警備は厳重に・・・・です
マネージャ生活六日目の日、この永遠に続きそうなカンカン照りの空、俺は暑苦しい黒スーツを脱ぎ背中に背負いワイシャツでこれまでと変わりなく寧々のマネージャを継続している。
今回の仕事は寧々とうちの姉ちゃんが出演してる深夜ドラマである『うちの妹は突然スケバンに目覚めたんだけど・・・・・』略して『うちスケ』のドラマの撮影日で近くの廃墟にて撮影するらしく、出演者や番組制作人は勿論なこと見物のためにギャラリーが何人かがその撮影を見学していたのだ。
そして現在とあるシーンの撮影が始まっていた。
そのシーンは、すでに寧々が敵高のヤンキーを一気に倒したシーンで、主人公を慕う舎弟の魚住っていう女の子が親友の岩江さんに向けて寧々演じる主人公を高らかに喝采するシーンだった。
「さぁよく見ろ!!岩江!!!これが王蘭女子の次期番長であるつくしさんの実力だ!!!・・・・・・はぁ相変わらず憧れちゃうなぁ・・・・これがつくしさんの新たなページの第一歩だぜ!!!」
「そんな高らかに叫ぶことか?」
「はいカットーーーーーーーーーー!!!」
魚住ちゃんが喝采の後うっとりするシーンで終わり次のシーンまで休憩が入るようだ。テレビで寧々のアクションシーンを見たが、改めて実物を見るとよっぽどのことが無い限りは、自分で体を張っているな。姉ちゃんや一流のスタントマンには劣るけどそれなりに鍛えてるから当たり前か。それに加え、これまでのアニメアフレコシーンを見て思ったけど、彼女はこのシーンでもNG シーンはよっぽど見せないから、完全に芸能界に伸し上がる才能はあるようで、いつアイドル声優から俳優に代わっても違和感ないほどの実力だ。
俺は、そんな彼女に真っ先にドリンクとタオルを渡した。
「お疲れ」
「ありがとう・・・・ところでマネージャさっきから気になったけど寝れた・・・」
「ん・・・・ああ、一応・・・」
「そう・・・それならいいわ。では次の撮影所に向かいましょ・・」
「ちょっと待ってくれ。まだあいつが戻ってないから待ってくれ」
「分かったわ・・・」
そう言うと寧々は先に撮影用バスに乗り待機していた。
寝てないか・・・・確かに寝不足なのは事実だしな。
なんせ昨日あんなことがあったからその件で気になりだし、夜遅くまで松村さんと相談したからな・・・・
その結果として事務所側はそれなりの対策をするらしく、事務所側には危険ならマネージャの仕事を辞めていいと持ちかけてくれたのだが、後二日なので、何があろうと最後までやり遂げようと思った。
正直危険なのは分かってるけど寧々を守る協力者が新たに加わってくれるから安心ができる。その協力者がちょうどいいタイミングで戻ってきた。
「おい、ミヤ!!!」
そんな中、乃希亜は汗だくの中俺の方に向かい合流する。そうその協力者とは乃希亜だ。
実は乃希亜には松村さんに頼まれ、また寧々になにか被害が出ないように、野次馬を含め怪しいやつがいないか見まわりをしているのだ。
まぁ正直腕っぷしは俺より強いから余ほどのことはない限りは安心できるだろう。
「乃希亜、怪しいやつとかは居なかったか?」
「いいや、今のところはいねぇな・・・・流石に二日連続に怪しいことをするとは思わねぇけどな・・・」
そう首を横に振っていた。まぁ乃希亜の言う通り、相手は馬鹿な動きはしないだろうけどそれでも油断はできない。
「おーーーーーいそろそろ次の現場向かうぞーーーーーー」
「はい!!!」
運転手さんに言われ俺と乃希亜はバスに乗り次の撮影所である廃校に向かった。
その場所は、ドラマでは主人公が通う高校らしく、姉ちゃんは先にその場所で撮影をやってるようだ。
そしてその撮影所をつき、そのバスから廃校の周りを見渡すとこれまで以上に野次馬が多くおり、その前には警備員がいるほどにぎわいを見せていた。その数はたぶん100人くらいはいるだろう。それもそのはず『うちスケ』の出演者のほとんどはモデルやアイドルや声優がほとんどなので熱狂的なファンが多くいるんだろう。
てか夏休みだからっていくらなんでも見学者多いだろ。大切な夏休みを削ってまでクソ熱い中目当てのアイドルが見れるよりかは、ほかに楽しむことなんて山ほどあるだろう。
そこまでして貴重な警備員に仕事を出動させるくらい迷惑な行為をしないでくれよ。
とはいっても幸いこの廃校の周りは、都心から離れた田舎町だから交通量にさほどの迷惑はかけてなかったけど、それでも人混みが苦手な俺にとっては苦痛しかない。
バスは見学者が入り浸った場所を通過し、撮影用の駐車所に止まり野次馬が入れない関係者用の通路を使い現場に移った。
校内に入りに、そのスタッフ関係者に挨拶をし校舎内に入ろうとした時、次の撮影まで休憩をしてるか偶然喫煙中の姉ちゃんと合流してしまった。
「ん?弟ーーーーー会いたかったぞーーーってなんだお前まで来てたのか。チンピラ」
「あ!!!そういうてめぇこそ相変わらず、ブラコンが治らねぇようだな」
バチバチ
相変わらずこの二人は目が合うと火花を散らしていた。頼むから大人しくしてくれ・・・・・・・
「乃希亜ここは大丈夫だから引き続き、仕事お願いできるか?」
「あ?言われなくても分かってんだよ!!!」
