概要
家族の幸せのために母親久美子は、ある宗教の信者になる。教団の教えは久美子から人間性を奪う。
幼い頃からの教えで沙羅と双樹は苦しみ、葛藤し、どう生きるべきか悩み迷う。信仰とマインドコントロールの狭間で闘う久美子は家族に対する本当の愛を取り戻せるのか?
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!純粋な信仰心がゆがめられてゆくのはなぜなのか?
カルト宗教の恐ろしいところはなにか?
普段生活していると、このテーマに触れることはそうそうないかもしれません。
だからこそ、読むべき作品だなと思うのです。
大なり小なり、宗教やその教義は人の幸せを願うものであり、傷ついた魂の救済を願うものだと思うのです。
そこには純粋で崇高な目的と手段があります。祈りとかね。
しかし現実の宗教ではそれだけにとどまらず色々な問題が起こっています。
それは日々のニュースなんかでも目にしていることと思います。
その本来の目的とずれていった先で何が起こっているのか?
この作品の中で一つの物語が進行し、さまざまな問題を提起していきます。
ここで描かれるのは架空の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これはフィクション? ノンフィクション? 宗教二世の家族の物語
2020年に書かれたものですが、とても心に刺さったので紹介します。
最近、被害者救済法が成立したことで話題の宗教二世のお話です。
わたしには宗教二世の友だちも身近にいるので、とてもリアルだと思いました。
宗教に巻き込まれた家族、人間関係、霊感商法、献金問題、マインドコントロール。これフィクションかな? と錯覚するほどです。
主人公は沙羅という宗教二世の子どもですが、久美子という新興宗教にのめり込んだ母親もまた被害者なのかなと思います。
居場所がほしかった
自分の存在意義が見出せない―。
人生で悩むことがあると思う。
その心の隙をついてくる宗教という名の詐欺集団に狂わされた人々。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!たちまち引き込まれ、一気に読んでしまいました。
私は作者さまのファンで、いくつかの作品を愛読させていただいております。幸せな家族愛にあふれたエッセイや、キリスト教を解説した作品もユーモアや感性が光っていて、明るいお人柄にいつも癒され温かい気持ちになります。作品からうかがえる包容力あるキャラクターに心惹かれております。
ですが作者様の、暗くかげりあるエッセイの方は、途中で読めなくなってしまいました。知りたいと思いつつも、痛すぎて悲しすぎて読み続けられなくなってしまったのです。私が作者様に惹かれるのは、悲しみや辛さ、傷も抱えつつ、愛も闇も知っている方であり、その人間味の深さに心しめつけられております。
作者様は、作中の新興宗教の狂信者とも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!信仰という名の『正義』が家族を壊す。歪められた愛に救いの道はあるのか
新興宗教に翻弄され、崩壊してしまった家族の物語です。
一家の母親・久美子が、幼少期から蓄積された苦悩から救いを求めたのが、怪しい『信仰』の道でした。
お勤めや高額なお布施、子供への躾に至るまで、教団の『教え』に染まってしまった母のせいで、一家は悲惨な末路を辿ります。
教祖によるマインドコントロールに加え、信者同士の競争心を煽るシステムなど、こうした宗教にハマっていく人の心理が非常にリアルでした。
信仰の自由があるとはいえ、親の信仰を押し付けられる子供たちに自由はありません。
未婚のまま妊娠し、久美子から関係の断絶と教団からの排斥を言い渡された娘・沙羅の視点から、母親の抱えた事情や恐るべき…続きを読む - ★★★ Excellent!!!重い内容ですが、次を次をと読んでしまいました
生きていく辛さに堪えかねて、新興宗教にハマり、その結果として大切な家族を次々と失っていく…。
重い内容ですが、次を次をと読みたくなって、ページをクリックする手が止まらなくなりました。読みやすい文章と、リアルなエピソードのスピード感溢れる展開。作者である星都ハナスさんの筆力とこなれた構成力の賜物でしょう。
私はこの物語りを読みながら、ずっと自分の心と対話していました。
「私だったら、どうする?」
「そういえば、あの時の私は…」
物語りはハッピーエンドながら、ある程度の人生経験のある読者であれば、登場人物たちの将来に一抹の不安もまた覚えるはず。
破壊と再生を繰り返しながら生きて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!母が本当に縋りたかったもの
新興宗教に溺れる人、そしてその二世と呼ばれる子どもたちの葛藤を描いた作品です。重たいテーマではありますが、文章が非常に読みやすく、展開が早いので、巻き込まれるように先を知りたくなります。
主人公沙羅の母である久美子の宗教への浸り方、その心理描写が恐ろしいほどにリアルで、そこへ没入している人間の思考回路を克明に見せてくれます。また、なぜそこへ縋らなければならなかったのか、久美子の背景も語られることでよりその心の闇を理解することができるのです。そんな人の心の闇を利用し食い物にする宗教集団の体質も、不気味に炙り出されます。
この作品で登場する二世は、生まれながらにして自由を奪われた子どもたち。…続きを読む