阿(あ)と吽(うん)

 ほとんど、九九パーセントの動物は、息をせずにはいられない。少しくらいなら止めていられるが、植物のようにはいかない。

 動物の中で、科学技術を産み出し、実行するのは人間だけである。猿が道具を使うことはあるが、それは手段であって技術ではないだろう。

 で、酸素を消費する人間が、より酸素を消費する科学技術を使う。かくて二酸化炭素は指数関数的に増え続ける。

 そんな下り坂に、本作で描かれる科学技術はつっかい棒をかける。ただし、『善意かつ自発的な志願者』の協力において。

 軍縮条約から環境保全まで、およそ人間の業……『あなたが先にやれば私もやりましょう』は無数に存在する。それをゼニカネの力だけで解決しようとすると、必ず破綻する。

 破綻を免れる唯一の手段は、冷徹な計算と熱烈な人類愛の合致のみである。

 必読本作。

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