SF医療ストーリー。地球を救うのか、それとも人間の尊厳を守るのか?
- ★★★ Excellent!!!
温室効果ガスとしてやり玉にあがる二酸化炭素。
現実でも国際的に排出量に関する取り決めが行われています。
この小説は「緑化手術」によって人間が光合成できるようになった未来の物語。
緑化手術を受けた人間は太陽が出ている昼の間、二酸化炭素から酸素を作り出せるのです。
しかし違法の緑化促進剤が出回ったことで、一部の人々において植物化が進みすぎる病が現れるようになってしまった。
物語の主人公サイカは、その病の特効薬「緑化抑制剤」を開発した若き天才科学者。
ただし緑化抑制剤はまだ臨床試験中。
緑化手術を受けた人に被験者となってもらって、効果を実証しているところ。
その被験者となった青年と、サイカが反発しあいながら心の交流を積み重ねてゆく姿が描かれます。
光合成について学んだ子供時代に、動物や人間も光合成ができたら便利なのになーなんて考えたことのある人は多いと思います。
それを科学的な根拠と共に上質なSFに昇華している本作は、読み応えバッチリ。
また、緑化手術の副作用として病が設定されていたり、違法薬物が出てきたりと、気になる要素がたくさんあって惹きつけられます。
病が進行した先で、人間はどうなってしまうのか?
そもそも、人間が光合成をおこなう倫理的問題は?
など、リアルな物語が繰り広げられます。
不穏でありながら目を離せないテーマに、釘付けになってしまうはず。
SF的な理屈もしっかり描かれていて面白いので、ぜひ読んでみてください!