桜の木の下に埋めたもう一人の私

押し殺した理想を桜の木の下に埋めた主人公の良太。あるとき、それを再び掘り起こし、奇妙な再会を果たす世にも不思議な物語。
特筆したいのは、ミステリーと桜との美しい調和です。
奇をてらった人物関係を繋ぎ止めるだけでなく、逃れられない囚われの過去も相まって、物語に深みを与えている点がとても味わい深いです。理想の存在を巧みに描くことで、気づけば独特な世界観へと巻き込まれていく展開から目が離せません。
良太と咲良の繋がりを思わせる意味深なネーミング。そして揺らぐ一人称。随所に散りばめられたクルワセが、あなたを不思議な世界で待っていることでしょう。
今も誰かを、理想の美しさで魅了しては狂わせるために。

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