マスケッター

　微に入り細を深めた構成に、作者入魂の描写力が光る力作。 　今昔物語さながらの古典絵巻としても読めるし、どんな時代であれ愛にかかわる明暗は変わらないとも読める。 　場面ごとの移…続きを読む

　私はファッションブランドには無知無能である。しかし、本作にこめられたメッセージや志は充分に理解できた。 　陳腐な形式主義におもねる人間は、いつもいつも不安で仕方ない。それをごま…続きを読む

　水中で、ゆらゆら揺れる髪におずおずと手を伸ばしかけて、結局引っ込める。そんな感覚を持ちながら読んだ。 　バスと湖という組み合わせは、ありふれているようでいてなかなか読んだことが…続きを読む

　娯楽小説はかくあるべしっ！　という我那覇先生一流の筆致が冴えまくる力作。ド直球の追放ものだが、主人公の目的意識とその実行が徹底的かつ明快なためサクサク読み進められる。 　これか…続きを読む

　はなはだどうでも良いが、イタリア語でエロイカといったら英雄という意味である。 　本作はイタリアと一切関係ないが、何故かそんなことをいいたくなった。 　どうでも良いついでに付け…続きを読む

　本作は、罪悪感をどこかに置き忘れ、代わりに秀逸な背徳感……それは恐怖の上澄みとしてつとに著名である……をちびちび飲みながら目的地へと進んでいく。 　かつて、外道の通人達は、死な…続きを読む

　いやぁ、一本取られた。最近、いわゆる娯楽性の強い作品ばかり読んでいて（もちろん、それはそれで実り豊かな成果だが）、こうした純文学を読む機会から我知らず遠ざかっていた。 　ごく単…続きを読む

　きっとできるとも。

　詳細本作。

　まさか、そんな展開だったとは！　いやはや、ときとして純粋さは罪。

　必読本作。

　無数の虫がうごめく沼沢に、裸足でさ迷う孤独な人影。それが、本作から通して得られる印象だ。しかも、足はトゲや石で傷まみれな上に化膿しており、疲弊しきって目もろくに開けられない。 …続きを読む

　現代社会が抱え、現代社会に必要とされる問題。カネ。 　未成年、とりわけ学生は、勉学が本業である。だからこそ、様々な法律や慣習で保護されている。 　しかし、全ての未成年がそうし…続きを読む

　一口に恋といってもいろいろある。 　本作は、正五十八面体ブリリアンカットのダイヤモンドのごとく、主人公にまつわる情緒と感性の揺れを、ときに輝かしくときに危うく放って伝える。 …続きを読む

　明確なるテーマ、明確なるコンセプト、そして……明確なる愛。猫への愛。

　『会話』そのものが重要な軸を為すというのも、本作の斬新な視点の現れだろう。

　必読本作。

　ほとんど、九九パーセントの動物は、息をせずにはいられない。少しくらいなら止めていられるが、植物のようにはいかない。 　動物の中で、科学技術を産み出し、実行するのは人間だけである…続きを読む

　読んだあと、猛スピードの自動車が自分めがけて一直線に突っ込んでくるような印象を受けた。止まれといおうが止めろといおうが効き目はない。 　左様、本作の最初の一文字目を読んだ段階で…続きを読む

　記憶をたどる行為は、とりわけあやふやなそれは、なんとも頼りない。壁にへばりついた蔦（つた）を命綱にして、壁面にしがみつきながらよじ登るようなものだ。 　それでも、登らねばならな…続きを読む

　やる気ゼロの新人が、プロフェッショナリズムに目覚めていく痛快無比な傑作。 　スーパーの青果売場という舞台は、ありそうでなかった題材ではなかろうか。私自身、本作を読んで全く知らな…続きを読む

　必要最小限の材料でどれだけの作品ができるか。 　本作は、一つの理想的な回答をもたらしたといえよう。 　なによりも、主人公の粘りつくような人格と語り口調がいつまでも心に……記憶…続きを読む

　一切関係ないのは百も承知ながら……理不尽なバッファローの群れというと、どうしてもエド・ウッド監督の『グレンとグレンダ』を想起してしまうところだ。同監督は最低駄作制作者としてとみに…続きを読む

　本作は、作者が下戸（と、作中で公表されている）であるのも踏まえてとても味わい深い考察に満ちている。 　ビールと大衆文化は切っても切れない縁がある。古代メソポタミア文明の遺跡から…続きを読む

　この発想はなかった！　最初の驚きがさめるひまもなく、爆笑から爆笑の嵐がひっきりない。 　どこか人情家肌（？）で憎めないボスもいい味をだしている。誰しも気に入った家具は最後まで使…続きを読む

　どこにでも転がる中途半端な音楽家志望の若者かと思いきや、やっていることはロックそのものであり好感を持った。 　昭和の時分からこうした人間はいたし、私自身、彼らに小銭をだしたこと…続きを読む

　それは逃げ水のような『もの』だった。陰気な陽炎の中をさ迷うかのように、ふらふらと現れては消え人を惑わす。じっとりと、あるいはべっとりとした酢酸めいた臭気をもって読後感とする。 …続きを読む

　直球の王道冒険譚で、楽しく読めた。題名からして波乱を予期させる展開となっており、偽りない看板であった。

　個人的には、特に殺陣に力が入っていたと思う。

　詳細本作。

　ＡかつＢ。ＡまたはＢ。 　戦争に、大義名分、被害者、加害者。作中語られる作戦は、それらを一括するようでもあり全否定するようでもあり。 　永劫の矛盾に無限の苦悩を抱えたような主…続きを読む

　ただ淡々と必要な事項を述べているだけなのに、頭の中には横たわる故人が浮かんでしまう。 　あらゆる人間性なるものを剥ぎ取られたあとの、鞘も柄もない刀身のような遺体。せめて肉体だけ…続きを読む