれいがいはあんまり見てないな。これは妹よりいい結果が出るかもな。




そしてゲームが始まりピッチングマシーンが動く音がし、市葉に向かって投げ入れタイミングを合わして踏み込んだ。




ビュッ

ブーーーーーーーーン!!!!

「あれ?」

市葉の間の抜けた声と同時にボールが過ぎ去り空振りした。

てか、今バットを打つタイミングとボールの距離がかなり開いていて、それどころかさっきまでフォームが良かったのにいざスイングとなるととてもブサイクな打ち方をしていてまるで溺れてるように見える。




「やっぱりダメでしたか・・・」

魁里はすでに結果を見えていたか完全に呆れた顔をしていた。



・・・・・・・・あ・・・・・・そういえば思い出したぞ。



市葉は魁里よりも運動神経、反射神経、技術と共に格段に違うのだが、それはあくまで剣道の話、他のスポーツはまるで初心者いや・・・・それ以下の超ドヘタなのだ。





ブーーーン!!

「あれ?」

ブーーーーーーン!!!

「あれれ?」

ブーーーーーーーーーーン!!!!!

「おかしいです・・・・・・・ひゃあ」

「市葉!!!」

「姉さん!!!」

何度かのスイングで一回転し、すってんころりんする。




「いたたたたたたた転びました・・・へへへへへ」

「おい、横、横!!!!」

「横・・・・・・・・きゃあ!!!」ドコッ

市葉がよろめきながら立ち上がろうとした時運悪くストライクゾーンにでてしまい立ち上がった拍子にお尻に120キロの速球を直撃し前に倒れる。

とっさの事なので、マシーンを止めて俺と魁里はすぐさま駆けつける。



「姉さん、シッカリしてください。立てますか?」

「おい、直撃だったぞ。病院呼ぶか?」

「へ・・・・・・平気です。ご心配おかけしました」

ご心配って、えぐい音がしたぞ。下手したら折れてるんじゃ・・・

騒ぎを聞きつけたか店員やちかくの客が近づいてくるが、市葉はふらつきながらも立ち上がる。そして、なぜか公共の場にズボンをおろして、パンイチになろうとしていた。





「おい!!!!何やってんだこの馬鹿!!!」

「そうですよ姉さん。何勝手にイカレタ行動してるんですか?張っ倒しますよ」

「んん?なにってお尻に当たったんだから確認をですが・・・・」

「ならトイレで確認してください!!!!!」

魁里がなんとか市葉のズボンを素早く上げたお陰でなんとか周りの男性客にJKのパンツを見られずに、済んだ・・・・・俺以外はな・・・・・



その後ヘマをやらかした市葉は魁里に無理に連れて行くことでこの場は収まった。




俺は、事態が事態なのでバッティングをせずにしばらくベンチに座り、無事であることを祈りその数分後魁里が先に出てきた。




「市葉は大丈夫か?」

「それがちょっと・・・・青くなったくらいで本人はなんともないようですよ」

「でも、一応病院でも寄った方がいいんじゃ・・・」

「言っても聞かない性格なのは都クンも知ってるでしょう?本人が大丈夫ならそれでいいですよ。それで後から悪化しても本人の責任ですからね・・・」

「お前いつのまか姉に冷たくなった。昔はベタベタと引っ付いてたのに・・・」

「いつの話をしてるんですか?魁里ちゃんも成長したんですよ。とりあえず、今から薬局で塗り薬と絆創膏買いに行くんですけどあなたはどうしますか?」

「俺は・・・」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





しばらくすると俺はバッティングセンターに戻る。実は俺も魁里と同じくしばらく外に出向いて買い物をしており右手に紙袋を二つ持ってるのだ。

ふぅ・・・・・やっぱ外は暑いな・・・・・中の冷房がシャツ裏まで浸透して気持ちいい。

魁里によると先ほどここに戻ったと連絡があったようで、俺は探しにいくとベンチには市葉が座って、たこ焼きを食っていた。





「よぅ・・・お尻大丈夫か?」

「都・・・・どこにいったんですか?心配してたんですよ」

心配してたのは分かるけど青のりを口に付着したまま喋らんでくれ。




「質問を質問で返すなよ・・・」

「そ・・・・・・そうですね・・・・心配してたのにこの口の利き方はないですね。魁里が買ってくれた塗り薬のお陰で今のところ痛みは和らぎました。ちなみにたこ焼きはそのついでで勝手くれたようですよ」

市葉はなぜか突然立ち上がりズボンを下すしぐさをしている。

いったい何してんの?