そう言うと乃希亜は再度怪しいやつがいないか見まわりに向かった
。
「そうだーーーーーーー帰れ帰れーーーーみやこ・・・・その間におねえちゃん頑張ったんだから頭なでなでしてくれ・・・」
「というか、こんな所でブラコン拗らせるなダメ姉!!!こんな所でサボってないで仕事しろ」
「うわーーーーーん。お姉ちゃんこわーーーーーい!!」
一喝入れると姉ちゃんはウソ泣きしながらそそくさと去っていた。
「相変わらず、やかましいお姉さんね・・・・」
もう慣れたよ。
ともかく俺はそのテントで寧々の荷物を置いて改めて寧々の撮影を見守ることにした。
これから撮影する場所は廃校の三階で撮影するらしく、寧々がその撮影シーンに入ってる中俺は遠くから見守りすることしかできなかった。
そんな撮影中の中、乃希亜からのLINEが来たようで俺はこっそりとその内容を見る。どうやらあの野次馬の中に怪しいやつがいるらしく向ってくれと言う事だった。
俺はすぐに事情を近くのスタッフに説明し乃希亜と合流する。
「乃希亜なにもしなかっただろうな・・・」
「勿論だ。お前からなにもすんなって言われたからな・・・それよりあいつどうするよ・・・」
彼女から示す先に目を向けると、校舎内から見学している野次馬からひときわ目立つ麦わら帽子をかぶった中年の男が校舎内をキョロキョロと奇怪な動きをしながら徘徊していた。
確かに怪しい。その動きはさながら警備がいない場所に忍び込もうとしている動きにしか見えなかった。
「とりあえず、俺が声をかけるからお前はここで待機してくれ。やばかったら援護を頼む」
「まず一人で大丈夫かよ・・・・オレも一緒に行った方が・・・」
「一人の方が相手は警戒しなくても済む。それに俺はお前が思っている以上かーなーりー強いから・・・」
「知ってる」
イチャイチャしない程度に彼女の耳元に愛する言葉をかけ、顔を赤くしてムキになってるリアクションを楽しんだ後その男にまずは紳士的に声をかける。
「あのすいません。そこでなにをしているのですかーーーー」
「ん?わたしは何もしてないが・・・」
『え?』
お互い顔を向けたときに同じリアクションをする・・・・・
後ろ姿でらしくない麦わらをかぶって分からないがなんで・・・うちの親父がここに・・・・
親父も予想外に俺がいるもんだから軽く動揺していた。
「親父なんでこんな所にいるんだよ・・・」
「そういうお前こそ・・・なんでこんな所にいるんだ・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
なんでさっきまで挙動不審だったのに俺と会うと家にいるような威圧感を出しているんだよ。生憎こっちはアンタの正体を残念ながら知ってるんだぞ
「俺はバイトだけど・・・・」
「そういう親父は・・・・」
「・・・・・・・・仕事だ」
うそつけ・・・・・親父の仕事は家の近くの警察署だろ。仕事柄か、嘘をつくのは苦手なんだな。
「いや、仕事は嘘だ・・・・・休暇でドライブをしたら偶然娘の撮影所に来てしまっただけだ」
「いやいや、なんで、ここに姉ちゃんがドラマの撮影をしてるの知ってんだよ?もしかして姉ちゃんのこと心配してるとか・・・・」
「ば・・・・・・・馬鹿な事をいうな。なんでわたしがあんなバカ娘のことなんか・・・・勘違いするな別に心配してるわけではない」
完全に口調がツンデレヒロインと酷使している。
親父のツンデレシーンなんてダレトクだよ。
「というわけで・・・わたしは帰る・・・・お前もバイトはほどほどにな・・・」
「あ・・・・親父・・・別に帰らなくてももうすぐ、校舎内で撮影するシーンがあるらしいから、良かったら姉ちゃんの活動シーンが見れる場所を教えてやるからそこに行った方が良くないか・・・」
「ふん・・・・・くだらん・・・・・そんなことを教えても行くわけないだろ・・・・・ただ、場所だけは一応聞こうか・・・」
前から思ったけど、エロゲの即堕ちヒロイン並みにチョロすぎて悲しくなってきたんだけど。
なんか俺と姉ちゃんが時に狂った行動するのは親父譲りなんだな。それだけが理解に苦しむんだけど。
まぁ、とりあえず親父にその場所を教え、なんとか犯罪に近い行動を阻止したところで後校舎内の撮影所に向かう。
はぁ・・・・・・・・やっぱり外れだったか・・・・・そう簡単に寧々のストーカが都合よく出るわけないもんな。
唯一のストーカーの手掛かりと言えば、以前俺にかかってきたストーカーからの着信先なんだけど・・・さすがに都合よく音がなるわけないよな・・・・
プルルルルルルルルルルル
「ん?」
え?とりあえず、その着信先に電話をかけると、着信音が鳴り響いてしばらくすると切れていた。
「ちょっと今の電話誰?マナーモードにしとけよ」
「いや、僕ではないです・・・」
先ほどの着信音のせいで撮影はNGになり現場は一瞬ざわついていた。
も・・・・・もしかしてそのストーカーってこの現場にいるんじゃ・・・・・
これってものすごくやばくないか・・・・
いや、待て冷静に考えろ。
っていうかこれって逆に都合がいいんじゃないのか・・・・
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