概要
百年前にその技術が確立されて以降、世界では人間が光合成できることへの議論が交わされて社会の分断が起きていた。
病気、倫理的課題、違法薬物の流布……
特に違法薬物を使用して発症する全能性の問題は緑化手術を受けた人たちを苦しめていた。
全能性とは植物としての気質、細胞壁や液胞が動物細胞内にできる病気である。
ブラジルに建造された先端科学都市プランティアで科学をしているサイカ・パラレルはその治療薬、緑化抑制剤を開発した天才科学者である。
そんな彼女の元に緑化手術を受けた日本人の青年がやってくる。
彼女の研究チームは彼のことを『植物くん』と呼称する。
人類と科学の可能性を追求したSF作品です。
毎日19:05に更新します。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!作り込まれた世界観と人間ドラマが織りなすSF作品
SF作品というものは、書く側にとっても読む側にとってもハードルが高いもの……だと、個人的に思っています。
読者を納得させる世界観を作る技術だったり、作り込まれた世界観に入り込む集中力だったり……。
私自身があまりSFに触れてこなかったというのもあって、初めは緊張しながら読んだ記憶があります。
読んでみてまず思ったことは、凄く丁寧に描かれているということでした。
情景が浮かびやすく、まるで映画を観ているような気分になりました。
気が付けば主人公のサイカや植物くんに感情移入できるほど物語に入り込めている自分がいて……。
作者さん自身がたくさん模索しながら執筆している結果なのだとしみじみ思います…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「今、私たちが生きている世界」を深く考えさせるSF作品
もし、人が自分の身体で酸素を作れるようになったら?
温暖化は解消されるかもしれない。
でも、倫理的な問題は?
世の中は単純じゃない。
こっちが引っ込めばあっちが出てしまう。
この作品を読んでいると、そんな思いが湧いてきて、深く考えさせられてしまいます。
たとえば、光合成ができるようになっても、必要以上に植物化が進んでしまう人がいます。
主人公のサイカは「緑化抑制剤」を開発しますが、まだまだ臨床試験中。
薬の被験者との交流が丁寧に書かれていくなか、「あなたはどう思う?」と作者様に問われているような気分になってしまいました。
こんな重厚な作品、なかなかないのではないでしょうか?
重いテーマ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!救われた世界の後片付け
環境問題が解決の兆しを見せている世界で、新たに生まれた問題に挑む科学者達の研究を描いたSF作品です。
温暖化に対抗するため、とある科学者は植物の光合成を人間に取り入れる研究を発表しました。
その行いは疑いようもなく肉体改造であり、倫理、宗教、医学の面で大きな論争を巻き起こしました。
しかし、結果としては大成功。酸素の放出量が増えたおかげで、地球の環境は大きく改善を迎えます。
けれども、肉体改造の裏目か。肉体の機能が植物へと傾きすぎてしまう人々が現れます。
主人公達の目的は、そんな人々を救済すること。
大功の影に埋もれてしまった人々に、主人公達は新たな光を与えられるのか。
ぜひ読…続きを読む - ★★★ Excellent!!!阿(あ)と吽(うん)
ほとんど、九九パーセントの動物は、息をせずにはいられない。少しくらいなら止めていられるが、植物のようにはいかない。
動物の中で、科学技術を産み出し、実行するのは人間だけである。猿が道具を使うことはあるが、それは手段であって技術ではないだろう。
で、酸素を消費する人間が、より酸素を消費する科学技術を使う。かくて二酸化炭素は指数関数的に増え続ける。
そんな下り坂に、本作で描かれる科学技術はつっかい棒をかける。ただし、『善意かつ自発的な志願者』の協力において。
軍縮条約から環境保全まで、およそ人間の業……『あなたが先にやれば私もやりましょう』は無数に存在する。それをゼニカネの力だ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!SF医療ストーリー。地球を救うのか、それとも人間の尊厳を守るのか?
温室効果ガスとしてやり玉にあがる二酸化炭素。
現実でも国際的に排出量に関する取り決めが行われています。
この小説は「緑化手術」によって人間が光合成できるようになった未来の物語。
緑化手術を受けた人間は太陽が出ている昼の間、二酸化炭素から酸素を作り出せるのです。
しかし違法の緑化促進剤が出回ったことで、一部の人々において植物化が進みすぎる病が現れるようになってしまった。
物語の主人公サイカは、その病の特効薬「緑化抑制剤」を開発した若き天才科学者。
ただし緑化抑制剤はまだ臨床試験中。
緑化手術を受けた人に被験者となってもらって、効果を実証しているところ。
その被験者となった青年と、サイカが反…続きを読む