第5話 母親への手紙

お母さん、そんなに私が憎いですか? 

そんなに私が許せませんか?


産んでくれたことには感謝します。

十八才まで育ててくれたことにも感謝してます。


あのDVD を見てあなたの気持ちは分かりました。


お母さんも辛かったって言いたいんだよね。

私が疑念を抱いて苦しんでいるのを見ていられなかったんだよね。

楽にするために息の根を止めてくれたんだね。


淫行の罪を放置しなかったのは、お姉ちゃんたちを守るためだった。

それも今なら分かるよ。


お姉ちゃんたちを守るために、家の中で隔離されたのも。

辛かったけれど、仕方ないことだったね。


お母さん、伝えようか迷ってることがあるの。

私、赤ちゃんが出来たんだよ。


一度も抱っこしてもらえないけど、

顔も見てもらえないけれど。

自分が決めたことだから仕方ないこと。


同じ思いを多くの元二世信者がしてるんだって聞いたから。

自分だけじゃないって知ったから。

頑張って育てるよ。


お姉ちゃんたちがずっと信者でありますように。

お母さんが一人ぼっちにならないように。

今ならそう言えるよ。


お母さんが私を食べてくれたっていうメッセージ。

いい方に考えて生きていこうと思います。

生まれ変わったと思うことにして幸せになりたいです。


お母さん、お元気でお過ごしください。

お母さん……

お母さん……

お母さん……さようなら。


幸恵より。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仔ライオンの泪 星都ハナス @hanasu-hosito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