おにいちゃんにできないことはありません

「宗介、予選大会優勝おめでとう!!!」

「ありがとう二人共」

俺が休日のさなか、武道館会場で観戦すること数刻、宗介は彗星の如く対戦相手を薙ぎ払い個人戦を優勝したのだ。


そして気づけば夕方になり俺達は宗介がここに来る前とりあえずスマホでゲームをし時間をつぶしてる間に宗介は、武道館前で着替え終わり、部活の仲間と話を終えた宗介と合流し、励まし合った。思えば小さい頃から剣の素質があり突きだけなら小学生の時点で大人の有段者を軽くあしらっていて、今まで小中と計三回くらい優勝して全国行ったから実力は相当なんだよな。



「樹だけではなく都まで来てくれるなんて少し照れるな・・・・」

「おめでと、最後まで見てたぞ」

「いやお前は最初から熟睡してて起きたのは、最後の決勝だけだろ」

「それだけでも嬉しいよ」

お前は余計なことを言うなと言おうとしたが、宗介が疲れてるから見苦しいものを見せない為に自制することにする。

そんな中、休日にも関わらずうちの制服を着た女子がなにかを持って顔を俯きながら胃かづいていた。



「あの・・・・・沖先輩ですか・・・・・・・」

「うん?そうだけど・・・・・」

「ゆ・・・・・・優勝おめでとうございます。よかったらこれ、クッキーですけど良かったら食べてください」

「うん・・・・・・ありがと」

まさか、実際クッキーを作って渡すなんて本当にあるなんてな。そういうのはギャルゲの定番だとしか思わなかったわ。周囲が女の子に囲まれてる中俺達は少し距離を離れてから見守った。





「やったな。宗介」

「なんで、お前は行くとこ先々で女の子に話しかけるんだよ。羨ましいぞ」

「そりゃ顔がイケメンで、運動神経がいいからだよ。こういうハイスペックな人間は女にはモテるんだ。逆に俺らみたいなさえない奴がなにも部活せずに日夜エロゲをこよなく愛する陰キャじゃ一生できないイベントだ。分かったかね。樹クン」

そんな中樹を囲っている女子の一人が俺の方に目を向け近づいている・


「あの・・・・・・そこにいるのは、大河さんですよね?」

「ほえ?」

「『Mikuni』さんの弟さんですね」

「うわぁ・・・・結構かっこいいじゃん」

「調べによると、うちの校内で独自に行ってるイケメンランキングで、沖先輩が2位に対し、大河先輩は13位ですって・・・・・」

え?13位。俺そんなに高いの?初めて知ったわ。



「もしよろしかったら、これどうぞ」

「後ですね・・・・・お姉さんからなにか適切なダイエット方法とか教えて貰ってないですか?」

「はい?」

「あ~~~~~確かにアンタ最近少しふっくらしてたね~~~~~」

「う・・・・・・うるさいよ!!!とにかく教えてください」

「わ・・・・・わたしもです・・・・」

特に理由もなく俺は宗介と同様になにか貰い物をもらい気づけば宗介と同様に女の子が寄ってきて相談に乗ることにした。で、そんな中俺は、ゆっくりと取り残されてた樹を見る。うわぁ・・・・・見るからに泣きそうな感じで俺らの方をポツンと突っ立って俺らに恨めしそうな眼差しで睨んでいるんだけど・・・

そしてその悲しみは徐々に混みだしてより段々と涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりそして、全速力で疾走し・・・・・・・







「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!なんで、あいつ等だけイケメンで俺は、ブッサイクなんだよ~~~~~~恨むぞ神ィィィィィぃぃぃぃ!!!!」

そう悲痛な叫びを武道館近くに吠え出した。





「うわぁ・・・なにあれ・・・・・」

「不気味~~~~~」

君たち言いたいことは分かるけど、陰口と冷たい目を向けないでくれ。あいつのライフはゼロだ・・・・











あの後、宗介は、先の大会の疲れや学校側に報告をする為俺らと別れ、俺は心が折れた樹を励ます為に家に呼ぶことにした。

今の樹は、予想以上にショックを受け、俺んちの家で泣きながらウイ〇レをやっていたのだ。で、俺は家を樹に任せ、姉ちゃんが夜中に帰るので俺が代わりに作る為に近くのスーパーで、夕飯の買い出しにいった。

俺は普段は料理はしないが、休日で姉ちゃんがいる時は、よく料理を教えて貰った経験があるのである程度のものはできるはずだ。



とりあえず頭の中で作るものは前もって想定でき、サッサと家に帰り調理をする。

しかし、あの武道館会場から一度家に戻りご飯の準備をする時間が遅くすべての料理ができる頃にはすでに八時を超えていた。

その後俺は空腹感はあるが、自分の食事は一度後にしあの馬鹿にもご飯を持ってこようとする。







「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「おい!!!!!樹いつまで、泣きながらゲームしてんだ!!!」

『あん♡あん♡それ・・・・いいの~~~~~~~♡』

「ってお前なにやってんだゴラァ!!!!!」

部屋に入ると樹はウイ〇レをやってるのとは思いきや勝手に俺のPCを触り、勝手にエロゲでHシーンを泣きながらやっていた。しかもヘッドホンを外してじかに聞いているから、女の喘ぎ声が部屋中に響いていたのだった。

