純粋な信仰心がゆがめられてゆくのはなぜなのか?

カルト宗教の恐ろしいところはなにか?
普段生活していると、このテーマに触れることはそうそうないかもしれません。
だからこそ、読むべき作品だなと思うのです。

大なり小なり、宗教やその教義は人の幸せを願うものであり、傷ついた魂の救済を願うものだと思うのです。
そこには純粋で崇高な目的と手段があります。祈りとかね。
しかし現実の宗教ではそれだけにとどまらず色々な問題が起こっています。
それは日々のニュースなんかでも目にしていることと思います。

その本来の目的とずれていった先で何が起こっているのか?
この作品の中で一つの物語が進行し、さまざまな問題を提起していきます。

ここで描かれるのは架空のカルト宗教です。
そのストーリーには日常生活と隣り合わせのリアルがあります。
これはあくまで作者の想像する物語ですが、そこから何かを感じ取り、読み取ってほしいという意志が伝わってきます。

それこそが物語のもつ力であり、わたしが惹かれる理由でもあります。
この物語を読んで、日常生活のすぐ隣にあり得る世界を想像してみてほしい。
何が正しくて、何が間違っているか、それを判断するために何が必要なのか。
このストーリーはそんないろいろを問いかけてきます。

ふだんなかなかテーマにされることのない物語。
それを真正面から問いかける力強い作品でした。
この作品を書き上げた作者の心意気に感動しました。

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