断ち切られる苦しみ、断ち切る苦しみ

小説はもちろん楽しむためのものであっていいし、日常を忘れるためのものであってもいいけれど、誰かの現実を知らしめるため、気づかせるためのものでもあると思います。
宗教二世を真正面から取り上げたこの物語はそういう作品です。
自分の体じゅうの血を全部取り替えて別人になれるならどんなに楽だろうか、でも現実には母から譲り受けた血が流れていて、それを全取り換えすることなどできない。生まれた時から宗教の世界で生きてきた主人公にとって、自分が断ち切ろうとしているものはそういう苦しみなのだと思います。それと同時に、向こう側にいる母にも断ち切る苦しみがあるのだということも伝わってくるのです。
主人公の気持ちをなぞればタイトルに込められた想いがずっしりと胸に響きます。
カクヨムだけでなく、広く読まれてほしい作品です。

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