優秀作はコミカライズ&非売品の文庫化! 1万字以内の「エンタメ小説」と「令和の私小説」募集!
10,284 作品
「カクヨムWeb小説短編賞」は2018年よりスタートし、今回で5回目の開催となりました。
株式会社KADOKAWAが主催となるカクヨムWeb小説コンテストという場は、第一義に様々な長編作品を書籍化し、商業作品として世に問うことを目的としています。
短編作品はそれ自体を書籍化して商業流通にのせることは難しいのが現状です。
ですが、それゆえカクヨムWeb小説短編賞は、市場の論理にとらわれず、作品の面白さ、新しさ、Web小説ならではの表現を評価できる場でもあります。
今回、初の1万作品越えとなる10284作品ものご応募をいただきました。
作者のお名前を眺めますと、過去のカクヨムWeb小説短編賞、カクヨム甲子園、KAC(カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ)、カクヨム文芸部による公式自主企画などにもご参加いただいている短編マイスターと呼ぶべき皆様と、今回を機に短編にはじめて挑戦された才気あふれる皆様がひしめき合っていて、応募者の立場からはとてもタフな戦場だったかと思います。ご参加いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
それでは受賞作の講評に移らせていただきます。
エンタメ小説部門では短編賞を3作選ばせていただきました。
『殺し屋と宝石とシュトーレン』は殺されることを望む家出王女と殺し屋の物語を描いた作品です。王女がなぜ殺されたいのか、二転三転する場面設定、ラストで明かされる秘密など、読者を引き込むサービス精神に溢れており、読むと元気になれる、王道のエンタメ作品でした。
天才料理人と神の舌を持つ男の関係性がキーとなるのが『笑顔のベリーソース』。最悪な出会いをした二人の天才が、己の技術と口に出さぬ互いへの絶対的な信頼で、課された過酷な運命に立ち向かっていきます。非常に美しいバディものであり、ブロマンス作品です。
『狸穴神社の縁切り地蔵』はいじめと復讐をテーマに、子どもの世界の闇をホラーとして描いています。万人受けする物語ではありませんが、時に現実世界にシンクロする残酷な世界を残酷なままに見事に描き切り、それでいて心を揺さぶる高い筆力を評価いたしました。
いずれの作品も副賞のコミカライズにより、作品世界がより広がりを見せると考えております。コミカライズされた作品は本年秋ごろに月刊コミックフラッパーに読み切りとして掲載される予定です。
また、はてなインターネット文学特別賞には、エンタメ短編小説部門の『おとうと』が選ばれました。
期間中にコンテストランキング週間総合1位も獲得していた作品で、そのままテレビで放映されてもおかしくない、情景が目に浮かぶ非常に完成度が高い現代ドラマです。後述の株式会社はてなによる講評も併せてご覧ください。
短編特別賞は6作品を選んでおります。
働くお母さんが抱える悩みと覚悟を社会派エンタメに昇華している『#5日後に退職する乳酸菌飲料販売レディ』、ミステリーの技巧を用いつつテンポ良いラブコメを描いた『おぼえてないのは彼女だけ』、幻想的な雰囲気で読者の想像をかきたて、男と女の人生について思いを馳せずにいられない『夢見し蝶の遺言』、武侠作品として大河ドラマを1万字の中で描き切った『黙龍盲虎』。いずれも秀作ぞろいです。
岡山の伝承をモチーフとしたラブコメファンタジーの『元カノ、鬼になる』と北海道の漁村の恋愛模様を描いた『潮騒』は、ご当地短編キャンペーンでもカクヨム賞に選ばれた作品でした。別の選考過程でも評価を得たという事実が、2作品の魅力を物語っております。ぜひ同キャンペーンのアンバサダーを務めていただいたお二人によるレビューも併せてご覧ください。
続いて「令和の私小説」部門の講評に移ります。
2021に設けた「実話・エッセイ・体験談部門」を発展させた本部門では、「令和の私小説」という言葉をどう解釈するか、悩んでいただいたかと思います。その中で、昨年とほとんど変わらぬ作品数をご応募いただいたことに改めて御礼申し上げます。
