概要
そんなに私が悪いのですか?
幸恵はある新興宗教の元二世信者。幼い頃から入信させられ何の疑いもなく活動していた。
しかし、教団の教えに疑問を持ち、確かめようとすると母親からすごい剣幕で阻止された。バイト先の男性に相談し、付き合い始めた途端、母親は幸恵を忌み嫌うようになる。仲間信者の監視にも耐えかね教団を辞める決意をした幸恵。
脱退してから三年後、母親から小包が届く。
DVDに込められたメッセージを受け、幸恵は母親との決別の手紙を書いた。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!二世の苦難
『元二世信者』、古くて新しい問題です。
何が正しくて、何が誤りか。誰にも解らないし答えは無い、有っても答えは都度変わっていく。そんな問題だからこそ、人は自分で探し進むことができます。
…それは、子供であっても同じ。
その子にとって、何が正しくて何が誤りなのか。親にだって解るはずはない。親が出来るのは、子供が自身で自らを探し求めることを、後ろから見守ってあげることくらい。子供は親の分身ではなく、親の理想を詰め込む人形でもない。
良かれと思って行う、エゴの押し付け。これは決して宗教二世問題に留まることでなく、我々が常々直面する問題なのかもしれません。
このような深い問題を扱いつつも、とても…続きを読む - ★★★ Excellent!!!断ち切られる苦しみ、断ち切る苦しみ
小説はもちろん楽しむためのものであっていいし、日常を忘れるためのものであってもいいけれど、誰かの現実を知らしめるため、気づかせるためのものでもあると思います。
宗教二世を真正面から取り上げたこの物語はそういう作品です。
自分の体じゅうの血を全部取り替えて別人になれるならどんなに楽だろうか、でも現実には母から譲り受けた血が流れていて、それを全取り換えすることなどできない。生まれた時から宗教の世界で生きてきた主人公にとって、自分が断ち切ろうとしているものはそういう苦しみなのだと思います。それと同時に、向こう側にいる母にも断ち切る苦しみがあるのだということも伝わってくるのです。
主人公の気持ちをな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!排斥や哀れみや忌避でなく、理解を。
この小説の作者さんは、他にも「宗教二世」題材とした作品を書かれています。
本作の他、「沙羅双樹」「明日のことは明日考えよう!」「もぐらの泪」を併せて読まれることをお勧めし、またこのレビューがそれらの作品を読んだうえでのものであることを先にお断りしておきます。
宗教二世に関しては当事者の皆さんが表に出て声を上げ始めていたところ、昨年の元総理襲撃事件でより世間の注目を集めた問題です。
少なくない人々がこの問題に関心を持ち、SNS上でも多くの意見が上がりました。
ニュースや雑誌記事でも「何が起きたのか」「何が起きていたのか」「どうしてそうなったのか」ということを題材にしたものがほとんどだったと…続きを読む