なんとも幻想味に溢れる、美しいお話でした。
とある一人の『旅人』が、崖から落ちそうになっていた男を助ける。
旅人は男に対し、『骨花』と名付けられた一輪の花を示す。
骨花とは、『人間の未練』を糧に咲く花だとし、とあるきっかけで旅人はその花を手にすることになったのだという。
その先で語られる物語が、またとても美しい。
生と死、強い未練。その他に『骨花』という未練が形を取ったような花が登場し、この世とあの世の狭間にあるような、異界の雰囲気を漂わせます。
そんな生死を超越したところで葛藤する男女の物語。停滞しつつあった二人の物語を動かすため、『ある役割』を担わされた旅人。
読み進めるごとに紐解かれて行く、隠された『事情』。対話している男は何者なのか。過去に何があり、危険な土地に身を置いていたのか。
静かに、心を打つ、とても美しい物語です。
泉鏡花の文学作品を思わせるような風格と共に、読む人の心をじわりと満たしてくれる、そんな穏やかながらも鮮烈な存在艦を持つ作品でした。
その花は蓮の華に似て、透ける程に白い
花芯には小さな純白の されこうべ が
載っていた。
彼岸と此岸の端境の
土の下の湖畔に咲くという。『骨花』の
謂れは哀しき物語。美しい白拍子の最期の
願い とは。
作者の紡ぐ物語には情愛が宿る。
本作品を語る 花 は、春を待ち侘びて
咲く花とは違う。決して咲く事を忘れない
野の花々を心に想いながらも、散る事を
忘れてしまった白骨の花。
いずれ、人は誰もが彼岸へ渡る。その時に
再び逢い見えんと希う白拍子の想いは
更々と献々と湧き出ずる地下の湖の冷たく
澄んだ水のよう。
それは、手放して初めて手に入るモノ。
魂の来し方も行く末も、わからぬ限りは
せめては真白き骨の花となり
いつしか、共に咲く夢を見る。