おにいちゃん・・・・・課金は止めた方がいいですよ・・・

学校の校門に着くと九頭竜と一度別れ靴箱を入れ替え登校の時と同じように無言のまま一緒に向かう。流石に校舎内は手を繋ぐことはできないがそれでもあいつのぬくもりが今にも感じてしまうくらい心地よかった。

教室にたどり着くと俺らの事を噂してたかのように今いる教室の半数くらいは俺らに注目されており、ざーさんが真っ先にこっちに向かっていた。



「おはよーーーー」

「おはよう大河君、九頭竜さん朝からラブラブだね・・・・」

「あ?・・・・・・何言ってんだ?別にこいつとは・・・・・・・ってお前なんでこっち見てんだよ!!!」

見てるって言うより偶然目が合っただけど。なんでそれだけで慌てふためくんだ?





「照れちゃって。ほら、HRまではまだだから私達のとこに来てよ?みんな大河君とどこまで進んだか聞きたいし・・・・・・」

「それはお前だけだろ!!!悪いけどオレはお前らと話す気はない・・・・」

「九頭竜行って来い・・・・・・ざーさん達後はよろしく」(ニッコリ)

「じゃあ借りるね・・・・」

「大河!!!このうらぎりもんがーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

九頭竜は、ざーさん達に肩を組まれ連れ彼女らのグループまで連れて行かれた。その際に雄たけびが教室に響き渡るが、あいつが友人を作る為のいい機会として笑顔で見送る。

さて、樹と宗介という話し相手がいないから俺は静かに席を着きスマホを取り出し最近ハマったソシャゲを開く。




「さてやるか・・・・・」

俺がこれからやるのは『真・幕末クロニクル・ブレイブプリンセス』というソシャゲだ。




元は『幕末クロニクル』という十年前に発売されたエロゲで、内容は主人公は幕末の時代に飛ばされ、そこに登場する坂本龍馬や桂小五郎といった幕末の偉人が女体化したと出会い絆を築き仲間である薩長軍を率いて明治維新を切り開くという作品で実はこれがアニメ、一般ゲーム化されており俺もPC版を含む各シリーズを余すところなくやっており、今やってるソシャゲも無課金ながらもそこそこ力を入れてるのだ。

ちなみに全年齢であるソシャゲ版(というか、18禁版は数年前から音沙汰ない)は今までの仲間の薩長軍率いる新政府軍と新選組達がいる旧幕府軍との敵対関係はなく手に入れた偉人キャラで、さらなる敵を倒す内容なのだが今回だけは課金しそうなのだ。なぜなら、そのキャラは、『幕末クロニクル』本編では名前だけしか語れなかったが満を持してスマホ版では初の顔見世となるのだ。




それは芹沢鴨というキャラだ。史実では新選組の局長の近藤勇の前の局長なのだが、『幕末クロニクル』でのキャラは、圧倒的な美貌と剣術を持ち設定では力と暴力だけで浪士組を引っ張っている見た感じ大人の爆炎使いのエロいお姉ちゃんだ。

普段は妹萌えだけど今回はその重みをあえて外す。現状では俺の知ってる人間では誰も手に入れてないので俺はいの一番で手に入れてやるんだ。





「おい、みゃこ喜べ、やっと芹沢鴨がでたぞーーーーーーーーー」

「あ?黙ってろよクズが!!!!」

俺は樹がウキウキと登校しその報告を聞くと一気に腹が立ち罵倒することにした。

死ねこの野郎。




「なんでいきなり罵倒?でもありがとうございます」

そして相変わらずのお礼・・・・・・それがさらに倍プッシュで殺意が上がる。とりあえず殴るか。







「まずはふざけた幻想をぶち殺す」

「うわっあぶね。いきなりなにすんだよ!!!上条当麻でも何もしない相手をいきなり殴ったりしねぇぞ」

「お前何避けてんだよ。ドMなら潔く理不尽な暴力を受けろや」

「あのそれ、ただのリンチなんですけど・・・・」

「うるせぇな。お前俺と同じ無課金だろ?なのになんで排出率0、800%の鴨さんを手に入れてんだよ。そんなの認めねぇよ」

「そういうお前だって妹萌えの癖になんでそれを欲しがるんだよ。お前の持ってる。自称妹キャラの桂太郎ちゃんでいいだろ。お前あのロリっぽい礼儀正しい子ががタイプで低レアの癖に真っ先にレベル、スキルマックスにするくらい好きだろうが!!!」

「それとこれとは別だ。あのなぁ芹沢さんはな、初期『幕末』から知られてるキャラで・・・・18禁では登場できなかったけど全年齢版になって登場できたキャラだぞ。ファンならタイプうんぬんより欲しいに決まってるだろうが!!!!どうせお前課金したんだろうが!!!この卑怯者が」

「課金なんかしてねぇよ。日々集めた札と石を使って手に入れたんだよ」

どうだかな・・・・・こいつんちは俺と違い、バイトに加え家から小遣いをもらってるからな。その金で課金したんだろ?