「よかったら今見ますか・・・」

「見せんでいい・・・・・」

「冗談ですよ」

フフッと口を含んで笑っているがお前のその冗談は時々本気になるんだからそれが一番怖いんだよ。市葉は腰を下ろし、俺もそのたこ焼きを口に入れる。




「はぁーーーーーーーー全くしっかりしろよ。仮にもインハイ出場が決まったんだからここで怪我は止めてくれよ。今回個人戦ではなく団体戦も出場したんだからチームの事も考えてくれ」

「分かりましたよ」

「よろしい。ところで魁里は?」

「今あそこで打ってるようですけど」

『死ねーーーーーーーーーーーーー!!!』

よくよく見ると魁里がピッチングマシーンで罵声を吐きながらポカポカと打っていた。

ということは改めて考えると市葉と二人でいることになるのか・・・・

さらっと数年ぶりに面と向かって喋ることになったがものすごく気まずい。





「・・・・・・・・・・・どうしました」

「いや・・・・・それよりもほらこれ・・・・」

この後どうすればいいか分からないので俺は市葉に紙袋を渡す。市葉はその中を開けると大好きな狸のぬいぐるみが入っていて子供みたいに嬉しそうにしていた。


「これは・・・・たぬさんですか・・・・とても嬉しいです」

「やっぱ、昔の趣味は変わらなかったか・・・・市葉昔からちょっとブサイクな狸のぬいぐるみが好きだもんな」

「むーーーーーーーーブサイクと言わないでください。たぬさんが可哀そうですよ」

まるで腹話術でもしてるかのように狸のぬいぐるみをテーブルでトコトコと動かしながら遊んでいた。





「急だったからこれしか買えなかったんだ。もし嫌なら別のを考えるよ」

「いいえ、これだけで充分ですよ。やっぱ都頼りになりますね。ところでそのもう一つの紙袋はなんですか?もしかして食べ物ですか?」

「よだれを垂らすな・・・・・これは・・・・その・・・・・」

「もったいぶらずに見せてください」

言われた通り見せることにする。その中身は先ほどのぬいぐるみと同じメーカーの豚のぬいぐるみだった。



「これは豚ですね・・・もしかして魁里のですか?」

「勘違いするな。これはついでだ。たまたま二つ買うとお得だから買ったまでだ」

「素直じゃないですね~~~~~」にやにや

俺は別に魁里の事はどうでもいいが、姉だけ買って自分のがないかと、闇討ちしそうで怖いから買ったまでだ。




「なぁ・・・・結構遊んだんだからそろそろ掃除再開しないか?このままだと姉ちゃん帰ってしまう」

「そうですね・・・・都ちょっといいですか?」

「なんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・いいえなんでもありません。呼んだだけです」

なにか言いたそうな顔をしていたが、切り替えて魁里を呼んでいった。




ちなみに魁里にその豚のぬいぐるみを渡すと、『都クンより宗助先輩がもらった方がいいです』という一言が原因で喧嘩になり俺は分で返り討ちにされ、豚のぬいぐるみまで取られた。




そして家に帰ると掃除を再開し、なんとか姉ちゃんが帰るまで掃除は終わることができた。




どうやら姉ちゃんは、焼き肉の具材を買ってきたようで今日は焼肉パーティーをすることにし、いろいろ会話することになった。どうやら魁里は今日明日は実家にいるようでそれ以降は寮に戻りインハイに向けての合宿をやるようだ。







ちなみにその焼肉パーティーの戦果だが、俺以外は化け物級の超人なので肉を素早く奪われ結局肉を一つも取れないという残念な結果に終わった。

まぁそれでも市葉や姉ちゃんには恵んで貰ったけど自分で取りたかったな・・・・・


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