すぐにコミックエッセイ化を目指す短編賞は生まれませんでしたが、短編特別賞として6作品を選ばせていただきました。
己に呪いをかけ続けた親との関係を吐露した『吐き出せない親』、宗教二世としての体験を綴る『明日のことは明日考えよう!』、解離性同一性障害のパートナーとの出会いを描く『ぽっちゃり妻の内なる『アイツとあの子とその他数人』』、この3作品は、他人にはわからない、そしてご自身が悩まれたであろう体験を赤裸々に綴っていただきました。
一方で、誰もに身近な体験を見事に作品として昇華いただいたのが、サバゲ―の世界に誘われた経験が追体験として浮かび上がる『スコーピオンに左手を添えて』、猫のいるほっこりとした一日の空気感が飾らない言葉で描かれた『猫と雨』です。
『セロリと言う名の厨二病』では、センスある言葉選びで中学生目線のクスリと笑えるエピソードが畳みかけられます。純文学の響きのある私小説という言葉とはある種対極にある作品でありますが、「令和の私小説」として評価させていただきました。
賞に届かなかった作品の中にも、普段知りえない世界を描いていただいた世界、普段気付かないような視点で描いていただいた作品が多数あり、選考を通して応募いただいた皆様の人生に思いを馳せることが出来ました。
今回は受賞者も10代から50代まで幅広く生まれました。非常に多彩な作品が集まるコンテストを開催できたこと、そして老若男女を問わず、様々な方が受賞されたことを、選考委員一同とても嬉しく思います。高い技術があって生まれる物語もあれば、初々しい感性から生まれる物語もあります。ご参加いただいた皆様には、今後も引き続きカクヨムの短編の世界を盛り上げていただければ幸いです。
カクヨムWeb小説短編賞2022 選考委員一同
該当なし
該当なし
はじめてカクヨムWeb小説短編賞にかかわらせていただきました。
いろんなバリエーションの作品があり、特にラブコメにおいてはどの作品も作者のヒロインのこだわりが感じられて、読んでいて楽しいものでした。
しかしながら、G'sこえけんから出ているASMR作品、ボイスドラマ作品として商品化するうえでは少し難しいかと考え、今回は受賞作なしとさせていただきます。
受賞には至らなかったものの可能性を感じた作品として、『不眠症の先輩を眠らせる方法5選』と『少年漫画家ちゃんと少女漫画家くん』をあげさせていただきます。
すでにご案内したよう、第2回G’sこえけん音声化短編コンテストを6月23日より開催いたします。求める作品像をより具体化しておりますので、お読みいただきぜひこちらにご挑戦いただけますと幸いです。
2023年冬 応募開始 予定
次回コンテストの開催情報は、秋頃を目処に本サイト上で順次お知らせします。
詳細はお知らせブログやカクヨム公式Twitterをご確認ください。
「カクヨムWeb小説短編賞2022」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
選 評
受賞作の選定にあたって非常に悩みました。インターネット文学らしさは多面的で、候補として選定した作品それぞれが全く別軸の魅力があり、それらを比較して受賞作を決めるのは非常に難しいことでした。
そんな中ですが、受賞作『おとうと』は圧倒的でした。熱量あふれるカクヨムの皆様のおすすめレビュー。SNSからふらりと読みに来て、一気読みしてしまう濃厚で緻密な物語。このコメントを書くために読み返していても、正直涙腺が緩みました。
インターネット上の物語は、自由に誰もがすぐさま物語を書くことができるという特性上、時代や社会の今が色濃く反映されます。
おかまバーで女装した双子の兄に15年ぶりに会うことから始まる物語。15年前の家出のエピソードに対して、物語で描かれる現在の様子からジェンダーの多様性に対する社会の空気の変化を感じました。
実話として掲示板やブログに投稿されても決して不思議ではないようなリアリティを感じさせる、非常にインターネットらしい作品であると判断し、はてなインターネット文学特別賞の受賞作として選定いたしました。