裏を繰り返す

 作者一流の語り口調が秀逸な本作、よくある桜死体物(?)かと思いきや、どうも調子が違うと出だしから気を引かされる。

 思うに、花見というのは参加がすなわち鑑賞となるのだが、座興で歌ったり踊ったりする人間もいるだろう。現代では、たんなる迷惑行為になりかねないので、静かに楽しむのが作法ではあるにせよ。

 本作の主人公は、二十年にも満たない人生の中で、自分の本音を何度となく鑑賞してきたに違いない。心細くも芽生えたそれを。

 もう他人の振りつけなど受けつけない。

 必読本作。

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