俺はとっさにご飯を床に置き、即座にマウスを奪い取りエロゲを閉じた。






「あ・・・・・・なにするんだよ・・・・・」

「それはこっちのセリフだ。何勝手に俺のPCでエロゲやってんだ。っていうかよくパスワード分かったな」

「ぐす・・・・・お前、パスワード入れるなら誕生日はやめろよな・・・・・」

「あ・・・・・ありがとう。じゃなくて、馬鹿やってないでサッサと涙拭いて飯食え!!」

「ぐはっ!!!!」

そう言い樹を軽く足蹴りをし、飯に向けようとする・・・・・

ちなみに今夜の晩飯は肉じゃがとスーパーで買ったお惣菜とご飯とみそ汁のシンプルな夜食だ。樹はそれをおいしそうにありついており、安心した俺は自分の物も部屋に持って来てバラエティー番組を見ながら食べることにした。

そして、気が付くと樹はすでに食べ終わりいつしか涙がやんでおり満足したように口を開ける。





「みゃこ・・・・ごちそうさん・・・・」

「うまかったか」

「お前万能かよ!!!!」

おい、なんで今度は少しキレ気味で俺の袖を掴むんだよ。情緒不安定か。





「なんだよ。放せよ」

「お前ふざけんなよ。俺と同じエロゲアニメオタクな癖に顔はそこそこイケメンで女子に普通に話しかけられ、美人な姉ちゃんもいて料理も掃除もうまいんだよ!!!どこの衛宮士郎だよ!!」

「でも俺は弓道部やってないし正義の味方でもないぞ。後美人な姉ちゃんって誰だ?イリアか藤村か?悪いがイリアは俺の嫁で藤村は論外だ」

「お前クロエ派じゃなかったか・・・・」

「クロエも俺の嫁だ」

「それはいいが全国に数少ない藤村派に失礼だろ」


いやお前の発言の方が相当失礼だと思うけど・・・・・






「それはさておき、なんでお前はこうもハイスペックなんだよ。少しは、この恵まれない俺達に分けてくれよ」

「分けて欲しいのはやまやまだけど、どうしたらそんなことができるんだ?」

「それはお前等価交換だろ。お前の右手と左足を代価に俺をなろう系主人公みたいに高スペックでハーレムが出来るくらいの魅力にしてくれ」

お前は親友の身体より自分が大切な薄情な奴とは思わなかったわ。




「お前は心理な扉の力を手に入れてまで、モテたいのか?」

「当たり前だ。っというか俺の周りにお前ら二人のイケメンがいるから影が薄くなるんだ。もっと俺をモテさせてくれ」

「あのな。前にも言っとくけど俺が女の子に話しかけらえれたり料理が上手いのもすべて姉ちゃんのお陰なんだよ」

「じゃあ顔は?」

「それは親の遺伝と姉ちゃんに教えて貰った日ごろのスキンケアのお陰だ」

「お前、シスコンなんだな・・・・」

やかましいわ。誰がシスコンだ。俺はただ姉ちゃんは人生の先輩だからこういうのは社会には必須なもんだと思って真似をしてるだけだ。




「まあとにかく元気出せって。ねえちゃんの恩義が無ければ俺はただのオタクだ。もし心配なら俺は彼女の九頭竜以外の女の子にはなるべく関わらないようにする。これなら自然と女の子はお前か宗介に向かうだろ?」

「そこに気づくとはやはり天才か・・・・」

「ああ、もっと褒めろ」

っというか、それやっても宗介しか話しかけられないと思うけど黙っておこう」




俺はなんとか励ますことが出来、その翌日教室に来ると真っ先に、クラスの女子の那智田に話しかけられる。





「あの・・・・・大河君ちょっと話が・・・・・」

「悪い・・・・後にしてくれ・・・」

よし我ながらの冷たい態度だ。この調子なら、樹に話しかけてくれる女子もいるはずだ・・・・・と隠れて決めポーズを取ろうと思ったら今度はざーさんが割って入った。


「ちょっと大河君その態度はないんじゃない」

「ざーさん?」

「今優子とっても悩んでいるんだから男として相談に乗ってくれないかな」

「姉ちゃんに用があるんじゃないのか?」

「何言ってるの?確かに君のお姉さんは、わたし達の憧れなんだけど、今回はそれとは別なんだから」

「お願い大河君」

「う・・・・・・・」

そう言いながら那智田は思いっきり頭を下げた。俺個人の相談なら乗ってやりたいけど、昨日樹と約束したから流石に早々と断れないな。俺はチラリと樹に目を向ける。





「・・・・・・・・」じ・・・・・

うわぁ。すごい目力で俺の事を見てるんだけど・・・・

友情と人助けどっちを取ればいいんだと悩んでいる中その決断はあっという間に決まることになる人物の涼浦が話しを加わる。






「オッス!!!大河」

「・・・・・おぅ涼浦か・・・・」

「咲菜から聞いたけど、この前は『Micuni』さんに連絡を教えてくれてサンキューだわ。アンタのお陰で今度あの人と食事することになったんだ」

「お・・・・おう良かったな」

「あれ?なにこの状況意味が分からないんだけど?」

「実は・・・・・」

ざーさんは、今の状況を涼浦に説明する。


「なんだそういう事か。なら話は早いわ。今からうちらのグループに来るよな?」

「え?急に・・・・」

「当たり前っしょ。こっちは友人の優子が悩んでるんだからほらダッシュー」

「ちょっと引っ張るなって」

「はははは、銀華は本当に行動力がすごいね・・・」

結局俺は鈴浦に連れられ、女のだらけのリア充グループに加わった。周囲は文字通り今風の遊びが凄そうなギャルに囲まれてポツンと男一人がいる俺はハーレムみたいになってしまった。







「それでさ、優子の彼氏がしつこくてさ~~~~~」

「うわっマジ最悪そいつクズ過ぎじゃね?って大河聞いてる」

「ああ・・・・」

俺は那智田のしつこすぎる彼氏の話を聞くさなか、樹が俺の子の姿を見て自分の机で伏っして落ち込んでいるのを宗介がなだめているのをじっと見つめていた。




樹・・・・・・・マジですまん。






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