「あのなぁそんなに欲しいならお前、課金しろよ。それだったらもしかしたらでるぞ」

「馬鹿野郎一回でも課金をしてみろ。それにハマりだして一瞬にして廃課金の仲間になるだろうが!!!学生が廃課金の人生なんてそんなのなりたくないしなによりエロゲ買えねぇだろうが!!!」

「結局はそれか!!!」

「お前もだろ」

「おい、静かにしろ!!!お前は以前エロゲやってることを周囲にバレたけど、俺はまだバレてねぇんだ。頼むからみんながいる前でそんな話は止めろモテなくなる」

なら、安心しろお前は一度たりともモテたことなんて見たことないからこれ以上失うことは無いぞ。








その後樹となんとか和解し芹沢さんのキャラを見せてもらったが、ネットで見た通りカッコ良かったなーーーーーーーなんで、よりによってあんなやつが先に手に入れるんだろ?ガチで課金しようかなーーーーーーー





「おい・・・・・」

でもなーーーーーそれやったらエロゲが買えなくなるしいやそれだけではなく他の生活面に支障が・・・・・




「おい・・・・・」

いっそな事姉ちゃんに頼みたいが・・・・課金が目的で金をねだると後ろめたさを感じるな・・・・




「大河!!!」

「九頭竜・・・・」

上の空だったか・・・・・隣の席で九頭竜の声が全く聞こえてなかった・・・

もうすぐ授業中だってのになにやってんだ俺は・・・・彼女の目の前でカッコ悪いとこ見せやがって・・・・本当に今の俺たるんでるな。




「お前、なにっボケッとしてんだ?次現国だろ?オレ教科書忘れたから席くっつけてもいいか?」

「ああ、いいけど。お前また忘れたのか?」

「うるせぇな。悪いかよ?」

「いいや・・・全然」

とりあえずこいつに言われるまま席につけることにし、授業を受ける。まぁこいつがこう頼まれるのは今に始まって事じゃないからな。なんせこいつの事をエロゲ声優と知る前は、強制的に教科書を一緒に見せ合い怯えながらいつ刺されるかと不安になりながらも授業を受けていたからそれが懐かしく感じてしまう。






「おい、もっと近くに寄れよ。見えねぇだろ」ずい

「!!!!」

うおっ、近すぎ過ぎて九頭竜の金髪のサラサラと手入れされている髪が体にあたり肩がくっつきデカい横乳が右袖にかすってる・・・・・教師から見せ合うのを許可されたとはいえ、こんなの許されてもいいのか?

いかん!!!正気に戻れ集中だ。来週から期末テストが始まるから専念しないとな・・・・






「ここ、テストに出るぞ~~~~~~」

「・・・・・・・」カリカリ

「・・・・・・・・」

俺が授業を集中してるさなか九頭竜は周囲に気づかれないようにそっと俺の耳元に近づきなにやら聞きなれた声をだしていた。






「大河~~~~~~お前、『幕末クロニクル』の芹沢が好きなんだろ?なら聞かせてやるよ」(芹沢鴨ボイス)

「はっその声は・・・・・」

九頭竜は隠れエロゲ声優であってか、その特徴を最大限に生かし俺が欲しがっていた鴨さんの声質を彼女なりに似せてその大人の雰囲気が漂った色っぽい声・・・・・間違いなくそれに近かった。





「どうだい、似てるだろう。我の声は・・・・・斬られたくなければ静かに我が舞を楽しんでてよぉ」

それに加え口調が鴨さんのそれと完全に酷使している。思えば九頭竜ことノアさんって妹や同年代の女の子の声の印象があったけど、こういう大人の声も出せるんだな・・・





「どうしたんだい?さっきから固まって・・・・・我の声で、恐れおののいているのか!!!今から古の爆炎で、腐った脂肪を塵に返そうか・・・・」ひそひそ

う・・・・・・樹ほどではないがこのSボイスがたまらん。自分ではMではないけどこれを聞いただけで変な扉が開いてしまう・・・・

くそ・・・・周りに聞こえないくらいの小声だから余計に耳がとろけてしまう。




「すまん・・・・・その声で奥義『黒式・大蛇黒炎斬覇』って言ってくれないか」

ちなみにその技は鴨さんのゲーム技の奥義で主要武器は刀と鉄扇なのだが、舞いながら、鉄扇から無数の黒き大蛇を出現させ、それを刀に纏わせ敵全体を火傷及び即死にさせるチート級の技なんだけど体験ボイスで聞くと冷酷的な口調が逆にカッコよく聞こえるんだよなぁ・・・・




「馬鹿だねぇ。そんな事しちゃ。おしまいだろぅよく考えなさんな・・・・・」

少し声は高いが完全にオリジナルに近く再現されている。これ、代役待ったなしだろ。





「その代わり×××して〇〇してるとこ見ててよぉ」ひそひそ

おい、今は全年齢になったとはいえこのエロボイスたまらない・・・・

似せてるとはいえ考えてみれば俺、鴨さんのエロボイスを世界で一人聞かされてる訳なのか・・・・・


やばい興奮してきた。







「ねぇねぇ・・・・」ずい

これでもかというように背中を小刻みに動かして俺の反応を楽しんでキャラになりきってるぞ。そんなことされたら俺・・・・・俺・・・マイフェバリットシスターさだかちゃんから鴨さんに推しを代えてしまうぞ・・・・

それだけは止めてくれよ。なんせさだかちゃんはノアさんの代名詞だから代えないでくれ。





「おい!!!!大河どうした?」

「は!!!」

気が付くと先生が心配した表情で声をかけ九頭竜は何事もなく密着から離れていた。俺、そんなにやばそうな感じを出していたのか・・・





「いえ・・・・・・何でもありません」

「そうか・・・・・」

「ふぅ~~~~~~~」

「おい、ヤバかったな大河」ひそひそ

「九頭竜頼むから、授業中は止めてくれよ」ひそひそ

「あ?お前、このキャラが前から欲しかったて花沢がいってたからこうして演じてたんだろうが・・・・」ひそひそ

やっぱざーさんが戦犯か・・・




「そうだけど・・・・・」

「まっ。お前の反応それなりに楽しめたから今度は他のキャラになりきろうか?今度はお気に入りのさだかでいいよな」ひそひそ

俺はその問いに静かに答える。




「よろしく頼む・・・・」




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